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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第八章 土の精霊剣
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分散と救出

 魔物の本体を引きずり出したはいいが、このまま戦うわけにもいかない。連携してくるほどの知能が魔物にあるかはわからないが、三体纏めて相手にするのは良くないだろう。各個撃破と行きたいところだが、本体以外を倒したところで再び再生されるのがオチである。


 「それでは、一体は私(わたくし)が相手しますわね」


 スノウの行動は早かった。魔物の一体を掴み、「えいっ」と可愛らしい掛け声と共に投げ飛ばした。かなりの体格差があったはずなのだが――そこは触れないでおこう。脳筋系肉体派精霊剣スノーホワイト。今日も平常運転である。


 「それでは、もう一体は私が足止めしましょう。セイブル様のお力を借りてもよろしいでしょうか」


 「わかりました。メルたちは本体をお願いしますよ」


 ナナミとセイブルがもう一体の魔物の相手をするために走り出す。必然的に、私とマスターとアズールが本体の魔物と戦うことになるわけだ。


 「まずは様子見っと」


 アズールが蔓(つる)を操り魔物の動きを封じる。さらに巨大な杭を生成し魔物に撃ち込むが、やはり外殻に阻まれる。だがそれで構わない。


 「――炎よ」


 杭を起点とし発生した炎が魔物を包み込む。特に指示はしていなかったが、アズールは燃えやすい木を生成していたようだ。魔物の体に巻き付いていた蔓と合わせて、かなり派手に燃え上がった。


 「やったか!」


 「やめなさい。絶対やってないでしょうそれ」


 案の定というべきか、炎の中から無傷の魔物が出てきた。もっとも、ダメージはあっても再生しただけかもしれないが。どちらにせよ、魔物は健在である。


 魔物の動きに合わせて、マスターが数度斬りつける。しかし、瞬きよりも短い時間で再生されてしまう。


 「やっぱり普通に攻撃してもあんまり意味がないみたいだね」


 「まあ、そうでしょうね。さてどうしたものかしら」


 「さっきみたいに、炎の魔法で焼き払えば良いんじゃないの?」


 確かにその通りなのだが、問題があった。


 「さっきの魔物と違って、燃えにくいみたいなのよね。おまけにサイズも一回り大きい。一点突破すればダメージは与えられるかもしれないけど、多分すぐに再生される」


 「攻撃範囲を広げると、今度は倒しきれない?」


 「そういうことね」


 手がないわけではない。それなりのリスクはあるが、現状を突破するためには背負うべきリスクだろう。そのためには近づく必要がある。自分たちの何倍もの大きさがある魔物の懐に潜り込む度胸が求められる。


 「マスター、魔物の外殻をぐるりと一周、走り回ってくれるかしら。なるべく広範囲が見れるように」


 「ん、了解」


 マスターがためらいなく魔物に接近する。詳細を聞いていないのに言う通りにしてくれる辺り、私を信頼しているということなのだろう。頼もしい。頼もしすぎる。


 「よくわからないけど、足止めは僕がやるよ」


 アズールが再び蔓を生やして魔物の動きを封じる。これで幾分やりやすくなった。多少動き回られてもマスターの身体能力ならば問題はなかっただろうが、難易度が下がるに越したことは無い。


 マスターが魔物の外殻を走り回る。途中何度か魔物が外殻の棘を飛ばしてきたが、マスターは難なくそれをかわしていた。


 「マスター、止まってちょうだい」


 しばらくして、目当てのものが見つかった。魔物の大きさからみてもう少し時間がかかるかと思ったが、どうやら私たちは運が良いらしい。


 「あそこよ。あそこに剣(わたし)を突き立ててちょうだい」


 「了解、っと」


 私が指差した場所へ、マスターが一息に跳躍した。着地と同時に剣(わたし)を突き立てる。ぐぁいん(・・・・)という音と共に弾かれてしまったが、それでいい。要は接点が持てれば良いのだ。


 「さっさと起きてちょうだい、寝坊助さん!」


 魔物の体内に向かって魔力を流し込む。すぐには変化が現れなかったが、手ごたえはあった。おそらく、これで大丈夫なはずだ。


 しばらくして、突然魔物の内側(・・)から杭がはえてきた。さらに、みしみし(・・・・)と音を立てて傷口が広がり始める。


 「助かりましたぁ。魔物を抑えるのに夢中で、余裕がなかったんですよぉ」


 どこか間延びした声が響く。少し遅れて、魔物の内部から金髪の少女が姿を現した。ベージュ色を中心としたブラウスと丈の長いスカート。全体的に落ち着いた印象を受ける。首元には鎖のネックレスを下げている。


 「そちらの方は初めましてですねぇ。土の精霊剣、マシコットですぅ。どうぞよろしくお願いしますぅ」


 マシコットがこちらに向かってお辞儀をしている。五本目の精霊剣。土を司るマシコットのお出ましだ。


 「助け出してすぐで悪いけど、あなたの力が必要なのよ。手を貸してくれるかしら」


 「もちろんですよぉ。あぁ、こういうのを初めての共同作業と言うんでしたっけぇ」


 「あんたは何を言っているのよ……」


 恋愛脳はスノウだけで充分である。これ以上面倒なキャラクターが増えてはたまらない。


 「それで、このあとどうする?」


 「いったん距離を取りましょうか。マシコットがいるなら取れる選択肢の幅が広がるわ」


 私の言葉に従い、マスターが魔物と距離を取る。魔物はまだ息をしている。早速だが、マシコットの力を見せてもらうとしよう。

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