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1.浮気ダメ!絶対!!ですわ

私の入学した学園は基本的に貴族が通うためのもの。

しかし、特待生だったり献金をしていたりという条件さえ満たせば平民が入学できないわけでもありませんの。


私が目を付けたのもそんな平民の中の1人。

回復系の魔法に才能があることに加え、地元の貴族が推薦をしたことにより入学できた者ですの。

王子にハンカチを拾ってもらったところで恋が芽生えたような雰囲気がしたため、王子とその婚約者を仲違いさせるために使えそうな存在ですわ。


と、そんなことを考えたところで思いましたの。

もしかして、この世界ってその平民を主人公とする乙女ゲームの世界なのではないか、と。


「まだ殿下お一人ですからハッキリしたことは言えませんけど…………しばらく観察しましょうか」


本当は最初から平民の子に関わって殿下との仲を深めてさしあげるつもりでしたわ。

しかし、この世界が乙女ゲームを原作とした世界なのであれば私の介入など必要なく王子やそのほかのイケメンどもと仲良くなるはず。


ということで、しばらく観察してみることに。

教室では私自身の目を使ってこっそりと様子を伺い、外に出る時には信用できる手の内の人間を使って尾行を。

そうしていれば、2週間もしないうちに、


「マター。よかったらお茶をしに行かないか」

「よければ一緒に今日は図書館で読書でも」

「今日模擬戦するんだ!よかったら見に来ねぇか!」

「俺様と共に食事をすることを許してやる。ついてこい」


爽やかイケメン、クール眼鏡、元気系筋肉に俺様系と、色々な属性のイケメンが目白押し。そして、全員かなりの位の高い家の出身というところもポイントですわね。

毎日そんなことになっているのですから、正直私が教室で見るのは兎も角として尾行などをさせる必要はなかったですわ。探らなくても噂が勝手に向こうから聞こえてくるんですの。


お陰で、推定原作主人公ちゃんは大忙し。

まだ誰を選ぶというルートにも入っていないようで、いろんなイケメンと毎日おしゃべりしたりお出かけしたりとしていますわ。それで時間がないというのもある意味贅沢な話ですわね。

私はもちろん、そんなことするくらいなら自分の時間に当てますけど。


「あまり時間をかけて誰かが選ばれても面倒ですし、今が丁度良さそうですわね」


推定主人公ちゃんがいろんなイケメンに手を出してくれているお陰で、こちらの工作もはかどりますの。

特に、今の段階であれあばまだ誰と付き合っているというわけでもないですから、それぞれの男たちとのトラブルが起こしやすいですわ。


すでにイケメンたちの婚約者さん達には不満が溜まっているようですし、こんなところに噂でも流れれば、


「殿下。一体どういうことですか!」


「ん?どうしたのかなエニケー嬢。そんなに大きな声を出したらはしたないよ」


早速王子の婚約者であるノダータ公爵家の令嬢、エニケー・ノダータちゃんが王子を問い詰めに来ましたわ。

ただ王子は鈍感なのか何なのかよく分かりませんが、エニケーちゃんをたしなめてますわね。そんなことをしても相手の怒りを助長するだけだというのに。


そうした私の考え通り公爵令嬢として気持ちを抑え込んでいたらしいエニケーちゃんは我慢の限界となったようで、


「はしたないのはどちらですか!聞きましたよ。殿下はそこのマター嬢と口づけを交わされたそうではないですか!この婚約者である私の許可も得ずに!」


「なっ!?」

「えっ!?」


怒鳴る。

王子と推定主人公ちゃんがキスをしていたという噂を聞いたために起こっていたというわけですわね。婚約者が他の女とキスしてたら切れるのも当然ですわ。


とはいえ、噂の真偽はというと残念ながら偽。

これは私が適当に作った噂ですの。噂好きの御令嬢の前で「最近あの平民と殿下はよく一緒にいるのを見かけますわね。もしかして恋仲だったりするのでしょうか?」なんてことを言って適当に盛り上がらせた後に、キスもしたのかもしれないなどと言ってみたらあっという間に広まりましたわ。

それこそ尾ひれはひれがついて一夜を過ごしているとか推定主人公ちゃんはどこかの家の隠し子なんて噂も出てましたわ。

ただ、エニケーちゃんがつかんだ噂は接吻のものだけだったようですが。


そうして適当に流された噂ですし、当然王子と原作主人公ちゃんにも思い当たる節などあるはずもなく、


「な、なんで君がそれを知ってるんだ!?」


…………ん?王子の返答が完全にヤった反応ですわね。

おかしいですわ。幻聴でして?


「誰にも見られてなかったはずなのに………」


いや、幻聴じゃなったっぽいですわ。推定主人公ちゃんまでそれっぽい事言ってますの。

おっかしいですわね~。私が流した適当な噂だったはずなんですけど。


本当に、多少仲がこじれたらいいな~くらいのジャブのつもりのものでしたのよ?まだ私の立てた計画の本番でも何でもないんですのよ?それでもうこんな改善不可能なほどに関係が悪化する事態になりますの?

愚かすぎて笑えますわ~。


「殿下、一体どういうつもりなのですか!我が家を愚弄するおつもりなのですか!」


「い、いや。そういうつもりではないんだけど……」


歯切れの悪い王子。

全面的に悪いのは王子と原作主人公ちゃんですし、こういった反応になるのも当然ですわね。


ただ、そんな王子も自分だけが責められているのは居心地が悪いのか、


「し、しかし、彼女と口づけを交わしたのは僕だけでは……」


「ハァッ!?どういうことですの!?いったい誰が!?」


あまり大きな声ではありませんでしたが、王子の呟いた声はしっかりとエニケーちゃんの耳に届いた様子。

どうやら王子の情報によりますと、原作主人公ちゃんは他の男ともキスしてるみたいですわ。もう私が何もしなくても余罪がたくさん出てきますわね。

適当に作った噂でも全部本当だったなんてことになりそうな雰囲気ですわ。


それで、当然口を滑らせた王子はエニケーちゃんから問い詰められるわけですが、予想は簡単にできますわね。

原作主人公ちゃんが仲のいい男(女の子もそうですけど)なんて限られますから、


「…………ふぅん?じゃあ、あいつが君と口づけを交わしていたっていう噂は本当だったのかな?」

「…………愚か」

「私はそんなに魅力がないでしょうか。まあどうせな私なんて結局その辺の雑草みたいなものですし。いや、それはやっぱり雑草に失礼でおこがましいというか…………」


それぞれの婚約者ちゃん達が自分の婚約者かもしれないと考えて冷たい視線を送ってますわね。

ただ、さすがにいくら平気で婚約者持ちの男とキスできちゃう原作主人公ちゃんと言えど全員と口づけを交わしたなんてことはあるはずもなく、


「いや、それはその……」

「べ、別にそちらの家との関係を軽視しているわけでは!」

「チッ。終わったことをグチグチ言ってんじゃねぇよ」


ん~?この反応はもしや、全員ヤってまして?

波乱の予感ですわ~。

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