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笑ってはいけない悪役令嬢  作者: 三川コタ
わくわくwack×2フラーグ学院 箱庭 編
69/155

相13

 

 都心近郊で行われる『箱庭発表会』で観察結果を発表する為、私は今、高速鉄道の電車に乗っている。

 スライドする資料はもう変えられないので、口頭説明文を何度も読み返し書き直す私を、夫が隣で心配そうに見ていた。

「そんなに不安なら、私が発表しようか?それか、説明は見鷹君にしてもらうとか・・。」

「秀島相一って世間を騒がせる有名人だし・・『わくフラ』の発売は10年以上前の復刻版が最後にもかかわらず、とても知名度が高い乙女ゲームなの。・・ロボット工学研究とは無関係の私が発表しないとっ。」

「別に大丈夫だと思うけど・・。」


 流行の話題に疎い夫はピンときてなかったが、少し離れて座っていた見鷹君は自分の名前を出され、そわそわしていた。

 遠距離恋愛している彼女と久しぶりに会える見鷹君は、いつもはよれたTシャツだが、今日はサマージャケットを着て、おしゃれ伊達眼鏡をかけていた。



***


 私が『箱庭』に取り入れた乙女ゲーム『わくわくフラーグ学院』の制作者である『秀島相一』氏は、小さなアプリゲーム会社の社長だったのだが・・・大手ゲーム機企業との交渉の一部をSNSで拡散し、ゲーム機ユーザーの不満と同調させて交渉に優位な立場を獲得した、超やり手だった。

 SNSアカウントを大量に買った自作自演がばれた事もあったが、『わくフラ』の二次創作を全面的に認めたことで、プレイヤーやゲームファンの圧倒的支持は衰えなかった。

 こうして中東の大富豪をスポンサーに得たのだが・・・それだけにはとどまらず、遂にはその大富豪の親族と結婚するまでに至っていた。そして、近頃始めた画像投稿SNSに、贅を尽くした派手な生活を発信しているので、ゲームに興味が無い多くの日本人にもその名は知られている。


()()()()()()()ねえ、造らせた『箱庭』で。」


 私は、時代の寵児と言って過言でもない秀島氏のこの言葉が、ずっと引っかかっていた。

 秀島氏は、『箱庭』を作らせ審査する円城寺博士のことを、指して言っているとは思えなかった。それならば「()()()()()()」だ。

 この言葉をの真意を私は理解できなかったのだが、私の作った『箱庭』で()()()()()()人がいた。

 私の姉、『裁刃ゆきひ』だ。

 

 姉は病に倒れてから、学校へ通えなかった。愉快でおかしいフラーグ学院の学生生活を楽しく遊んでもらいたいと思った私は、『姉の分身』を箱庭に作ることにした。

 『悪役令嬢のイコリス・プラントリー』の生年月日を、『裁刃ゆきひ』の生年月日にするのだ。 


 姉も私も、悪役令嬢の『イコリス』には親しみを持っていた。

 『イコリス』と遭遇すると、魅了で攻略対象キャラの好感度をガンガン下げてくれる。

 その後好感度を上げ直すと、攻略キャラのおもしろモーションスチルがまた見られるのだ。再度見たモーションスチルは、毎回、間違い探しのように微妙に変更点が有った。

 私達は、わざと悪役令嬢と遭遇しては好感度を上げ直し、おもしろモーションスチルを繰り返し見て笑っていた。



 『イコリス』が姉の分身と決まれば、私は攻略対象キャラ達の設定に尽力するほかなかった。

 攻略キャラの生年月日を秀島氏の生まれ年にして決定したステータスだと、『わくフラ』の攻略キャラとはズレが生じてしまう。

  王侯貴族については、一族ごとにざっくりとした特有の性質を企画仕様書に書いていた。例えば、王族はカリスマ性や統率力を持ち、理性的で自尊心が高い、ケーナイン一族は正義感が強く義理と人情に厚くて、身体能力が優れている、などだ。

 秀島氏の分身の『アイ』だけなら、これ以上は手を加えず自動設定に任せるが、姉の分身が存在するからには、妥協は出来ない。

 私は、秀島氏の生まれ年の生年月日を用いた『メッセージ占い』から導きだしたステータス増減に加えて、手動でステータス値を操作し『わくフラ』の攻略キャラに出来るだけ近づける事にした。


 攻略キャラ達は、キャラクター設定における4分の3の遺伝要素と4分の1のランダム要素を排除し、占星術から導いた増減と私の手動操作だけで、ステータス値の全てを確定しておくのだ。

 ステータスは2300項目あるのですごく大変な作業だったが、『アイ』と同級生だが秀島氏の生まれ年ではない『イコリス』を紛れ込ませるには、手動によるキャラクター設定は都合が良かった。


《少しネタバレ》



転生者については、二転三転する予定です。

見鷹君のおしゃれ伊達眼鏡は伏線になっています。

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