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僕が彼女を異世界に転移させたわけ  作者: 柚木 潤


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24話 王室の事情

 王は一気にこれまでの魔人の国との関係と、ロゴスについて話すと、大きなため息をついたのだ。


「ところがだ・・・」


 王が一息つくのを待っていたように、王妃が口を開いたのだ。


「ロゴスは存在する。

 そして、着実に昔のような力を付けて、我らの近くに忍び寄っているのだ。

 王家転覆を狙っているのだよ。

 これまでも、王室は色々な結社や集団からの脅威には晒されてはいたものだよ。

 まあ、この国の軍には勝る事は無かったので、心配には及ばなかったのだがな。

 しかし、今回はその毒が城の内部に及んだ事が大きな問題なのだ。」

 

 王妃がそう言い終わると、誰もが口を閉ざしたのだ。

 タルフはそんな王妃の話を聞いても、正直あまり興味がわかなかったのだ。



 城に侵入している者をあぶり出せば良いだけだろう?

 脅迫状から指紋採取し、城に出入りしている者と照合すれば良いわけじゃん。

 後は監視カメラを各所につけて監視すれば、問題無いじゃないか?

 僕がそれを作り出し、操作してやれば終わる話だな。

 だが・・・ハナ以外の多くの者に僕の力を見せる事は許されない。

 ポラリス様の教えには逆らう事は出来ないのだ。

 ああ、はがゆいな・・・

 この世界の傍観者でいつづける事は大変なことかも知れないな。

 ・・・しょうがない、僕はハナを元の世界に戻すことだけを考えるとしよう。


 タルフは一人そう思い、早く話が終わらないかと大きなあくびをしたのだ。

 その時、意外な言葉がタルフの耳に入ったのだ。


「・・・もしかすると、城に侵入した者は人間ではないかも知れない。

 そうで無いと説明できないのだよ。

 例えば、自由に場所を移動出来たり、姿を消す能力があるとかね。

 そんな事が出来る者が絡んでいるとなると、難解なわけだよ。」


 王妃の言葉でタルフの耳がピーン立ったのだ。

 

 なるほど、僕のような力を持つ者なのか?

 この世界で言う隣国の魔人のような存在か?

 だが、それでは理屈に合わない。

 魔人を排除する事を掲げている人間至上主義の集団に、魔人のような者が手を貸していると言うことなのか?

 

 タルフは前足で髭を撫でながら考えていると、ハナが王や王妃の前に立ち叫んだのだ。


「大丈夫です。

 ソウ様はとても優秀です。

 きっと、王室の力になる事ができますよ。」


 ハナはそう言うと、ソウを見た後にタルフを見て微笑んだのだ。

 ソウもタルフも引き攣った顔をしていたが、ハナには二人の気持ちは通じていなかったようだ。

 


 その後、王妃のたっての希望で、ハナは一時的に城内で生活することになったのだ。

 今回、ソウの付き添いで来た訳であり、正直ハナはケイシ家にある蔵で、いつも通り色々な薬の調合を試したかったのだ。

 ソウの手伝いをする事はあっても、王妃から直々に話があるとは思ってもいなかったのだ。

 この話を辞退しようかとも思ったのだが、城のシークレットな部分に関わる事が、正直とても魅力的に感じたのだった。

 それに、城の中でも薬の調合をする事の許可が出た為、ハナとしては断る理由も無かったのだ。

 ハナはソウと相談しこの申し出を受けると、王妃付きの侍女と言う事で、普段から王妃のすぐ近くに控える事になったのだ。

 もちろん、ハナを心配なタルフは一緒について行くのは言うまでも無いのだ。


 そしてソウは薬師として、特別に王妃を診る為に毎日城に通う事が許されたのだ。

 実際は、王妃の食事や生活の中で健康が損なわれる物が無いかなど、逐一チェックをする役目であった。

 それは、城内の側近以外の者は、誰も信用できないと言うのが王妃の考えであったからだ。

 王室としては、今後も病に冒された王妃を演じる事とし、水面下ではロゴスについての情報をどうにか掴み、王妃に危害を加えようとする者たちを探し出したかったのだ。

 

 王室の側近としては、殆どが二人の幼い時からよく知っている者だけで集められていた。

 中でも、侍女頭のハンナは王妃の従姉妹であり、幼馴染であったが、女性ながら王妃と同じように剣の腕前も素晴らしく、王妃を近くで守る上でも適切な人材と言えたのだ。

 軍の最高指揮官であるダイケン大将も、王や王妃の幼少期からの剣の指導者であり、信頼のおける者であった。

 その為、有事にはすぐに全軍を動かす事が出来る立場であり、王や王妃にとってとても心強い者であったのだ。

 それ以外の者も、王と王妃が昔から信頼おける者のみで構成されていたのた。


 ソウは、そんな中に自分が関わる事がとても恐れ多いと思っており、了承したはいいが出来る事があるのだろうかと不安でならなかった。

 ハナはと言えば、そんな不安は一切なく、これからの城での生活が楽しみとなっていたのだ。

 

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