外伝〈封印〉
四章と五章の間話
千里は気絶してるので芹に頑張って貰ったです。
そんなこともあったよ。てな話。
にしても、ナンダロウ?
久しぶりに書いたら設定忘れて訳がわからなくなったよ(@_@;)
オチってなんでしたっけ?
2014/4千里と万里間違ってたことにようやく気づきました(;一_一)えらい違いです。
申し訳ない。
いつからだっただろう。
最初はただ単なる義務感のようなものだった。あまりにも、あの子が不器用て見ていられなくて。何処か最初は居なくなってしまった彼女ーーと似ていて。
笑うたびに嬉しくて、泣く度に手を差し伸べたくて。助けたくて。話したくてーー笑い掛けて欲しくて。小さな彼女の行動に一喜一憂をしていた。
いつしか俺の中心には千里がいた。恋や愛。それを感じる前に無意識にきっと俺は惹かれていたのかも知れない。
けれどーー何一つ踏み出せないのは俺の方だった。
怖かったのだ。彼女の拒否が。『それ』をされるくらいであれば、何も無いほうがましだと思っていた。知られたくない、そう思っていた。
だけれど。
頬に涙がポツリと落ち、触れている少女の緩やかな白い頬に流れていく。長い睫毛。それがかすかに動いた。
きっと本当に願いを叶えたかったのは俺の方なのかも知れない。
熱を微かに帯びる薄い唇は柔らかく微かに甘い。抱き竦めた彼女の身体は見かけ以上に細く、力を込めると折れてしまいそうな気がした。
ただ、彼女が俺に何かを返す事は無かった。彼女はすでに意識を飛ばしていたのだ。それは初めからなのか、先程からなのかはよくわからない。ただ、その頬は微かに紅く染まっているように見えた。
「ーー?」
ふと、俺は身体に違和感を覚えて掌に目を向けた。身体の『力の波』が安定しているのだ。先程までは振り幅が大きく不安定だったのだけれど。身体の重苦しさも感じない。
なるほど。ど俺は千里を抱え直して対面する人影に目を向けた。
其処には白い髪と桜色の目を持つ女ーー瑠璃と、真っ青な顔で口をまるで魚の様にパクパクさせている少女ーー凪が立っていた。黒い髪を振り乱し、今にもこちらに襲いかからんとしそうだがそれを平然とした表情で瑠璃が止めている。
「恥ずかしくない? 人前で」
「ーー本当はこれが目的だったのか?」
俺は彼女の質問を無視するようにして口を開いた。肯定も否定もしない。どこか微かに自嘲が混じる笑みだけがその質問に肯定している様に見えた。
「偽物」
呟いて足元に描かれた『封印式』に目を落とした。黒い、まるで蜘蛛の巣のような封印式。
ーー確かにこれは力を奪うようだ。けれどそれは『表面』のみ。動かない様に、動けない様にするためのただの法陣。よく見れば俺にだってすぐ分かることだったのに。
慌てることなど何一つ無かったのかもしれない。
自身の未熟さを痛感して顔をしかめる。それに合わせるようにして苦笑気味に瑠璃は肩を竦めてみせた。
「どうして?」
「私にはね。未来が、見えたの知ってるでしょ? 沢山の不確定なものーー今となってはその全て思い出せないんだ」
それは恐らくここに居るのが彼女の残滓でしか無いことに関係しているのだろう。そう、思った。
降り続く雪を見上げながら瑠璃は消え入るように続ける。いや、彼女自身の存在が消えかけているように俺には見えた。
その視線は暗く曇った空に向けられている。
「けどね、一つだけ覚えている未来があるの。泣きたくなるぐらい幸せで羨ましい未来ーー私は自分助からないと知っていた時に見た世界だったわ」
今でも心を締め付ける光景を思い出して俺はかすかに顔をしかめた。
白銀の世界。それに溶けていくような白い身体。桜色の双眸は光なく、ただ満月にも近い月を映し込んでいた。
『逝くなーー頼むよ。瑠璃』
俺がそう言うと瑠璃は少しだけ困った顔をして笑ったことを覚えている。もう、それはどうにも出来ない事実だときっと瑠璃は知っていたはずだから。
ーー死の間際までどれ程彼女を困らせたのたのだろう。
俺は我知らず目を足元に落としていた。
瑠璃はため息混じりに続ける。
「神様なんて嫌いだわーー。恨んでいても仕方ないじゃない? 消えていく私はもう何もできないんだから。一人残る芹には何もしてあげられないし。だからーー残った力。全身全霊を掛けても、あの時にあったかすかな命を使ってもこの未来に掛けたのよ」
まぁ、遠すぎて確定するとは限らない未来だったけどね。と彼女は付け加える。
「ーー瑠璃」
