19話 違和感
集められた薬師達は、順番に王妃様にお会いする事が許されたのだ。
ただ、王妃様の体調を考え、持ち時間は5分と制限され、お顔を見て少しの質問のみが許されるだけであった。
それ以外は、前もって王室付きの薬師からここ二週間程度の体調に関する情報を書面と口頭により得ていたので、それで判断して欲しいとのことだった。
「これだけの情報で王妃様を診察するのは、難しそうだね。」
ソウはハナに小声で話しかけると、ハナからは前向きな言葉が出て来たのだ。
「ソウ様。
お妃様のお顔を見れるんですよね?
それだけでも、体調の目安になるじゃ無いですか?
それに、私達にわからなくても、他の方々で原因が突き止められればいいわけですから。
まずはお会いしてからですよ。
最善を尽くしましょう。」
ハナのカバンの中からそんなやり取りを聞いていたタルフは、色々考えていたのだ。
正直、僕の世界の高度な科学力があっても、実際にデータを取り込まなければ、診断できないのだ。
つまりは王妃様の一部を取り込まなければならない。
そうなると、やはりあの姿が一番だな・・・
僕は姿を変える状況を伺う事にしたのだ。
そして、ソウとハナの順番になった。
広間から王妃様のいる部屋まで案内されたのだが、お城の中をぐるぐると巡るようなルートを歩いた後に、やっと部屋の前に着いたのだ。
だから、全くこの場所がさっきの広間から近いのか遠いのかさえわからなかったのだ。
もっとも、僕が意識だけの存在になれば何処にでもすぐに行けるわけで、わからないとしても大きな問題では無いのだが。
案内してくれた兵士が重たそうな扉をノックすると、中から王妃の御付きの方が出てきて、二人は部屋の中に入る事が出来たのだ。
そこは王妃様の寝室というわけでは無く、来客用に使用する部屋のようだった。
部屋の装飾などは素晴らしいのだが、とても殺風景な場所であったのだ。
そして部屋の奥には王妃様が横になっており、ソウ達は近くまで行く事を許されたのだ。
明らかに緊張して青い顔をしているソウと、黒い瞳を輝かせているハナは、僕から見ると対照的で、不謹慎ながら見てるだけで面白かったのだ。
ソウは薬師としては優秀で、患者からはとても信頼を得ているとハナから聞いてはいた。
しかし、今回の様子を見ていると、何だかとても頼りなく感じたのだ。
それに引きかえ、ハナは全く緊張もなく王妃様の前でも堂々としたものなのだ。
まるで、ハナはこの場を楽しんでいるようにも見えたのだ。
ソウはすぐにひざまづくと、震えた声で王妃様に声を掛けたのだ。
「では、いくつかの質問をお願いしたいのですが、お顔を拝見してもよろしいですか?」
王妃様は侍女の手を借りて起き上がると、ゆっくりとソウとハナの方を見たのだ。
ソウは、普段遠目でしか拝見できないお方を、こんな近くで見る事を、とても恐れおおい事だと思っていたのだ。
ハナは城に来る前に、蔵にあった書物を引っ張り出して、今回役に立てる事は無いかと読みあさっていたのだった。
そして、ハナは病について書かれた書物を見つけたようで、患者である王妃様の体調を知る手がかりをさがしていたのだ。
ハナはソウの後ろから、王妃様の顔をじっくりと見て、何か気になる特徴が無いか探っていたのだった。
王妃様は目鼻立ちがはっきりした美しい方であったが、今は具合が悪そうに虚な表情をしていたのだ。
しかし、そんな王妃を見た時、僕は王室の薬師の話に違和感を感じたのだ。
ここ二週間の資料によると、王妃様は殆ど食事を摂らず横になっていると書かれていたのだ。
そうであるなら、頬がこけたり、血行不良を伴い肌ツヤも悪いはずなのだ。
何より、寝床から起き上がる時に、侍女の手を借りたとは言え、ずっと寝たきりであれば、あんな軽やかに起き上がれるはずはないのだ。
・・・表情に反してその身体の動きが、わざと病気だと偽っているとしか思えなかったのだ。
まあ、僕が王妃様のサンプルを取り、栄養状態など解析してみればすぐわかるのだが。
そろそろソウやハナも、ある程度わかってきたのではないだろうか?
どういう理由かは不明だが、これが茶番だって事が。




