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20.やさしい(棒)

私の注目度が高まっていることを感じていると、後ろからざわざわと声が。

どうやら目的の子たちが現れたようで、


「殿下!おはようございます!」

「殿下、お久しぶりです!」

「殿下、お荷物お持ちします!」


「ああ。おはよう皆。お言葉に甘えて、荷物は頼むよ」


王子がやってきましたわ。

そして当然、その周囲には推定主人公ちゃんと他のイケメンたちも。

いつもならこうして挨拶をされると推定主人公ちゃんも元気よく返事をするわけですが、今日はおとなしい。それどころか、イケメンたちに隠れて人からの視線を避けているようにすら感じますわ。


「マター。ほら。危ないから手を取って」

「ツラいのなら、俺がいくらでも支えてやる」

「俺様に頼ると良い」


「うん。ありがとう、皆」


どうやら推定主人公ちゃんは落ち込んでいる様子。

やはり、家族が誘拐されたといった情報は伝わっているようですわね。もちろん、行方不明という認識をしているかもしれませんけど。どこまで詳しく把握しているのかまでは分かりませんわ。

ただこの様子だと、やはり私が捕まえた3人が家族ということで間違いないのでしょう。

周囲のイケメンたちへの依存が若干高まっているようにも見える推定主人公ちゃんですが、その顔はイケメンたちに連れられて歩く時ほんの少しだけこちらからもうかがえて、


…………はぁぁぁぁ~~~~~。

最高、ですわ!

その顔が見たかったんですのよ!実にお似合いですわ~。一生そんな顔をしていればいいと思いますの。


ただ、そうして表情が見れたら満足というわけでもありませんわ。

まだまだ私が見たいものは残っておりまして、


「お久しぶりですね。殿下」


「っ!エニケー嬢。よくのこのことを見せられたものだね」


運がいいのか悪いのか、丁度推定主人公ちゃんたちがユックリと進んでいる時に後から学園へとやってきましたのがエニケーちゃん。

いつ面(いつもの私に遊ばれてる面々)がそろいましたわね。


王子たちはエニケーちゃんを睨みますけど、そんなことで怯むエニケーちゃんではありません。

もう優しくしてあげる気は微塵もないようで、


「特に後ろめたいこともありませんので顔くらい出しますよ?それよりも私としては、公爵家の令嬢が近くまで来ているというのに挨拶すらしない無礼な平民の方がよくのこのこと学園に通えるものだと思いますが」


かなり強い煽りをしてきましたわ。

王子たちから誘拐の犯人が自分たちだと考えられていることは理解しているというのにこの発言ができるということは、相当覚悟をすでに決めているようですわね。そこの部分の否定すらしてませんし。

もうすでに、王子との関係を諦めているのでしょう。王子をつぶして他の国王候補の支援に回るつもりなのでしょうね。

もしかすると、婚約破棄も受け入れるつもりなのかもしれません(実は未だに成立していない婚約破棄)。


「なっ!?お前!」

「誰のせいだと思っているんだ!」


「誰のせいと言われましても何に対することかは分かりませんが…………例えば、自分の状況を理解していながら大切なものを守るための対策をしなかった人間とか、でしょうか?もしくは、お前を守るとはいったもののその守る対象の大切な者のことまでは考えなかった人間の可能性もありますね」


