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女神の趣味で美少女吸血鬼に転生しましたが、地上で一緒に暮らすことになりました  作者: こはくさ


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16話

 翌朝、エミルに言われた通りギルドへ向かった。


 扉を開けると、いつもエミルが立っている受付の前に、見慣れない三人組の冒険者がいた。


 何やら言い合っているらしく、声が少し大きい。


「だから、もう少し上の依頼でもいけるって!」

「いきなり無茶するのはよくないでしょー?」

「おれはどっちでもいい……」


 近づくと、エミルがこちらに気づき、ふっと表情を緩めた。


「おはよう。よく来たね、リベル」


 その声に、三人が同時にこちらへ振り返る。


 ハーフエルフの少年。

 ヒューマンの少女。

 犬の獣人の少年。


「……誰だ?」

 少年が眉をひそめる。


「新入り?」

 少女がじっとこちらを見る。


 獣人の少年は鼻をひくつかせながら、無言で観察している。


「もしかして昨日言っていたのって……」


 リベルがエミルに問いかけると、エミルは「ああ、そうさ」と頷いた。


 そして三人に向き直る。


「この依頼を受けるなら、人数は四人は欲しいところだ。森の奥に入るからね。だから——そこのリベルも一緒に連れていくなら許可するよ」


 実力を持ち上げるわけでもなく、淡々とした言い方だった。


 ただ単に、人数合わせ。

 安全のための条件。


「は? こいつを?」


 ハーフエルフの少年が露骨に顔をしかめる。


「何それ、急に子供を増やすの?」


 少女も腕を組む。


 獣人の少年が小声で呟く。


「……ちっちゃいな」


 空気が少しピリつく。


「このガキが戦えるってのかよ?」

「足手まといだったらどうするの?」


 好き放題言われる。


 少しだけ眉を寄せたが、何も言わずにエミルの手元へ視線を落とす。


 そこにあった依頼書には、


 ――オーク討伐依頼。


 と書かれていた。


 場所は北の街道

 目撃数、三〜五体。

 単独行動の個体ではなく、群れの可能性あり。


 なるほどな。

 確かにこれはE級冒険者には荷が重い依頼だ。

 もちろん、俺も含めてだが‥。


「文句があるなら帰りな。依頼はいくらでもある」


 エミルが淡々と言い放つと、三人は一瞬黙り込んだ。


 ハーフエルフの少年が、舌打ち混じりに息を吐く。


「……チッ。わかったよ」


 不満を隠そうともせず、ずかずかと俺の前に立つ。


 見下ろす形になる。


「おい、足引っ張んなよ」


 その言い方に、こめかみがぴくりと動く。


(……こいつ)


 だが、ここで噛みつくのは違う。


 一応“保護者役”だ。


 軽く息を吐き、表情を整えた。


「最善は尽くすよ」


 あくまで落ち着いた声で返す。


 ハーフエルフの少年は少しだけ眉をひそめたが、特に何も言わなかった。


「リベル。E級冒険者だ」


 簡潔に名乗る。


 それを聞いて、ヒューマンの少女が一歩前に出た。


「ミリア・クロフト。あたしもE級。魔法使いよ」


 胸を張る。


 ハーフエルフの少年も腕を組んだまま名乗る。


「アルト・ヴァルセイン。剣士だ。……英雄になる男だ」


 最後の一言は妙に力が入っていた。


 犬の獣人の少年は、少し遅れて口を開く。


「ガルム。斥候をやっている」


 ぶっきらぼうだが、視線はしっかりしている。

 そして尻尾が、わずかに揺れていた。


 三人を順番に見渡す。


 ミリアとガルムからはそこまで強い焦りは感じない。


 だが、アルトだけは違った。


 エミルに言われた通り、言葉の端々に“英雄”という理想が滲んでいる。

 自分が特別だと証明したい――そんな熱が隠しきれていない。


 そのせいだろう。

 身の丈に合っているとは言い難い依頼にまで手を伸ばそうとしているのが透けて見えた。


 三人の装備にも目を向ける。


 剣も杖も革鎧も、まだ不自然なくらい光沢を保っている。

 刃こぼれも傷もほとんどない。


 使い込まれていない。


 ……おそらく俺と同じだ。

 つい最近、冒険者になったばかりなのだろう。


 新人四人。


 相手はE級上位とされるオーク。

 しかも群れの可能性あり。


 正面からぶつかれば、誰かが怪我をするかもしれない。


 さて、どうするか。


 無策で突っこむわけにはいかない。


 少し思案したあと、口を開いた。


「……出発前に、役割だけでも決めておかないか?」


「役割?」


 アルトが眉をひそめる。


「ああ。三人は普段組んでるんだろ? フォーメーションもあるはずだ。でも俺はまだみんなの動きを知らない。探索や戦闘をどう回してるのか、先に聞いておきたい」


 俺がそう言うと、ガルムが短く息を吸った。


「……普段はおれが先頭。索敵担当だ。

 後ろにアルトとミリアが並ぶ形で進む」


 淡々と、無駄なく続ける。


「戦闘になったら、アルトが前に出る。俺は側面を見る。ミリアは後方支援。魔法担当だ」


 簡潔でわかりやすい。


「なるほど」


 顎に手を当てる。


「なら、俺はどこに入る? 魔法は使えないし、前に出た方がいいか?」


 そう聞いた瞬間、アルトが鼻で笑った。


「オレとガルムがいれば前は足りてる。増えたら邪魔だ」


 言い方がさっきから癪に触るが、表には出さない。

 ガルムが少し考え込んでから口を開いた。


「……ミリアの横についてほしい」


「え?」


 ミリアが目を丸くする。


「ミリアは近接が弱い。後ろからの奇襲や、おれたちを抜けてきたやつを止めてほしい」


 理にかなっている。


「了解。護衛寄りってことだな」


「……よろしくね」


 ミリアが小さく笑う。


 思っていたよりも、三人のフォーメーションはしっかりしていた。

 少なくとも、形だけのパーティではない。


 英雄願望で無謀に見えるが、基礎はできている。

 エミルの言う通り、身の丈にあってない依頼を受ける以外はきっといい冒険者なんだろう。


「準備できたら行くか」


 そう言った瞬間。


「お前が仕切ってんじゃねぇ」


 アルトの声が鋭く刺さる。


「リーダーはオレだ」


 空気が、ぴんと張る。


 ガルムは無言。

 ミリアは困ったように視線を泳がせる。


 実力よりも先に、“立場”を守りたいタイプか。


 俺は一歩引き、肩をすくめた。


「悪い。提案しただけだ。指示は任せる」


 アルトはしばらく睨んでいたが、やがて背を向ける。


「準備だ。十分後に門前集合」


 そう言って、アルトはギルドを出て行った。


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