舞う雪が微かに光るーーそれはまるで儚い蛍火のようで、微かに辺りを照らしている。そんな気がした。
ゆっくりと淡い桜色の双眸が俺を捉える。昔と何一つ変わらない双眸で。
「愛していたわ、何もかもかけられる程にーーもう、貴方を愛していた私はどこにも居ないけど」
「……うん」
俺の顔を見てフワリと笑って俺の胸で眠っている万里に目を向けた。彼女は相変わらず身じろぎひとつしない。ただ規則的に胸が上下していた。
「ーーこれは私が望んだ未来私の願い。だから嬉しいのよ。本当に。ただーー凪ちゃんはそうではないみたいだけど」
思い出したように彼女は凪を見る。その少女は不服そうに俺を見ていた。
俺の半身ーーというべき存在の少女。俺が持つ命の破片で作った生命。元々はこの命が消え去る時の為『補強』とした器だった。少しだけ俺の命を長引かせる為の存在。ーー最もそれすら俺の望んだことではなく、封印前瑠璃にせがまれて創ったものだったけれど。
もはや妹のような存在だった。
彼女は呻くように紡ぐ。
「嫌いよーー瑠璃も。その女も、そうやって芹を縛る。ーー愛や恋とか、そんな物を口にして、その女とくっついて私が幸せを願うとでも? ーー結局芹は不幸になるわ」
「不幸にはならないよ。凪」
不幸にはならない。今度こそ。いや、自身が不幸だと思った事は彼女達に出会って一度もない。寧ろ、幸せだった。出会えて、幸せだ。
ぐっと千里の細い肩を握りしめ、凪に目を向ける。
「俺は幸せだ」
ピシャリと言う声に凪は口元を一文字に結んでみせた。目に浮かぶのは不安。一人残される不安だった。
彼女には俺しかいないのだから。
「凪も不幸にはならない」
俺は手を伸ばした。それを漆黒の双眸が見つめている。俺は彼女に笑い掛ける。
「不安なら俺の中で見ていれば良いーー思うように俺が『不幸』で有るなら何時でも出てくればいい。何時でも。何時でも凪が思うようにすればいい」
俺を殺すことも千里を殺すことも出来るだろう。けれど、そんな日なんてこない。
後悔なんてしないだろう。
全ては俺の夢見た未来。瑠璃の願いーーそして千里の想いなのだから。
俺は笑いかけると彼女は考えるようにして俺を見ている。少しだけ泣いているようにも見えた。
「ーー芹。行こうか?」
一拍。彼女は何も言うこもなく俺の手を取った。その後で真っ直ぐに俺を見る。
「分かった」
ポツリ溢れるように言うと彼女は少しだけ苦々しく笑う。刹那ーー柔らかく風が頬を撫でた。空気に溶けるように消えていく彼女の姿。同時俺の心の中に温かいものが落ちる気がした。
「随分素直ね。凪ちゃん」
言うのは瑠璃だ。彼女の姿もいつの間にか溶けるように消え始めていた。それを俺は静かに見つめる。また、逝ってしまうのだろう。それはとても悲しい事に思えたが引き留める事は出来ない。彼女は思念でしか無いのだから。
「元々は俺だから」
「だからよ」
クスクスと笑う。言いたいことは分かるがそれに突っ込むつもりは無かった。
「もう、お別れか?」
彼女は自身の腕を、身体をクルクルと回って見回した。その後で小さく肩を竦めた。仕方ないよね。そう言うように。
「そのようね」
一拍。重苦しい沈黙が落ちる。だた、それを払うように俺は彼女に笑いかけた。
「ありがとう。ーー瑠璃。君がいてくれて俺はとても幸せだった」
この生の全ては瑠璃によって救われた。彼女が居なければ俺の世界は何も成り立たない。確かに誰よりも何よりも大切で愛しい人だった。だけどーーもう彼女を選ぶことは出来ない。死んだからというわけでもなく居ても選ぶことは出来ないだろう。あんなに大切な人であったのに。
そう思うと俺はとても情けない屑のようだ。それを知ってか知らずか、彼女の双眸が俺をのぞき込んだ。
滑らかな手が俺の頬に触れる。
「何も恥じることはないわよ。何もかも殆ど私が仕向けたようなものだから」
「瑠璃」
「でも、ここからは貴方次第。もうこれ以上の未来は私は見てない、これから何を掴むのか、芹次第よ」
ーー愛してるわ。これからも
そう囁くように言い残して彼女はゆっくりと確実に消えていった。唇に、その頬に温もりだけ遺して。
雪が何事も無かったようにゆっくりと空から舞っている。俺は滲む双眸でボンヤリとそれを眺めていた。
いつか、過去編書ければと思います。
……悲劇だからなぁ。瑠璃と芹はそれなりに(´・ω・`)
まぁ、いつかね。なんとなく妄想だけでR指定になりそうな感じがします。




