12話 岩山の秘密
目の前の怪鳥を見て、ハナは目を丸くしたのだ。
「この世界を見回っていた時、こんな姿の生き物を目撃したんだよ。
さあ、背中に乗って、ハナ。」
怪鳥となったタルフは羽をバタつかせて広げると、ハナに登るように促したのだ。
ハナは恐る恐る翼の上を歩きタルフの背中に座ると、しっかりと羽を掴んだのだ。
「さあ、しっかりと掴まって!」
タルフはそう言うと、翼を大きく動かしあっという間に舞い上がったのだ。
「ハナ、見えるかい?
この世界の自然は素晴らしいね。
僕の世界では人工的に作られた緑しか存在しなかったから、ここに初めて来た時本当に感動したんだよ。」
ハナは怖くてずっと目をつぶって、タルフにしがみついていたのだ。
しかし、そんなタルフの話を聞いて、思い切って少しだけ目を開けてみたのだ。
すると、新緑に染まった山々やキラキラと水面が光る湖が目の前に広がっていたのだ。
ハナの世界にも緑豊かな場所はあったが、こんな高い場所から見る事なんてもちろん無かったのだ。
「きれい・・・」
ハナは目の前の素晴らしい景色に心を奪われていたので、さっきまでの恐怖心はいつの間にか消え去っていたのだった。
タルフは目の前に広がる岩山の麓にゆっくりと降りると、ハナに降りるように促したのだ。
ハナがタルフの背から降りるのを確認すると、あっという間に小さな子猫に戻ったのだった。
そしてハナの前を注意深く歩き始めたのだ。
その岩山は他の山とは違い、すでに一部が切り出されているようで、トンネルが作られハシゴがかかっている部分もあった。
しかし、タルフ達が着いた時間には作業をしている人達はいないようで、簡単にトンネルの中に入る事が出来たのだ。
タルフは少し進むと、トンネルの中に落ちている石ころをいくつかペロペロと舐めていたのだ。
「お腹が空いているわけでは無いからね。
この辺の成分分析をするためだよ。
・・・うん・・・やっぱり何かしらの力が備わった岩みたいだね。」
タルフは少し恥ずかしそうにそう言ってハナを見たのだ。
ハナはそんなタルフを優しく見ながら後をついて行くと、急にタルフの足が止まったのだ。
「ハナ、動かないで!
何かいる!」
タルフは小さな声でそう言うと、長い尻尾をピンと立ててハナの足元に留まったのだ。
「タルフ、何も見えないですよ。
本当に?」
ハナも小声でタルフに応えると、タルフは真っ直ぐにトンネルの奥の方に視線を向けていたのだ。
「ああ、目に見えないかもしれないけど、この辺りの石の持つ力とは違う、大きな存在を感じるよ。
・・・戻ろう。」
タルフと同じく、実体を持たないような何かである事はわかった。
すぐに二人は引き返したのだが、タルフは少しだけ不安を感じたのだ。
ここはハナの生まれた世界とはだいぶ違う・・・
僕が彼女を守らなくては・・・
タルフは心の中で強く誓ったのだ。
タルフはトンネルの入り口に戻ると、先ほど舐めた石の分析結果をハナに伝えたのだ。
「ハナ、ここの鉱石の成分は特に珍しい物って訳では無いみたいだよ。
でも、ここにある鉱石全てが何かの法則のもとに存在している感じだよ。
つまり、誰かが作り出したみたいにね。
自然のものって感じではないな。
まあ、ちょっと持って帰って、詳しく調べてみようと思う・・・」
タルフはそう言い終わると、急に鋭い表情に変わったのだ。
それと同時に、タルフは急いである物を作り出したのだ。
この世界において、タルフの知識にあるものは、自由に創造する事が出来るのだ。
タルフの青い瞳が光ると、二人の目の前にすごい速さで何かが作りあげられていったのだ。
タルフは自分の知識の中にある設計図を元に、部品を実体化させ、十数秒である物を作り出したのだった。
それはまるで、建物などの建築現場を早回しに見ているかの様であった。
そして最後に今いる岩肌と同じような壁が作られると、ハナにその中へ隠れるように促したのだ。
「ハナ、シェルターを作ったよ。
まあ、とにかく今から僕の言うとおりにして。」
ハナは目の前で起きた事に驚くばかりだった。
タルフの言った言葉もよく分からなかったが、緊迫した状況は伝わってきたので、すぐに頷くとタルフの指示にしたがったのだ。
その場所は外側からは中が見えないが、中から外を見る事が出来たのだ。
外側からはその場に空間が作られているとは、全くわからないものであった。
そして、タルフはある一点をじっと見ていたのだ。
ハナはタルフの言う通り、黙ってその場に座り込んだのだった。
「来る!」
タルフがそう叫ぶと、目の前に大きな魔法陣が現れたのだ。
そして、それが輝きながら動き出すと、白い服を纏った者が現れたのだった。
その者はタルフやハナと同じような人の姿をしていたのだが、タルフはすぐに危険な存在であると感じたのだ。
現れたその者はため息が出るほど、とても美しい存在だった。
周りを見回し不思議そうな顔をして歩き出したが、その魔法陣から遠くに行く事はなかった。
タルフによって作られたこの部屋は、物理的に隔離されただけで無く、意識の領域においても同じで、何者にも気付かれる事は無かったのだ。
タルフの生まれた世界の科学の発展は、それほどめざましかったのだ。
だが、それによる多くの弊害が起きたことも事実であったのだ。




