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僕が彼女を異世界に転移させたわけ  作者: 柚木 潤


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21話 王の依頼

 ソウは震えた声で頭を下げたまま伝えたのだ。

 その言葉に、一瞬室内が静まり返ったのだが、王妃はニヤリとしながら高笑いをしたのだ。


「ハハハハ、なるほどね。

 それが其方の診断・・・

 ・・・今回は、私がしくじったようだ。

 その助手の娘や、このような可愛らしい存在を見てしまったら、つい芝居が出来なかったぞ。」


 王妃様はそう言うと、子猫のタルフを触りながら、ハナとソウを見たのだ。

 正直、さっきまでと全く違う王妃の言動や様子にハナもソウも驚きを隠しきれなかった。


「すまぬ、すまぬ。

 実は、私が病にかかっていないと正直に言ってくれたのは其方だけなのだ。

 王室の薬師達も、先ほど集められた街の薬師達も、色々な病の可能性を出してきた。

 沢山の薬を使うように話してきた者もいたな。

 優秀な薬師であれば、私が仮病であった事をわかっていた者もいたかもしれないが、王妃という立場が邪魔してか、ハッキリと伝えてくれる者はいなかったのだ。

 だから、ちゃんと進言できる者を探していたのだよ。」


「しかし、なぜこのような事を考えたのかが、分からないのですが・・・」


 ソウは冷汗をかきながら伝えた時である。

 この部屋の奥にある扉が静かに開き、ある人物がニコニコしながら入ってきたのだ。


「やはり、君に芝居は無理だったようだね。

 今までよく頑張った方かな?

 ただ、その話し方は少し王妃らしくないのでは?

 二人が驚いているよ。」


 急に現れたこの人物は、サイレイ国の王であった。

 部屋にいる王妃のお付きの者達がひざまずき頭を下げるのを見て、ソウはやっと理解したのだ。

 実はソウも今までこんなに近くで王を見る事がなく、すぐには分からなかったのだ。

 王は細身でとても物腰が柔らかく、落ち着いた声の人物であった。


「仕方ないだろう。

 昔からこんな感じなのは知っているだろう。

 そんな簡単には変えられないのだ。

 それで良いと言っていたから王妃になったのだそ。

 それを忘れたのか?」


 王妃はそう言いながらも、足を組んで気まずそうに横を向いたのだ。


「はは。

 そうでしたね。

 では、私から詳しい話をいたします。

 まあ、そう緊張しないで楽にしてください。」


 サイレイ国の王は、優しくソウやハナに笑いかけたのだ。

 王の話によると、王妃は王の幼馴染で貴族の娘であった。

 しかし、小さな頃から剣の鍛錬や狩などを好み、兄達と同じ様に育てられていたらしい。

 子供の頃から美しい見た目でありながら、とても勇ましく、王にも勝る腕前だったようだ。

 そして、王からの求婚に対しても、ありのままで良いとの条件で受け入れたらしいのだ。

 もちろん、国民の前では良き王妃を演じているのだが、城の中での王と王妃の関係は昔と同じと言うわけなのだ。

 王妃はとても気が強かったが、弱い者には優しく、聡明で責任感も強く、王にとっては盟友の様な頼りになる人物らしい。


「さて、本題に入りましょう。

 実は・・・私宛にある手紙が来たのです。

 もうすぐ私の即位十年の式典があるのですが、その時に王妃の命が尽きるであろうと、予言めいた事が書かれていたのです。

 しかもそれは、私の執務室の前に置かれていたのです。

 その場所はこの城に熟知した者でなければわからないのですよ。

 ここに来るまでも、時間がかかったでしょう?」


 ソウとハナは顔を見合わせて頷いたのだ。

 この城の重要な場所は、外から簡単には辿り着く事が出来ないようになっているのだ。

 そして、王の執務室も定期的に場所を変えている為、場所を知っているのは、一部の者に限られたのだ。

 

「・・・それで、私は恐ろしくなって、真っ先に王妃に相談したのですよ。

 すると、当事者である彼女は、あたふたする私に喝を入れるように話してくれました。

 この城に普段から出入りしている者が関わっているのは明らかだろうと。

 まずは、王妃がいなくなる事で誰に得があるのかを考えるべきだとね。

 それで、まず私達は王妃が原因不明の病にかかった事にしたのです。

 手紙を置いた張本人は、手紙のせいで王妃は具合を悪くしたと考えるかもしれないとね。

 王妃が病に倒れたと聞き、普段と違う行動や言動をする者がいれば、かなり怪しいと言えるし。

 そしてもう一つ、この王室と全く関わりのない者で、私達に協力して頂ける者を探していたのです。

 今までこの国に尽くしてきてくれた者達を疑いたくはないのですがね・・・

 しかし今回、是非あなたに協力をお願いしたいのです。」


「わ、私はただの下町の薬師です。

 私が役に立つとは思えないのですが・・・」


 ソウはチラッと王を見ると、すぐに顔を下に向けたのだ。


「実は、あなたの今までの仕事ぶりや人となりについては、前もって調べさせてもらいました。

 その上で、是非協力していただきたいのですよ。」


 王はそう言って、ソウを見て微笑んだのだ。

 王からそんな話を聞いたソウは、驚きで何も言えず、青ざめた表情で口をパクパクさせていたのだった。


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