14話 魔法陣
僕達は、その魔法陣から現れた者をそっとシェルターの中から見ていたのだ。
その者は怪訝そうな顔で、辺りをキョロキョロしていたのだ。
それはまるで、僕達の存在を感知して現れたかのようだった。
しかし、見つける事が出来なかった為か、または別の理由なのかわからないが、魔法陣が明るく光り動き出すと、その者は光と共に消えていったのだ。
僕はその者の気配が消えると、すぐにシェルターを消失させたのだ。
本来この世界に存在してはいけない物は、なるべく早く消失させたかったのだ。
自分の行動で、この世界の歴史に大きく影響を及ぼす事があってはならないのだ。
それがポラリス様からの教え。
アクセスを遮断された今でも、ポラリス様は僕の崇拝する人物である事は変わらないのだ。
それにしても、あの魔法陣・・・いい物を見せてもらった。
あれをもとにすれば、この世界につながる他の小さな世界にも行く事が出来そうだ。
データは僕の頭の中に入れたから、そこから解析すればいいわけだ。
魔法陣は移動する為の座標のようなものなのだ。
それを動かす力があれば移動は可能と言うわけだ。
しかし、ハナの元いた世界への移動となると、時空の亀裂からでないと無理なのだ。
その亀裂が時の流れと共に、移動するから厄介なのだ。
近くに行かなければ、僕の力では感知できない。
持っている時計で魔法陣を出現させる事が出来ても、亀裂の場所でないと、鍵は回せないのだ。
それにしても、あの者は僕の気配に気づいていた。
だから、この場所に現れたんだ。
この世界に住んでいる者の中には、不思議な力を持っている者がいるとハナから聞いていたが・・・
僕と違って、実体があるハナの事を思うと、気は抜けないのだ。
「ハナ、とにかくここから離れよう。」
僕はそう言うと、また巨大な怪鳥に姿を変えて、ハナに背中に乗るように促したのだ。
ハナは言われた通り、すぐに背中に乗りしっかりと羽を掴んだのだ。
「タルフ・・・さっきの人は何をしに現れたのかしら?
何だか、恐ろしかったです。」
「・・・わからないけど、ハナの事は僕が必ず守るから大丈夫だよ。
とにかく帰って、鉱石の成分を詳しく調べてみるよ。
それに、さっき見た魔法陣を解析すれば、別の場所に行けるかもしれない。」
「え?
それって、元の世界に戻れるって事かしら?」
ハナは目を輝かせて質問してきたのだ。
「いや・・・まだだよ。
元の世界に移動するには、別の複雑な魔法陣が必要なんだよ。
それはわかってはいるのだけど、時空の亀裂を見つけないとダメなんだ・・・」
「そうでしたね。
そんな簡単な事じゃないですよね。
ごめんなさい、タルフ。
私、焦ってもしょうがないのに。」
そう話すハナの気持ちを考えると、僕の心も痛かったのだ。
しかし、僕の意識はあとどれくらい自由でいられるのだろう・・・
その間に、ハナを戻す事が出来るだろうか?
タイムリミットがある事はよくわかっているのだ。
ポラリス様のアクセスを遮断された者の末路はわかっている。
訓練により強化された身体と言えども、向こうの時間では十日程度が限度だろう。
アクセスを遮断された者は、隔離室に移動させられるのだ。
そこで生命維持装置とも言える透明なケースに入れられるのだが、精神と肉体が離れた場所にあると、肉体の劣化が徐々に起こりはじめ、いずれ心臓がとまってしまうのだ。
空っぽの器だけでは、生きる事を許されないのだ。
こっちの世界では、数年という時間はあるだろう。
ただ、エルナト主任が言っていた事が気になるのだ。
時間の流れは一定ではないと・・・
だからこそ、のんびりはしていられないのだ。