エニケーちゃんの火力が高いですわ。自分で考えたのかどうかは分かりませんが、これは確実に家で練習してきてますわね。何を言われるのか予想していたのでしょう。

逆に、王子含めてイケメンたちは誰もそういったことは考えてなったのでしょう。向こうが言い訳を用意してくることくらい予想がついたと思うんですけどねぇ。

もしかすると推定主人公ちゃんを慰めるのが大変でそんなことまで頭が回らなったのかもしれませんが、その結果がこれではねぇ。


ただ、だからと言ってエニケーちゃんの言葉を素直に受け止められる王子たちではありません。

王子たちでなくともエニケーちゃんの煽りだと素直に受け入れることは難しいですし、王族貴族はプライドが高いですから。自分の過ちなんて認められるはずがありませんわ。

当然彼らの反応は、


「僕たちの事を馬鹿にしているのか!」


怒り。

特にエニケーちゃんの言葉の中にあった王子たちを揶揄するような部分がプライド的に許せなかったようで、相当キレていますわね。

ただ、それでもエニケーちゃんは涼しい顔。


「そのつもりはなかったのですが…………思い当たる節がおありなのですか?それはいけませんね。ただこれは持論なのですが、本当に大切だと思うものには勝手に思考が割かれるもので、心配事などいくらでも出てくるものですよ」


「なぁ!?お前、僕たちの愛が本物ではないとでも言いたいのか!」

「俺はマターの事を心から愛しているんだ!ふざけたことを言うな!」


「ふざけてなどいませんよ。私の考えを言ったまでです」


そこまで言って微笑んで見せるエニケーちゃん、強いですわね。

誰が誘拐犯かは分かっていないはずですが、きっと派閥の中の誰かだとは思っているのでしょう。

そこまでするほど仲間が本気だと分かり、実際にことが起こってしまったのですから覚悟を決める必要があると考えたのかもしれませんわね。


こうしてエニケーちゃんの一皮むけた姿が見られたわけですし、言い争いもエニケーちゃんの方が優勢という雰囲気。というか、争いにすら見えないかもしれません。

これは間違いなくまた少し派閥の構成が変わりますわね。王子たちが劣勢になりそうですわ。


「さて、それでは私は失礼しますね。殿下も、本当に考えてあげられる相手を探してみてはいかがですか?」


「ふ、ふざけるな!」

「ま、待て!」


去っていくその後ろ姿は、まさに貴族。それも、派閥を背負えるだけの風格と威厳がある貴族ですわ。

これは間違いなく、王子たちよりも精神的な面で大きくリードしているでしょうね。このまま放っておくとエニケーちゃんが勝利をおさめそうですわ。


もちろん、そんなことをさせてあげるつもりはありませんけどね?

知ってまして?覚悟が決まった人間は、その覚悟が揺らぎ今までしてきたことを振り返ることに非常に弱いんですのよ?

おそらく今まで観察してきた限り根が優しくまじめなタイプであるように見えますから、今した発言を我に返って振り返るととてつもなく後悔するでしょうねぇ。


ということで早速エニケーちゃんをつぶしにかかりたいところですが、それはグッと我慢。

まだエニケーちゃんには働いてもらわなければなりませんから、今は別の事をしましょう。


「好き放題言いやがって」

「あんな厚顔無恥な言葉を吐けるとはな」

「もう人の心は捨ててしまったのでしょうか」


まずはイケメンたちがまだ残っているので、推定主人公ちゃんのお部屋に手紙でも届けておきましょうか。




《sideマター・ポツラカ》

「はぁ…………ん?これは?」


エニケーちゃんたちに地元を襲われて家族も行方不明になり、ケヌ君たちにはなぐさめてもらってたけど結局気分は回復しなかった私。そんな中学園も再開されてしまってエニケーちゃんと顔を合わせることになったけど、向こうは全く悪びれるそぶりもなかった。

憎しみと悲しみが今、私の心の中には渦巻いている。


気分も落ち込んで重くなった足を引きずりながらいったん自分の部屋に戻った私は、そこで初めてドアの下から入れられた手紙に気がついた。

そこには、


「私の家の領地はあらかた探しましたけど、見つかりませんでしたわ。他にも調べた領地を載せておきますので、ここにはいないと思ってくださいまし、か。フフッ。名前も書いてないのに、誰か分かっちゃうなぁ…………ありがとう。ログちゃん」


ログちゃん。

それは大切なお友達。今はお話ができなくなってしまったけど、いつかこの問題を解決してまたお話ができるようにしてみせる。

ログちゃんもこうして私のために動いてくれたみたいだし、私も頑張らないと。

本当に優しいね。ログちゃん。

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