12.強制捜査ですわ~
「ううん。逃げない!私が守って見せる!」
キリッとした顔でモンスターと元気系イケメンの間に入った推定主人公ちゃん。
彼女がモンスターの目を見てぐっと力を籠めれば、
「な、なんだあの光は!」
「神々しい」
「っ!突然魔力が!?」
突然推定主人公ちゃんは発光を始め、何やら魔力が渦巻いて行きます。
そして、
「あれはまさか!結界か!」
「なんでただの平民があんなものを!?」
「だけど、あんなに大きな結界を張れば魔力がすぐになくなるぞ!」
推定主人公ちゃんの周囲に、大きな半透明の壁が出現。いわゆる結界という物でして、推定主人公ちゃんが生み出したもののようですわ。
土壇場で力が覚醒、しかもその力が結界なんてものとは、ずいぶんと主人公らしいですわね。やはり、この世界は推定主人公ちゃんを主人公とした乙女ゲームの世界ということで間違いなさそうですわ。
さて、そうして生み出された結界ですが、ただそれを出せば勝ちという物でもありません。
当然それを維持するには魔力という魔法を使う時に消費するものを使うため魔力がなくなれば消えてしまいますし、まず結界の強度がモンスターの攻撃に耐えうるものなのかも不明。
ただ力が覚醒するだけで勝てるほどモンスターも弱い個体ではないのですが、
「グオオオオォォォォォ!!!!!!」
咆哮と共に結界の向こうにいる推定主人公ちゃんに向けて突撃をするモンスター。
ドンッ!という強い音共に周囲が揺れますが、
「……耐えてる!耐えてるぞ!」
「あの攻撃を耐えられるのか!?」
「随分と強い結界。これは間違いなく、才能があるんでしょうね」
結界は維持されたまま。攻撃に耐えきって見せましたわ。相当強力なものということですわね。
本当に主人公全開ですわねぇ。
推定主人公ちゃんの表情を見るとかなり苦しそうですし限界も近いのでしょうが、ここは貴族たちの通う学園ですの。当然ですけど、少し離れた場所ではありますが護衛も待機しているのですわ。
魔力が尽きるころには彼らが到着して、
「ふむ。さすがは各家から選出された護衛なだけはありますわ。一瞬ですのね」
「ええ。実に勉強になります」
本当に一瞬。王子の派閥とエニケーちゃんの派閥での意地の張り合いもあるのでしょうが、相当な威力の攻撃が数人によって行われてモンスターはこと切れてしまいましたわ。
あのモンスター、かなり強いはずなんですけどね。さすがに格が違うということでしょうか。
もちろんそうしてモンスターを倒した護衛の中には、公爵家としての威厳を示すために選出されただろう私の凄腕の護衛もいるはず…………なのですが、横から何やら聞こえないはずの声が聞こえた気がしましたわ。
「あなた、というか、あなたたち、あれには参加しなかったんですのね」
「ええ。他の家の方々が張り切っている様子でしたからね。私たちの目的はお嬢様をお守りすることですし、わざわざあそこに参加する必要はないと判断いたしました」
「あら。そうですの。職務に忠実で素晴らしいですわね」
どうやら我が家の護衛はモンスターの討伐に参加しなかった様子。公爵家としてどうなのかという気持ちもありますが、よくよく考えてみれば他の家に私たちを糾弾するメリットがありませんわね。
まだ我が家はどちらの派閥につくかも決めていないですし、無駄に非難して敵に回したくもないでしょう。
ということで、モンスターも倒されて我が家に関しては被害なし。初めての剣術の授業は急遽終了されてまたもや延期されてしまいましたが、今回の事件は終わったと言っていいでしょう。
…………なんてことあるはずもなく、
「この学園の中にモンスターがいるなんておかしい!確実に組織的な犯行であるはずです!それこそ、学園の中に手引きをした人間がいるはず!」
「は、はぁ。左様ですか。その辺りは国からの調査で確認してもらうつもりなのですが」
「いえ。国から派遣される人員を待っていては遅いでしょう。学園の中に関係者がいるのであれば、証拠を隠蔽される可能性もあります!何かされる前に、我々が調査をさせていただきます」
「なっ!?そんな勝手なことを許すわけには!」
ここから始まりますのは犯人探し。
イケメンの中の1人の頭脳派系眼鏡が今回の件は自然に起きたものではなく誰かが手引きをしたことによるものだと考えたようで、事件現場の調査をしたいと学園側に訴えているのですわ。
ただ学園側としてはこれから専門の人達を呼んで調査してもらうというのに学生なんて入れて現場を荒らしてほしくないと止めようとしておりますの。学園側の気持ちは当然のものですわね。私だって同じ立場なら調査要求は拒否したと思いますわ。
しかし、今回は相手が悪い。
頭脳派眼鏡が動くとなると主人公ちゃんもそれに参加するわけで、ということはつまり、
「悪いけど、拒否はさせてあげないよ。僕もおかしいと思うからね」
「なっ!?殿下!困ります!」
王子も動くのですわ。
王家の権力にはさすがの学園も逆らえませんの。もちろん王族として言ったのですからそれ相応の責任は伴うわけですが、そんなの気にしていないという様子ですわね。とりあえず推定主人公ちゃんが動いたから自分も動いたといった様子ですわ。自分の立場とか本当に分かっているんでしょうか?
分かっていないのでしょうけど、こちらとしても王子がそう動くことは想定済み。
というか、そう動くと確信していましたわ。
ですから、
「…………お嬢様?参加されなくてよろしいので?」
「ええ。かまいませんわ。あまり首を突っ込んでもろくなことにならないのは分かりますし」
私は何もせずにその様子を眺めておくことにしますの。
調査すれば犯人の証拠は出てくるかもしれませんが、私に犯人を見つけるメリットはありませんからね。ここは傍観させていただきますわ。
それに、下手に動かない方が、
「それではまず、君たちの持ち物を改めさせてもらう!」
こういうことになった時も対応できますし。
王子が持ち物チェックをすると言ったかと思うと、次の瞬間にはその護衛達が一斉に動き出し私たちに接近。集まっていた生徒や教師の持ち物を検査するというつもりのようですの。
後から苦情が来ること間違いなしの行動ですが、お構いなしですわね。考えなしが権力を持つとこういうことになるから本当に恐ろしいですわ。
ただ、
「申し訳ありませんが、拒否させてもらいますわ。そちらもお仕事なのは分かりますが、あまり変なことはされたくありませんの」
「悪いですが人数で言えばこちらの方が圧倒的に有利。お嬢様には指一本触れさせるわけにはいきませんな」
「くっ!殿下に逆らうというのですか!」
私は護衛に守ってもらっているので、調べさせてあげませんが。
王子の護衛の方は私だけに集中して狙うことが不可能なため、私だけをまもっていればいい私の方の護衛とは人数に差が生まれますの。
無理矢理検査しようにも、この人数差を覆してまでやることは不可能なのですわ。
ついでに、
「安心してくださいまし。あなたにも指一本触れさせませんわよ。もちろん、あなたから進んで殿下に協力したいというのならあちらの方に検査してもらってもいいですけど」
「ありがとうございます!検査はその…………何されるか分からないですし怖いので」
授業に一緒に来た子も護衛には守ってもらっていますわ。まだ近くにいたので護衛も守りにくさは特にないでしょう。
私に声をかけたこと、後悔はさせたくないですからね。これくらいのサービスはしてあげてもいいでしょう。
もちろんお礼は勝手にこちらがもらっていきますけど。
ふふっ。どんなことで返してもらいましょうか。考えるだけで楽しくなってきますわねぇ。




