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謎の王子先輩  作者: 宮澤花
フツウって素晴らしい
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「ありがとうございます」

 坊ちゃん先輩に力付けられて、私は元気が戻ってきた。


「でも、もう少し自力で頑張ってみます。フツウでなくてフツウでなくてフツウでありませんけど……王子先輩は王子先輩なりに、私のことを思って下さってるみたいなので」


 何かと言えば、『わざわざ僕が教えてやってる』と口走っているので。

 少なくとも、王子先輩の中では私のためなんだろう。

 最終的に何がしたいのかが全く意味不明なのが問題なんだけど。


「そうか。ムリはするな」

 坊ちゃん先輩はうなずいた。

「ツラいことがあったら、いつでも俺を頼ってくれ」


「ハイ。ありがとうございます、高原先輩」

 私は頭を下げた。ああ、本当に、神々しいくらいに、坊ちゃん先輩はさわやかで、いい人だなあ! どこかの顔だけのどヘタレ男とは大違いだ!


 坊ちゃん先輩が立ち去るのを、私は手を振って見送った。

 ああ、私の癒しキャラが行ってしまう。まあ、顔を見て話しただけでも、ずいぶん癒されたんだけど。


 それを見て、麻美ちゃんがため息をつきながら言った。

「アンタって。つくづく、坊ちゃん先輩のファンよね」

「え?」

 私は赤くなった。そういう言い方をされると、なんか、他意があるような。


「だ、だってフツウでしょ!? 坊ちゃん先輩は優しいし、頼りになるし、常識のある人だし」

「ウン。確かに坊ちゃん先輩はとってもいい方だし、尊敬すべき人よ」

 麻美ちゃんはうなずいた。当然だ。そこを否定する人がいたら、私は暴れる。そして、王子先輩はもっと暴れる。


「でも」

 麻美ちゃんは、私を厳しい目で見る。

「アンタ、王子先輩とも親しいでしょう。それで、何で坊ちゃん先輩よ? フツウ、王子先輩を取るでしょう」


 何でって。

「だって、坊ちゃん先輩だって人気じゃない?」

「そりゃ、家柄とかお金とか考えたら、坊ちゃん先輩だって優良物件だけどさ」

 麻美ちゃんは決めつける。

 イヤ、そういう外付けアイテムはどうでもいいんだけれども。


「坊ちゃん先輩はね」

 いいとこ、いっぱいあるんだよ、と言おうとする私を遮って、麻美ちゃんは言い切る。

「そんな手紙までもらっておいて、アンタのその王子先輩に対する冷たさはナニ?! ファンクラブに知られたら、殺されるわよ!」

 それがもうウザいんだけど。あんなダメ男にファンクラブがあるという現実が、いっそうウザい。


「あのね、麻美ちゃん。一つだけ言っておく」

 私は厳粛な口調で言った。

「あのヒトはね。遠くから眺めて楽しんでいるのが一番いいの。近付いたりしちゃ、いけない!」


 麻美ちゃんはたいへん怪訝な顔をして。

「何言ってるの、アンタ」

 と呟いたが。


 ウン、説明するのが難しいんだけど。世の中には知らない方が幸せなことがあるのだよ、友よ。


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