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僕が彼女を異世界に転移させたわけ  作者: 柚木 潤


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28話 魔人ペリドットの不遇

 ペリドットは、かつて魔人の国の住人であった。


 ペリドットは人間の国で言うと学者の様な存在で、魔人の国にある岩山の近くに住んでいる魔獣について研究していたのだ。

 魔獣の生態や能力など、未だ解明されていない部分も多く、ペリドットの興味は尽きなかった。

 ある日、いつもの様に岩山に向かうと、数匹の魔獣が何かを囲んでおり、今にもその獲物に襲い掛かろうとしていたのだ。

 よく見るとそれは二人の人間で、岩山を越えて魔人の国に入り込み、魔獣に遭遇したらしい。

 ペリドットは何やらつぶやくと左手を口に当て、すぐにその手を魔獣達に向けると、魔獣の動きが急に止まったのだ。

 実はペリドットの魔人としての力は、自分の唱えた言葉を力に変え、行使するものであった。

 と言っても、その能力は中の下といったくらいで、格上の者にも発揮できる力では無かった。

 だが、魔獣に対しては十分効果があったので、ペリドットにとってこの場所は観測、研究する場所としては、全く問題なかったのだ。

 ペリドットは魔獣に向けて、身体をその場に拘束する言葉を唱えたのだ。

 魔獣達が動く事が出来ない間に、急いで二人の人間を安全な場所に呼び寄せたのだ。


「なぜ、こんな危ない場所に。

 ここは多くの魔獣の巣が点在する場所です。

 人間が無傷でいられる場所では無いのですよ。」


 ペリドットは二人にそう言って、早く人間の国に帰るように促したのだ。

 すると、二人の人間は自分と同じ様に、魔獣を研究する者だと話したのだ。

 魔獣は、魔人の国には多く生息するのだが、人間の国で見る事は稀であった。

 その為、詳しく知るためには魔人の国に入り込むしか無かったのだ。

 それは、人間にとっては命懸けのことであり、そうまでしても研究したいと言う気持ちを、ペリドットは素晴らしいと思ったのだ。


 実は、まれに人間の国から恐れ知らずの冒険者が、高い岩山を超えて魔人の国に入って来る事があったのだ。

 王の指示で、そのような人間を見つけた時はすぐに城に知らせるようにと御触れが出ていたのだ。

 多くは力尽きて、冷たくなった状態で発見されるのだが、意識のある者に関しては城に連れて行き、この国の記憶を消して人間の領地に戻していたのだ。

 この国の幹部には、その様な不思議な力を持つ魔人が存在したのだ。 


「助けていただき、ありがとうございます。

 私達は魔獣についてどうしても調べたい事があり、この岩山を越えて参りました。

 もう少し、もう少しだけここにいさせてください。

 お願いいたします。」


 彼らの熱意やその研究欲を聞かされると、その気持ちのわかるペリドットは、彼らを城に連れて行く事を不憫と思ったのだ。

 魔獣を遠くから観察したら帰ると懇願されたので、ペリドットは悩んだ結果、彼らを見逃す事にしたのだ。


 しかし、ペリドットが助けた二人の人間は、約束したにも関わらず見るだけでは我慢が出来無かったのだ。

 ペリドットと別れた後に、子供の魔獣に遭遇すると、彼等はそれを捕らえようと画策したのだ。

 だが彼等の思う様にはいかず、すぐにその仲間の魔獣達に襲われ、麓にある魔人の村に逃げ込んだのだ。

 それも運が悪い事に、彼等は炎を撒き散らす魔獣達を引き寄せた事で、村に大きな被害を与えたのだった。

 彼等は魔人の国の決まりによりすぐに拘束され、城に連れていかれたのだ。

 王の指示で、幹部により記憶が操作され、彼等を人間の国に戻す事になったのだが、その際記憶の中からペリドットとのやり取りを知る事になったのだ。

 そして、ペリドットが彼等をすぐに城に連れて来てさえいれば、村への被害は無かったと判断され、ペリドットは幹部達に拘束されたのだ。

 王に背いたペリドットは、この国の決まりにより極刑を下されたのだ。

 魔人の国は王が絶対的な存在で、それに刃向かう事など許されなかったのだ。

 そして、ペリドットは他の国民に被害を与えた犯罪者として、王に仕える幹部達により粛清されたのだった。


 ペリドットは身体の崩壊が終わる最後まで、極刑を下したこの国を呪ったのだ。

 ペリドットは研究者でありながらも、ずっと不遇な扱いを受けていたのだ。

 他の研究であれば、国からの補助金や国の支援もあったのだが、魔獣に関しては支援すべき事案とはされず、ペリドットは苦しい生活を強いられていたのだ。

 それでも、魔獣の研究が出来るのであれば、ペリドットは幸せだったのだ。

 だから、人間であろうと研究する芽を摘むことが出来なかったのだ。

 そして今、研究する事すら取り上げられたペリドットは、国そのものに強い憎しみを抱いたのだった。


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