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18話 スティアからみたリオン

この話はスティア視点のみです

※スティア視点


 ……本当に呆れた男。


 スティアは心のなかでそう呟く。


 この都市に来て2日目。

 ゴブリンロードを倒したという存在が気になって、わざわざこんな場所まで来た。


 実を言うと、そこまで期待をしていなかった。

 でも、蓋を開けてみれば、出てきたのは意味不明な存在。


 スティアが今まで見た中でも、本当にとびきり。

 

「……ちゃんと生きてるかしら?」


 部屋に運んだ後、カルラに任せたので大丈夫なはずだが、多少の心配は拭えない。

 そんなことを呟きながら、スティアはミルクを飲む。


 酒も飲めないこともないが、どうも好きにはなれなかった。


「スティアさん。約束のもの、準備できました」

「ありがとう。場所は何処?」

「コチラです」


 ギルドの職員に連れられ、スティアは歩いていく。

 着いた場所にあったのは、大きなゴブリン、つまりゴブリンロードの死骸。 


 魔石はリオンが剥ぎ取り回収していたが、死体そのものは洞窟に放置されていた。

 が、調査等の目的のためにギルドが死体を独自に回収し、このように保管している。


「聞いてたけど、やっぱり大きいわね。ゴブリンキングと同じくらい、もしくはそれ以上かしら」

「別の場所にゴブリンキングの死体も保管してありますが、ご覧になりますか?」

「そうね、時間があったら確認するわ」


 スティアはゴブリンロードの死骸をくまなくチェックする。


 内臓や口内が大きく焼けただれていることから、死因はリオンの魔法であろう。


 それは理解した。――が、


「彼の魔法では、一発で倒せるはず無いのだけれど」


 スティアは率直な疑問を口にする。


 ここ1日で、リオンの魔力量や魔法の威力に関しては本人並みに詳しくなった自信がある。

 そこから断言するならば、ゴブリンロードを倒すのに少なくとも10回は魔法を使用する必要があった。


 しかし、彼は魔法の連発が出来ない様子。

 である以上、ゴブリンロードの反撃を捌く必要が出たはずなのだが……。


「ねえ、そこの職員。報告だと、リオンとカルラ以外にもう1人同行者が居たはずよね?」

「ローウェンさんの事ですか?」

「名前は知らないわ。その人を連れてきてくれる?」

「……今からですか?」

「今からよ」


 有無を言わせぬスティアの言葉に、ギルドの職員は泣く泣くといった感じで命令に従い出した。





「……で、俺が呼ばれたってことか?」

「そうよ」

「……ケッ、そんなん本人から聞けばいいじゃねえかよ。一緒に依頼こなしてんだろ?」


 突然呼び出されたローウェンは悪態をつく。

 

「今、彼は疲れて寝ちゃってるの。流石の私も、それを叩き起こすほど人でなしじゃないわ」

「俺やギルドは顎で使うのにか?」

「その分、報酬は払ってるはずよ」


 スティアはそう言って、ローウェンに銀貨を投げる。

 ギルドの職員には渡していないが、そもそもSランクが命令に応じて依頼をこなしている時点で破格のことだった。


「……で、何が聞きてぇんだよ」


 銀貨をキャッチしたローウェンは、いやいやと言った感じで言葉を返す。


「彼は、どうやってゴブリンロードを倒したの?」

「魔法だよ。俺もやられたが、相手の体内に直接魔法を撃ってたな」

「1回じゃなかったはずよ?」

「ああ。今まで1回で決着がついてたのに、ってアイツも驚いてたな。だから何回、何十回って繰り返してた」


 ローウェンは、まるで昨日起きたことかのように鮮明に語る。


 彼にとっても、それだけ衝撃的な出来事だったのだろう。


「その間のゴブリンロードは? 反撃ぐらいしたと思うんだけれど」

「してたな。初っ端から上級魔法を撃ってきやがった。……んだが、2回目以降はどうも不発が続いたんだ」

「不発?」

「リオンの野郎が、なんかしてたんだろうよ。魔法の魔力の一部を操ってうんたらかんたらとか言ってたが、俺には分からん」


 その言葉に、スティアは一層顔を険しくする。


 もしかして魔法の発動タイミングに合わせて、それに介入する形で魔法を使ったと?

 ……馬鹿げてるわ。そんなの、思いついても誰が試そうとするのだろう。


「で、業を煮やしたゴブリンロードは素手で殴りかかるが、アイツはがむしゃらに走って逃げ回るんだ。戦士が見たら失笑するぐらいの動きだが、躱すためならアレも正解か。たまにカスリもしてたが、ローブのおかげでダメージはなさそうだったな」

「……ローブ?」


 そういえば、リオンがローブを着ていたことを思い出す。


 だが彼の魔力量ではすぐに使い果たしてしまうはずだ。


「なんだか特注性らしいぜ。詳しくは知らねえけどな」

「……そう」

「で、そっからは10分以上の泥仕合だったが、最終的に立ってたのはリオンの野郎だったってわけだ。……こんなんで良いか? これ以上は本人に聞かねえとわかんねえと思うが」

「ありがとう、助かったわ」


 Sランク冒険者に感謝を言われたのに驚いたのか、ローウェンはバツが悪そうに頭を掻く。


 その一方で、スティアは思案を広げる。

 10分間、ずっと魔力の流れをつぶさに監視し、相手の魔法に対して妨害をしていたということ?


 それはどれだけ器用だとか才能がある、とかでは説明にならない。

 仮にスティアがチャレンジしたとしても、10回に1回成功するかどうかの芸当だ。


 ありえないほど、馬鹿げたほどの努力があってしか、絶対に達せない領域。


「才能では超えられない、努力の壁……ってところかしら」

「あ? なんか言ったか?」

「いいえ、何でもないわ」 


 更に興味が出てきたじゃない。


 スティアはそう心の中で笑うのであった。

 

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