同行と修理の方法
「気持ちよく負けましたわ。いやはや、皆さま流石ですわね」
「私をぶち折っておいて、調子のいいこと言ってるんじゃあないわよ……」
スノウが正座をしながら髪をかき上げている。口では反省の言葉を言っているが、内心はどうだか。殺されかけた身としては思うところはあるのだが、あまり問い詰めすぎても仕方がない。スノウはシロウの命令を忠実に遂行しただけなのだから。
「それで?」
「それで、とは?」
「とぼけるんじゃないわよ。私たちを試せ、というのがシロウの指示なら……それが終わった今、私たちに伝えるべき情報があるんじゃないの?」
戦闘前に、スノウはシロウから指示を受けたと言っていた。ならば当然、次に私たちがどうすれば良いのか、情報を持っているはずだ。実際、私たちは大型の魔物に関する情報も、土の精霊剣の居場所も掴んでいない。スノウはどちらか――あるいは両方について知っているはずだ。
「もったいぶっても仕方ありませんし、素直に白状するとしますわ。私が伝えるべきことは二つ」
スノウが指を二本立て、少し間を置く。もったいぶっても仕方ないと言ったわりに、なかなか本題に入ろうとしない。痺れを切らして催促しようとしたタイミングで、スノウが続きを話し始める。
「一つは、戦いが終わったらあなた方に同行するように言われてますの。そしてもう一つは……折れた剣の治し方、ですの」
「……治せるんだね?」
マスターがやや食い気味で尋ねる。口調は静かだが、嘘をついたら許さない、といった雰囲気が出ている。
「景気よく折れちゃってるけど、どうするんだい? また僕たちに試練でも与えるのかな」
アズールの一理ある。というか、次の展開はそうなる気がする。私の修理と引き換えに、また何かやらせるつもりじゃあないだろうか。そうなった場合、また面倒なことになるが――背に腹は代えられないというやつである。剣が折れたままでは今後の旅に支障が出る。というか、私が捨てられる可能性もある。マスターがそんなことをするとは思えないが、お荷物になることを良しとする私でもない。
「対価については私も知りませんわ。それについてはシロウ様本人に聞いてみるのがよろしいかと」
「シロウさん本人……? ひょっとして、まだ生きている人なの?」
マスターが事情を把握していない様子で尋ねる。まあ、無理もない。時間を移動する魔法のせいでややこしくなってはいるが、私たちが作られたのは何十年も前のことである。亡くなっていると勘違いしても仕方がないだろう。
もっとも、未だにシロウが生きていることは私も知らなかったのだが。殺しても死なないような奴ではあったが、それにしても長生きだと言えるだろう。
「それで、シロウ様はどこにいらっしゃるのですか? まさか知らないわけではないでしょうね」
セイブルが先を促す。シロウが生きているのならば、当然その居場所も知っているだろう。
「もちろんですわ。シロウ様は現在、本物の黄金都市にいらっしゃいますわ」
「本物……やはり、ここはスノーホワイト様が作った偽物の町でしたか。道理で以前来た時と場所が違うはずです」
ナナミが何かに納得したように、何度か頷いている。そういえば、前にも黄金都市に来たことがあると言っていた。どういう用事だったかは聞いていないが――それは今ここで言及するべきではないだろう。
「偽物って……確かに、あれだけ暴れたのに野次馬の一人も来ないのはおかしいと思っていたけど。町の人たちもスノーホワイトが作った偽物だったの?」
「ええ、その通りですわ。結構苦労しましてよ?」
スノウが少しふんぞり返りながら、自慢げに言う。確かに見事な腕前ではあった。偽物だという気付きがなければ――いや、偽物だと聞かされていても信じることはできない。それくらい精巧に作られていた。
まあいい。あまり優秀な剣が仲間に加わると私の存在価値がまた揺らいでしまうのだが――そこは積極的に無視する。とにもかくにも、まずは折れてしまった剣をなんとかしなければならない。
「さて、それじゃあ次の目的は決まったわね。申し訳ないけど、剣の修理に付き合ってもらうわよ」
「そうだね。みんなもそれでいいかな?」
マスターが確認すると、全員が頷いた。改めて黄金都市の位置をスノウに確認すると、ここから一時間程度の距離のようだ。案外近いところまで来ていた。この調子なら、日が沈む前には到着できるかもしれない。
「名前は何度も聞いていたけど、会うのは初めてになるのかな。シロウさんってどういう人なの?」
「あー……そうね。なんと言ったらいいのか」
マスターの素朴な、しかしもっともな疑問に言葉を詰まらせる。あれをうまく説明できる言葉を私は持っていない。
「色々と常識はずれな人よ。その辺りは……会えばわかるわ。嫌でもね」




