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【資本主義無双】異世界が太平洋に出現したが、狂った転生商社マンとマッハ1のウサギ村長が地球の超大国を丸ごと買い叩く  作者: 月神世一


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EP 25

絶対防衛線(国家買収)

ピーーーーーーーーーッ!!!

四分割されたホログラムモニターの向こう側は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

『大将! ニューヨーク証券取引所のシステムが物理的にダウン! 復旧の見込みが立ちません!』

『張大使、人民元の為替レートが1秒ごとに暴落しています! このままでは国家予算の3割が数分で吹き飛びます!』

怒号、悲鳴、走り回る側近たち。

アメリカ、中国、ロシア、日本。世界を動かす四つの巨大な中枢が、たった一つの『ポポロ村の執務室』から放たれたウイルスの前に、完全に機能不全に陥っていた。

「き、貴様ぁっ! 自分が何をしているか分かっているのか!」

アメリカのフォークナーが、画面越しに拳を振り上げた。

「世界経済を止めれば、どれだけの人間が路頭に迷うと――」

「知るかよ。てめえらがこの村を孤立させて、子供たちを餓死させるって言ったんだろ?」

政宗は、赤マルの煙をふぅと吐き出し、氷のような視線で切り捨てた。

「お前らが『多数を生かすために一人の女を犠牲にしろ』って言うなら、俺は『一人の女を守るために、世界中の人間を巻き連れにする』。……俺の算盤は、そういうふうに弾き直したんだ」

「狂人め……ッ! 貴様、日本人じゃろうが! 祖国を裏切る気か!」

日本の若林幹事長が、額に脂汗を浮かべて叫んだ。

「祖国? 笑わせるな。俺は商社マン(あきんど)だ。俺の忠誠は、俺の『顧客クライアント』にのみ向けられる」

政宗は、背中で眠るキャルルを庇うように立ち塞がったまま、冷酷に宣言した。

「要求を伝える。今この瞬間から、ポポロ村は『絶対中立の独立経済特区』だ。ゴルド商会の名において、いかなる国家の軍事介入、および経済制裁も受け付けない」

「ふざけるな! そんな条件、どの国が呑むと――」

オルロフが吼えるが、政宗は机をガンッと蹴り飛ばしてその言葉を遮った。

「呑むんだよ! お前らには今、ノーと言う権利はねえ!」

政宗の眼光が、猛禽類のように鋭く光る。

「いいか、今のハッキングはただの『警告デモ』だ。あと1分。1分以内にお前ら全員が俺の条件に『イエス』と言わなければ、各国の軍事衛星の制御コードを書き換え、互いの首都に向けてミサイルの誤射プログラムを起動させる」

「……なっ!?」

「経済が崩壊した上に、互いに核を撃ち合って第三次世界大戦だ。お前らの大好きな『合理的な判断』で考えろよ。一人のウサギを諦めるか、自分の国ごと消滅するか。……さあ、選べ!!」

ハッタリか、真実か。

だが、現に今、彼らの国の金融システムは完全に政宗の手中に落ちている。

画面の向こう側の怪物たちは、自分たちがもはや『捕食者』ではなく、首根っこを掴まれた『獲物』であることを、屈辱と共に理解させられていた。

「……くそっ! アメリカ合衆国は、要求を……呑む」

最初に折れたのは、フォークナーだった。苦渋に満ちた顔で、葉巻をへし折る。

「……中国も、同意します」張大使が、血の滲むような声で続いた。

「……ロシアもだ」オルロフが忌々しそうに吐き捨てる。

最後に残った日本の若林は、ギリッと歯軋りをして政宗を睨みつけたが、やがて力なく首を垂れた。

「……日本政府も、ポポロ村の独立を承認する」

「……交渉成立ディール・ダンだ」

政宗は、魔導端末のエンターキーをもう一度だけ叩いた。

『世界経済ロック・プロトコル』が解除され、画面の向こう側から「システム復旧しました!」という安堵の声が漏れ聞こえてくる。

「ただし、忘れるなよ」

政宗は、最後にモニター越しの怪物たちに向けて、ドス黒い殺気を叩きつけた。

「この村の連中に、そしてこのアホウサギに指一本でも触れてみろ。次はない。俺が必ず、お前らの国を『買収』して、スクラップにして売り飛ばしてやる」

ブツンッ。

政宗が通信回線を強制切断した。

四つのホログラムモニターが消滅し、執務室に静寂が戻った。

「……終わった、か」

政宗は、張り詰めていた糸が切れたように、ドサッとソファに腰を下ろした。

指先が、まだ少しだけ震えている。

一歩間違えれば本当に世界大戦だった。人生最大の、そして最悪の大博打。

「お見事です、力武様。文字通り、世界を相手に『大立ち回り』を演じてのけましたね」

リバロンが、心からの敬意を込めて深く一礼した。

執務室の入り口では、様子を見に来ていた信長が、口をポカンと開けて立ち尽くしていた。

「おいおい……あんた。本当にたった一人で、世界を脅迫しきりやがったのか……? 大国のトップが、全員震え上がってたぞ……」

「ただの商談だよ。相手の急所を握って、高く売りつけただけだ」

政宗は、短くなった赤マルを灰皿に押し付けた。

ふと、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。

限界を超えて眠りに落ちたキャルルだ。彼女は政宗のジャケットに包まりながら、安心しきったように穏やかな寝顔を見せている。

その顔には、先ほどまでの悲壮感も、恐怖の影もなかった。

「……バカが。お前が笑うために、世界中が泣くハメになったんだぞ」

政宗は、悪態をつきながらも、彼女の額にかかった髪をそっと撫でた。

「ゆっくり寝とけ、北極星キャルル。お前の居場所は……俺が悪党になってでも、守り抜いてやるからよ」

こうして、地球の怪物たちによるポポロ村侵略作戦は、一人のウサギの規格外の暴力と、一人の商社マンの極悪非道な経済テロによって、完全に退けられた。

ポポロ村は、不可侵の『絶対防衛線』を手に入れたのである。

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