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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第三章 木の寄生剣
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幕間の物語 姉ケ崎シロウ

 「……とまあ、このように、俺の才能の恐ろしさが証明されるわけだ」


 「さすがですシロウ様」


 「同時にお前の頭の悪さも証明されるわけだな」


 「おっしゃる通りですシロウ様」


 「お前、全肯定すればいいと思ってない?」


 あたたかな日差しの中、俺は自作した白板を用いて講義を行っていた。講義と言っても話を聞いているのはメイドのカレンだけで、しかもカレンは話を理解しているのか怪しい。というか、理解していないだろう。先ほどから適当な相槌をうっているだけである。


 この世界に転生して二十五年。気づけば前世の年齢と同じだけの時間をこの世界で過ごしていることとなる。


 はじめは困惑した。死の瞬間は覚えていないが、気づけば赤ん坊に生まれ変わっていたのだ。当然だろう。すっかり変わってしまった体に戸惑いを覚えたりもしたものだが、二十五年も使っていればさすがに慣れる。前世と違って美形に生まれたのもポイントが高い。


 だが、喜んでばかりもいられなかった。この世界には明確な脅威が迫っていて、世界はゆっくりと滅びへと向かっていた。魔物の存在である。人の手では倒せない魔物の群れは、人類を確実に追い詰めていた。


 そもそも、この世界の人間は争いごとに向いていないというのも大きい。競争心や悪意というものが薄いのだ。競い合うよりは助け合い、疑いあうより信じあう方を選ぶ。この世界はそんな人間の方が圧倒的に多い。


 ある時、ふとした思い付きで硬貨を街中の手すりに置いたことがあった。治安が良いこの町で、お金が落ちていた時、人々はどういう反応を示すのか試してみたのだ。


 結果として、手すりのお金は増えた。通りがかった人が、倣うように硬貨を置いていったのだ。硬貨を置いていった人々を捕まえて話を聞いてみると、どうやらお供え物と同じような感覚で置いていったらしい。


 そんな人々が暮らす世界だ。戦う方法はほとんど発展していなかったため、人々は魔物に対抗する手段を持たず、生活圏はどんどん縮小していった。


 それは俺が魔物への対抗手段を開発した後も同じことだった。そもそも武器を扱える人間が少ないのだ。魔物に対抗できる武器を作ったところであまり効果はなかった。


 「シロウ様、お菓子の準備をしてまいります」


 「うむ、適当に飲み物も準備してくれ」


 かしこまりました、と一礼してカレンが去っていく。流れるような金髪に青い目。見た目だけならば百点満点のメイドなのだが、どうも適当というか、俺を敬う心が欠けている気がする。


 だがあれで気配りはできているし、兄がいるから問題ないと家を飛び出した俺についてきてくれたのだ。文句は言えないだろう。


 カレンが戻るまでの間、板書の内容を整理する。水面を使った空間移動魔法の術式である。いくつか制約はあるが、これがあれば様々な距離と時間の問題を解決できるだろう。


 そう。時間の問題も解決できる。剣を鍛える(・・・・・)時間が足りなかったが、この魔法を使えばそこは問題なくなる。


 「お待たせいたしました」


 カレンがテーブルにケーキと紅茶を用意した。俺は研究の手を止め、食事休憩をとることにした。


 食べながら、今抱えている課題について考える。魔物への対抗手段は用意できた。あとは、それを扱える人材をどうするか、である。


 ある程度の目星はついている。人が扱えないのならば、自動で魔物を排除できるシステムを作ればよい。だが、それとは別に、魔物討伐用の武器を扱える人材を用意しておくべきだろう。


 そのための精霊剣である。剣そのものに自我を与え、魔物を倒させる。問題は、どうやって自我を与えるかだった。人格をゼロから作り出すのは難しい。だが、移植ならばどうか。死に瀕している人間の魂を抽出し、剣に宿らせた――そうして炎の精霊剣を作った。一度成功例ができ上れば、あとは簡単である。炎の精霊剣を参考に、その他の属性の剣を作り上げた。


 だが不十分である。剣だけでもそれなりに魔物に対抗できるが、剣の性能を十全に引き出すためには、やはり使い手が必要だ。


 「ところで、頼んでいたものは準備できているのか?


 「はい。シロウさまが指定した材料は、全て用意しております」


 もう少し時間がかかるかと思ったが、やはり優秀なメイドである。あとは普段の態度を改めてくれれば――いや、よそう。これ以上は高望みというものだろう。


 「その前に、風呂にでも入るか。背中を流してくれ」


 「承知いたしました」


 風呂場に向かいながら、今後のことを考える。仕込みはまだいくつか残っているが、大筋では終わっている。あとは淡々とやるべきことを進めていくだけだ。


 この世界を救う英雄を育てる企みは、確実に進んでいる。

第三章完結です。次回の投稿は6/28(木)を予定しています。

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