13.持ち金あわせて
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と、いったところでこれまでの話は冒頭から今へと至る。
あれから兎達を追い込み逆に討伐した二人が金銭を得て次に試したいこと。
それは、
「うまい! きちんと芋の味がするぞ!」
「よかったですね」
「貴様も試してみるといい!」
暢気にもご飯を食べてみることだった。
運ばれてきたフィッシュアンドチップスのフライドポテトを口にするなり喜びの声を出すキリシマに、やれやれと言いながら自分もさりげなく手をつけるバーレッド。
「どれどれ……」
食べた瞬間、口の中に拡がる動物性の油脂の香り。外はカリッと中身はホクホクとしたじゃがいもの絶妙な食感。
熱すぎず食べ頃適温になっている乱切りの揚げ芋は、何個でも食べられそうだ。
「わ、本当だ。おいしい……これ、塩加減もちょうどよくて……」
思わずバーレッドも感嘆を漏らす。
それは現実の世界とも違わぬ、否それ以上に彼らの味覚を満足させる味であった。物を食べて味を実感するなどはゲームだったころには無いアクション。それは同時にここがゲームの世界とよく似た異世界なのだという自覚を彼らにさせた。
「そうであろうそうであろう! 次は寿司屋に馳せ参じてみるのはどうだ? バーレッド。この様子であれば漁港のファレル(ここ)ではカニもトロもイクラもきっと新鮮で相当うまいに違いない!」
ほんのりと香る麦酒を油を流す水のように飲みほしてキリシマが提案する。
「たしかに……」
これだけの味がするのであれば街の料理を全部食べ歩いてみても良いかもしれない。食は人間の三大欲求の一つだ。当然ながら満たされるべきことであり、それ以前にゲームの中だということを忘れる再現度は実に興味深い。
バーレッドの脳でも食欲中枢が働きお腹を鳴らそうとしたのだが一瞬で我に返った。
「でもキリシマさん、そんなお金僕らにはないでしょう……」
「う、うむ。そうであったな。まずは寝床の確保をせねばならんのだった」
声のトーンを落とし、調子に乗っていたキリシマも少し反省の色を見せる。
彼らにお金や寝床が無いのは、ゲーム時代翼蛇の杖の皆が集まって利用していたギルドハウスこと集合場所をキリシマ自身がログアウト前に解体してしまったからである。解体、というよりも正確にはゲームを終了する前に彼は所有権を放棄していた。
完全削除を選んだわけではないのでおそらく土地や建物自体はそのまま残っている事だろう。
LSOのゲーム内データを譲渡や削除する際にはプレイヤーに金銭が戻ることはない。二人の所持金が極端に少ないのもそれが理由なのかもしれなかった。




