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12.まっさらなスタート

「なるほど……じゃあ僕らは何故かLSOの世界に取り残されちゃったんですね。それで、ログアウトも運営に連絡することもゲームを強制終了することもできない。か……」


「うむ。呑み込みが早くかつ冷静で助かる。貴様を見つけるまで何度も試したがどれもかなわんのだ」


「いや、キリシマさん僕も結構焦ってますよ。だってこれ大問題でしょ」


頭を抱えるモーションを選ばずとも自然にバーレッドの体が動く。

このことも説明しようがないほど不可解ではあった。

何故かゲームとは切り離している状態のはずのリアルと混合されてしまっているのだ。


それは、キリシマが汗をかいていた時に気付いていた違和感の正体でもある。

すべてにおいて解像度が高すぎる。


一人称視点でも遊べるLSOには体感型VR機能も付いていたが、その機能を利用するためにはVR専用機器が必要だった。

海外製で設置場所を考える大きさのため家庭用で所持しているプレイヤーは少なく、VRゲーム専門のゲームセンターやインターネットカフェの別料金ブースなどに数台置かれている物だ。

実際、三人称視点で自分のアバターキャラクターを上から見下ろすのではなく、一人称視点でキャラクター自身になったような感覚で遊べるため、家庭のPCや据え置きゲーム機からログインするよりも断然快適。


バーレッドこと赤川達也あかがわ たつやも今日(実際には昨日)だけは最終日だからと自宅ではなく一駅先のネットカフェのVR専用機からログインしていた。


「汗もかくし自分の手で服を脱ぐこともできる。つまり……」


「痛覚もあるぞ。このように噛まれると指がちぎれそうなほど痛い」


分析をしながら頬をつまんで確かめているバーレッドに対し、小動物を捕まえ身をもって体感しているキリシマ。


「き、キリシマさん! それ……!」


「ああ。どうやら先ほどから我々を囲んでいたようだ! 身の程知らずめ!」


話半端だが戦闘開始だ。

捕まえていた一匹の白い兎を手放しキリシマが指揮棒のような杖を振り上げると同時に、バーレッドも腰に提げた剣を抜く。

不用意に触られたことで臨戦態勢になった下級モンスター・角付きコーンは突然泣き叫び仲間を呼んだ。

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