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僕が彼女を異世界に転移させたわけ  作者: 柚木 潤


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29話 魔人の核

 ペリドットは、物質的な肉体は消滅させられたが、魔人の核までは破壊されず、長い時間をかける事での復活は許されたのだ。

 核さえ破壊されなければ、数百年の年月はかかるが、再度元の魔人に復活する事が可能であった。

 本来、核だけの存在では、魔人の国から外に出る事など出来なかった。

 だが、ある条件が揃った事で、それを可能にしたのだ。

 

 ペリドットが核のみの存在になって数十年が経った頃、まだ息のある人間が城に運ばれて来たのだ。 

 城のとある場所にいた核のみのペリドットは、早く復活を遂げたいという、強い思いを抱いていた。

 もちろん、核のみとなった存在であれば、誰もがそう思う事だろう。

 だが、ペリドットは少し違ったのだ。

 運ばれて来た人間を見ているうちに、自身が魔人でなく人間としての復活でも構わないと願ったのだ。

 どんな姿でも、研究さえ出来れば満足だったのだ。


 核のみの存在であるペリドットは、運ばれた人間を見ていると自分がその身体に吸い込まれる様な感覚があったのだ。

 魔人の国での記憶を操作された人間は、とても意思が弱く、その魂と言うべきものを身体の奥底に押しやると、入り込んだ核だけのペリドットが、その身体を支配する事が可能となったのだ。

 ペリドットの核が入り込んだ人間は、そのまま人間の領地に戻された事で、ペリドットは魔人の国を出る事が出来たのだ。

 つまりは、人間の身体を乗っ取ったわけなのだ。


 だが、人間の寿命は魔人と比べとても短く、本当の復活を遂げるまでには、身体をいくつも変える事が必要だったのだ。

 ペリドットは自身の復活のために人間の身体を幾度となく乗り換え、人間の世界に入り込んでいったのだ。

 その不自由な状況は、ペリドットの憎しみを助長したのだ。

 それに、かつて研究していた魔獣を、この人間の国では全く見る事ができなかったのだ。

 ペリドットは、人間にも魔獣研究に携わる者がいた事を知っていたので、魔獣の存在が少しは確認できると思っていたのだ。

 だが、今の人間の国では、全く存在を確認する事が出来なかったのが、大きな誤算だったのだ。

 かつて、魔人の国から出る事を禁じられた民にとって、人間の国の情報は、殆ど耳にする事は無かったのだ。

 人間の姿になってまでも研究をしたいと思っていたペリドットにとって、全く研究対象が存在しないと言う事は絶望そのものだった。

 そして、今は岩山の警備が強化されており、何の力もないただの人間のペリドットは、岩山に近づくことすら出来ず、魔人の国に戻る事も叶わなかったのだ。

 ペリドットは絶望の中、自身をこんな状況に追いやった魔人の国に対して、徐々に憎しみが募っていったのだ。


 そんな中、人間の国と魔人の国との国交が始まったのだ。

 かつて国交の無かった時代だからこそ、自身があの様な粛清を受けたと思っているペリドットにとっては、今の状況がとても許せなかったのだ。

 だが、未だ魔人としての完全なる復活が出来ないペリドットにとっては、人間を上手く操作する事ぐらいの能力しか無かったのだ。

 言葉に力を乗せる事で、意志の弱い人間なら、少しだけ思考操作が可能だったのだ。

 そして、ペリドットはロゴスを作ったのだった。


 ペリドットは長い時間をかけて人間至上主義の集団をつくり上げ、いつの日か魔人の国への報復を考えていたのだ。

 身体を変える事になっても、すぐに集団のトップに位置し、人間の国と魔人の国の良好な関係を破壊するべく、静かにその時を待っていたのだ。

 そして魔人としての力も徐々に取り戻しつつある今、実行に移す時が来たのだった。

 

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