17.単独行動
私の計画では、他の貴族などが送り出した盗賊などを利用して村を襲わせ、そこに戦力が集中している間に私たちの方はこっそり家族を誘拐して逃げるということにしていましたの。
しかしお父様はそんな私の作戦なんて甘いにもほどがあると言った様子で、放火と虐殺なんていう最悪のコンボを使うことを決めていたようですわ。
私がそこから詳しい計画を聞いてドン引きしている間にも私たちは目的地まで近づいていて、
「それじゃあ、計画通りに」
「了解しましたわ」
村が見えてきた段階で、それぞれ行動を始めますの。
まず数人が先行し、村へと侵入。これは旅人や商人のフリをしていれば簡単にやれますので、すぐにクリア。
そうしたら侵入した者達が村の出入り口を管理している人間達を次々に暗殺し、
「突入!」
後は出入り口が勝手に使えるようになりますので残りが入っていくという形になりますわ。
その後やることはまず放火。あっという間に侵入した出入り口の方面から火が上がり、辺りからは悲鳴や怒号が響き渡り始めます。
お父様もお父様の配下も初っ端から飛ばしていて、もう死体がいくつも積み重なっていますわ。虐殺するとは聞いてましたけど、ここまで容赦ないのを見るとやはり恐ろしいですわね。
ここまでできるなら私の計画なんてなくても自分が思うような状況を簡単に作れたのではないかと思いますけど、なんでそうしなかったんでしょうね?お父様の考えていることはやっぱりよく分かりませんわ。
あと、公爵家のトップ本人がこんなことに参加していることも意味が分かりませんの。
「こっちに!早く!」
「う、うん!」
さて、私も仕事をしないと後で起こられそうですし、手始めに目の前で逃げようとしている親子でも処分しておきましょうか。
私、別に自分で動いて他人を苦しませて喜ぶような質ではないのですけど。こんなことをしていても特に何も感じませんわよ。
なんて考えましたが、実をいうと私がお父様から任された仕事は虐殺への参加だけではありませんの。
当然それも仕事のうちとなってはいるのですが、
「ポツラカさん!こっちだ!」
「子供はこっちに逃げ住んだ!」
「は、はい!」
おっと。早速本命を発見しましたわ。
ポツラカという名前からして間違いないでしょう。
私が見つけたのは、推定主人公ちゃんことマター。本名マター・ポツラカの家族と思われる人達ですの。
両親と思われる男女と、弟だと思われる男の子が1人。
私の事前に調べていた情報とも一致しますし、間違いないでしょう。あまりゆっくりしていると子供だけ別の場所への避難ということで弟と両親が離されてしまいそうですし、今のうちに動くとしましょうか。
まずは急所を避けつつ両親の方に毒の塗ってあるナイフを突き刺しまして、と。
「ガッ!?」
「キャアアァァァァァァァァ!!!!?????」
「お父様!?お母さん!?しっかりして!!」
後は子供であるため慎重に取り扱わなければいけない弟の方にも魔法をちょっと。これで勝手に気絶してくれるはずですわ。強烈な不快感と共に失禁と嘔吐をしながら、ですけど。まったく安らかには眠れませんわね。
「ヒ、ヒィィィ!!!」
「来るな!来るな来るな来るなぁ!!」
ここまでできたら、もう後は消化試合ですわね。3人の事を視界の端にとらえつつ、お父様の配下以外に回収されないように周囲を殲滅するだけでおしまいですわ。
私もそこまで強いわけではありませんが、さすがに公爵家の令状としての嗜み(?)により多少の武術の心得はありますし、村人程度なら束になっていても問題なく対処できますわ。
「…………ふむ。どうやらうまくいったようだね」
「ええ。ここの人間達の言葉が嘘でなければ、この3人がターゲットのはずです」
「なるほど。それじゃあすぐに回収するとしよう」
そのまま処理をしていますと、急に背後からお父様が現れて確認を始めましたわ。心臓が止まるかと思いましたけど表面上は平静を保てましたわね。たぶん。
これで回収まで完了すればここでのお仕事は終わりなわけですが、気になることがないわけではございません。
例えばこの家族も推定主人公ちゃんの家族ですし、王子派閥の誰かしらが護衛を出していると思いますの。
実際私の周囲にはおりませんでしたが、数人腕のいい人間がいたようでかなり激しい戦闘を繰り広げていましたし。
そして、護衛の類と言いますと、
「替え玉の可能性、ありませんか?」
「それも含めて調査中だ。数人い個の3人の顔を見せて間違っていないかどうか判断する」
お父様も考えていたようですが、替え玉の可能性がありますの。本物はすでに逃れていることも十分に考えられるわけですわ。
先に家のものが強い敵から排除してくれたようではありますが、あまりにも今回捕えた3人の護衛が薄すぎましたからね。
私でも捕えられたことを考えると怪しいことこの上ないのですわ。
この辺の読みなどの話になってくると、色々と難しい部分がありますわ。あまりにも学園の時とは相手のレベルが違うんですの。
ただそうした不安を抱えつつも時間は残酷に過ぎていきまして、
「撤収」
どこからかお父様の声が聞こえてくるとともに、私たちは村から去らなければならなくなりましたわ。
恐らく、他の村などから救援のための兵士などが来たのでしょう。
すでにほとんど村は火の海となっていますし村人も息絶えてしまっていますが、野菜の1つくらいは助かるかもしれませんわね。
「…………さて、ここからがある意味本番、ですわ」
撤退を決めた私たちですが、ハッキリ言って油断して良い状況ではありません。帰るまでが誘拐、ですからね。
特に今回私の場合は単独行動になっておりまして、他の人間のサポートがないのですわ。
その状態で領地まで帰らなければなりませんの。マジつらたんですわ。
ちなみに私だけ別行動となる理由は、お父様たちはここから別の仕事をするからですの。
それは別に新しい仕事というわけではなく、誘拐した推定主人公ちゃんの家族を監禁する場所まで送らなければならないという作業が残っていることによるものですの。
私だけはそれに参加する必要がないからと先に帰されたわけですが、
「いや、どう考えても一緒に行動したほうがリスクなかったと思うんですけど?」
お父様やその配下がかなりの集団の状態で問題なく領地まで戻れるような仕組みがあるというのなら、私もそれに乗っかりたかったですわ。
何せ私、作戦開始直前に同行を伝えられたので帰る道の事とかあまり調べてませんし。
「帰り道が本当にこちらであっているのかも怪しいですわ…………今日は野宿になりまして?」
来る時はありがたいことに馬に乗って行けたのですが、帰りは私だけなので徒歩。トホホですわね(極寒)。
馬と人間では明らかに速度が違いますし、それと同時に人数が少ない分私の仕事が多くなるのですわ。
複数人なら周囲の警戒担当とご飯担当と調査担当となんて役割を触れたのですが、私の場合ほぼすべて自分でこなさねばなりませんからね。
本当にお父様は私の帰還が無事に成功すると思っているのかどうか謎ですわ、
「最悪の場合、発見されると我が家の関与がバレるんですけど…………その辺のリスクはどう考えているんでしょう?」
本当にお父様の考えはよく分かりませんわ。
早く学園に戻って、簡単に操れる連中を相手取って遊びたいですわね~。




