門3
入学式は大講堂で行われるのだが、新入生の多くはジェネラスの励ましの甲斐なく、打ちひしがれてその場で動けずにいる。
ファウストは、ジェネラス、トゥラン、チェリンに新入生達を大講堂へ率いるように命じ、校門の前にフラリスを伴ってやって来た。
フラリスは俺達を気遣い、校門を出ても眼帯に被さるよう前髪を寄せながら、こちらへ近づいていた。
「アイ・レットエクセルって、可愛いって評判の花屋の桃色髪の子でしょ?」
「そう。遅刻するような子ではないんだけどね。」
ラビネにフラリスが訊ねると、擁護をはらんだ返事をした。
(面識があるのか・・・・。可愛い平民と。)
俺が訝しんでいると、ファウストが全く違う話を切りだしてきた。
「フラリスが強制力を受けた平民達の、或る傾向に気付いたらしい。イコリスとサイナスは知っておいた方が良いだろう。フラリス、二人に教えてやってくれ。」
「・・・名簿を見てたら誰でも分かる事なんだけど・・・。」
フラリスが記録していた名簿は、クラスごとに五十音順となっており、貴族を含む国政関連を担う『官僚クラス』、魔石の技術開発の『技術者クラス』、魔石の基礎技術の応用展開の『職人クラス』、一クラスにつき約30人記載されていた。
不思議な現象が起こるフラーグ学院だが、将来国を支える成績優秀で有望な精鋭が集められている。
「変質の内容が同じ生徒が、複数いるじゃない?彼らは同じクラスにならないみたい。要するに、強制力で太った女子は3人居るんだけど、各クラスに一人ずつ分かれて在籍してる。」
「坊主は5人いたよな?どうなってる?」
「『普通の坊主』と『角刈りの坊主』の組み合わせで、技術者クラスと職人クラスにそれぞれ在籍していて、残りの一人『線が入っている坊主』は官僚クラス在籍だよ。」
(俺が要注意だと思っていた坊主が同じクラスとは・・・。)
坊主になった5人の中で一人だけ、仕上がりが違う者がいた。
坊主は坊主なのだが、側頭部あたりに交差した線が刈り込まれ、肌の色も心なしか浅黒く変質した、不良系美男である。
イコリスは坊主に好意的なので何も感じなかったようだが、俺は思わず吹き出しそうになったのだ。まあ、角刈りも不意打ちで視界に入ると危険だが・・・。
「それで、『線が入っている坊主』の事例は初めて見るのだけど・・・語尾が『ある』と『でござる』も初めての事例でしょ?」
フラリスに問われた俺とイコリスは頷いた。
「彼らも官僚クラスなんだ。今年初めて現れた変質の平民は、俺達貴族と同じクラスになってる。」
「・・・そんな・・・。」
俺とイコリスは、トゥランと強制力について情報を集めて備えて来たのだが、同じクラスに『線が入っている坊主』のような、備えの意味のない者が新たに何人もいるという事になる。
「フラリス、官僚クラスの名簿を見せて。サイナス、取り敢えず初めて見る強制力の内容を、把握しておきましょう。」
「・・・うん。そうだな。」
受け取った名簿の最初の頁を捲ると、イコリスはある事に気付いた。
「桃色髪の子も官僚クラスなのね。」




