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「えーっと。そうではなくて。実は、王……」
おっとっと。本人公認とはいえ、ご家族の前で『王子先輩』とか言っても、意味が分からないよね。
「……和仁先輩、が、熱を出されたと聞いたので、コレ」
おみやげを出す。
それにしても、呼び慣れてないせいか激しく言いにくい。カズヒトって誰、って感じ。
「あら、わざわざカズに? それはありがと」
そう言ってから、礼子さんの目が射抜くように変わる。
「で? アンタ、あの子の何? 彼女じゃないよね?」
「ええええ?!」
ここでもキタ、その質問! やめてほしい!
「滅相もない! 私はそんな、恐れ多いものでは」
とりあえず、全力で否定しておく。
「私はですね、あの」
納得してもらえるような関係性を考えるが。
「知人と言うか何というか」
何なんでしょうね? としか、言いようがない。
「だから、それをアタシが聞いてるんだけど」
礼子さんは呆れ顔で言った。
とりあえず、今までの経緯を説明する。
英文学のレポートを手伝ったこと。今もいろいろ(ダンスのことは一応伏せておく)お世話になっていること。坊ちゃん先輩にはそれ以上にお世話になっており、友人でもあること。
焦りまくって話している内に、いかに坊ちゃん先輩が私にとって癒やしキャラであるか、ということまでしゃべってしまい、気が付いたら目の前で礼子さんが笑っていた。
「分かった、分かった。ゴメンね、カズ目当ての女が店まで押しかけて来て、面倒が多いもんだから。とりあえず、アンタがそういうんじゃないことは分かった」
「はあ。それは、さぞかし大変でしょうねえ」
モモさんみたいなのがしょっちゅう押しかけてくるとしたら、それは大変だと思う。
「だから、悪いけど、出来たらここの場所は秘密にしておいてもらえる?」
「はい、それはモチロン! ぼ……高原先輩からも、そう言われてますので」
それは、この前ここに連れて来てもらった時に、坊ちゃん先輩に固く約束させられたことだ。
「まあ、コウちゃんが選んで連れてくるような子なら安心か。寝顔見てく? 寝てるだけだけどさ」
そう言って、礼子さんは気さくに笑った。
せっかくだが、それについては丁重にお断りした。寝てると思っても、不意にガバッと目を開けられたりしたらコワイし!
「まあ、せっかくだからお茶だけでも飲んでいってよ」
私があんまり王子先輩の部屋に入るのを拒否するので、礼子さんは笑った。
そしてすぐに紅茶をいれてきてくれた。
私はお茶の銘柄とか分からないんだけど、花のようなやわらかい香りで。とても、優しい味がした。
確かに、私が淹れたのとは全然違うかも。王子先輩が激怒するのも無理はなかったかもしれない。ちょっと反省。
礼子さんは私が紅茶を飲むのをまじまじと眺め、坊ちゃん先輩とはどういう付き合いなのか、とか聞いてくる。
「べ、別に。フツウに、お友だちですよ?」
私が勝手に、癒しキャラとか思ってるだけで。
と答えると、礼子さんは急に大きくため息をついた。
「あの子もね。アンタみたいのと付き合えばいいのに」
「はあ?!」
何ですか、そのものすごく有り得ないこと?! あの子って、王子先輩だよね、どっち? いや、どっちにしてもありえないし!
「ああ、いいのいいの。ムリって分かって言ってんの。母親のグチだから」
と礼子さんは無造作に言った。
「ホラ。あの子、自分を好きになる女キライでしょ?」
「ええ?! そうなんですか?!」
私はビックリした。
「じゃあ、何で付き合うんですか? いつも彼女さんがいっぱいいますよね? 確かに、今までも彼女さんにもらった物を私に捨てさせたりとか! ヒドイ振られ方をした方が、私を新しい彼女とカン違いして修羅場になったりとかいろいろありましたケド! それは彼女さんたちがキライだからワザとヒドイことをしてるんですか? どうしてそんなことを?!」
好きじゃないのに、付き合う。
そうだとしたら、その意味が私にはサッパリ分からない。
礼子さんは困ったような顔になった。
「それは、自分であの子に聞いて。多分聞いたら怒ると思うけど」
「王子……和仁、先輩が怒ったらコワいですね」
プライヴェート聞かれるのはキライだってモモさんにも言ってたし。
烈火のごとく怒るのが目に見えている。
「怒らせたことあるんだ! 結構ツワモノだね、アンタ」
礼子さんは呆れたように言った。
スミマセン、結構しょっちゅう怒られてます。




