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「何をたくらんでるのか知らないが、僕を怖がらせようとしてもムダだからな。オバケとか、そんないかがわしいモノこの世に実在するわけがないだろう」
たくらむ? ナニ言ってんの、この人。
「怖がらせる? 何がですか? 一部のヒトからしか見えない方々は、ただ一部のヒトからしか見えないというだけであって別にコワいとかじゃないでしょう?」
そう聞き返すと、王子先輩は黙り込んでしまった。
ん? オバケって言った? さっき。
「もしかして」
こっちを見ている先輩のキレイな顔を、しみじみ見つめてしまう。
「オバケ……怖いんですか?」
まさか、ねえ。
次の瞬間。思いっきり、アタマをはたかれた。
おまわりさん! 事件!!
やっぱりモモさんとかとスピードもパワーも違うわ。少しは加減しろ、私は女の子だぞ?!
「そんなモノ! コワいわけないだろう! バカにするのも大概にしろ」
そんなことより、イタイんだけど。
「ああ……そうですよね。そこらのオバケより王子先輩の存在の方がよっぽど悪質で、コワいですよね」
王子先輩はそんなイヤミをスルーして、私の腕を強引に引っ張った。
「とにかく、さっさとお前の家に行くぞ!」
痛い痛い痛い。何を急いでるのか知らないけど、そんなに引きずるような勢いで歩かないでほしい。
ホント、はた迷惑な人だ。
*
そう。私はいわゆる、「見える」人である。
けれど、よく言われるように血まみれの人が見えたり、恨めしそうな顔が見えたりするわけではない。
私はただ、「一部のヒトからしか見えないヒト」が見えてしまうだけなのだ。
確かに、場合によっては着物を着ていたり、チョンマゲを結っていたりするからヘンだなあ、とは思うんだけど、あんまりリアルに見えるから何かの撮影なのかと思ってスルーしてしまうことも多い。
今回みたいに、一緒にいる人にヘンだと指摘されて初めて気が付くことも珍しくないのだ。
「私、コドモの頃から一部のヒトからしか見えない方々が見える体質で」
お茶を飲みながら、私は王子先輩に説明した。
「よく、誰からも見えるヒトだとカン違いして話しかけちゃって、みんなからキモチ悪がられたりしてたんですよー」
それは受難の時代だった。子供は異質なものに敏感だ。そしてそれを隠す術も知らなかった私は、よくいじめの標的にされたりした。
そんな私の思いも知らずに、王子先輩は。
「そうだね、それはキモチ悪い人だね」
とか、適当な合鎚を打っている。
適当な返事をするにしても、もう少しマシなことが言えないのか。
まったく、もうー。




