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それにしても。
「お見舞いに行った方がいいのかなあ」
行っても眠ってるのかもしれないが、さっきの話じゃ。
でも、ああやって手紙まで寄越して来るのは、『来い』という意思表示にも思える。
「だから、何が? お見舞いって誰の? 王子先輩の?」
麻美ちゃんが軽く、私をにらむ。
「家、知ってるわけ? アンタと王子先輩って、結局どういう関係なのよ?」
「さあ?」
ホント。それが分かれば私も、苦労しないんだけど。
友人じゃあ、ないだろうしなあ。
「あえていえば……知人?」
他に、うまくおさまるカテゴリーがない気がする。あ、それとも。
「友人の友人?」
要するに、坊ちゃん先輩を挟んでるだけの関係なんだよな、私たちって。
麻美ちゃんは大きくため息をついて。
「ホンット、あんた。刺されるから、そのうち」
と言った。
*
いろいろ考えた末に、顔だけは出しておくことにした。
治って来てから、『寝込んだのを知ってるくせに見舞いにも来なかった』 と、またネチネチ言われるのもイヤだし。
となると、何か買って行かなくちゃいけないわけだけど。花、でもないだろうしなあ。
花のようにキレイな王子先輩だが、その感性はそこらの男子と大して変わらず、花の名前もチューリップ程度しか知らない。高い花を買っていっても、お金のムダだろう。
とすると、食べ物か。
しかしなあ。王子先輩と食べ物について私が知っていることと言えば。
1 グリーンピースを親の仇のように憎んでいる。
2 摂取量はミニマム。
3 たいていの料理に対してケチをつける。
4 割り勘は一円単位。
このくらいだ。うーん、最近毎日のように夕食を共にしていながら(ダンス練習の途中で食べるので)、王子先輩の好みとか全く分からん。お母さんがいるんだから、栄養方面では問題ないだろうし。
少し考えた末、私は発想の方向を転換した。
先輩に喜んでもらうのではなく、看病するご家族に喜んでもらえるものを。ウン、この方が建設的。
大学の前の和菓子屋さんに行き、女子学生に人気の「サーファー最中」をゲット。
まあ、先輩の家は地元民だから、食べ慣れてるかもしれないが、この近辺でおいしいお菓子屋さんとか他に知らないし。駅前の「波乗りパフェ」はお持ち帰りできないしなあ。
で、この前、坊ちゃん先輩とてくてく歩いた道をたどって、王子先輩の家に向かった。表通りにあるお店なので迷わないですんで助かる。
家の方の出入り口は知らないので、前と同じにお店の方から入った。
「いらっしゃい」
カウンターにいた先輩のお母さんが声をかけてくれる。それから、ん? と言うようにまじまじと私を見た。
「えーと。私、高原先輩の友達で……」
「ああ、この前、コウちゃんが連れてきた子。今日はコウちゃん、まだ来ていないよ」
今日はって。そんなチョコチョコ来ているのだろうか。
そう言えば、王子先輩も昨夜、「部屋に坊ちゃん先輩用のベッドがある」とか言っていたような。




