百人一首を買った
A子 「ねぇねぇ。百人一首買ったんだ」
B男 「お、懐かしいね。小学校で覚えさせられたよ」
A子 「『ひゃ・く・に・ん・いっ・しゅ』」
B男 「百人一首はスラっと言えるわい! 中身だよ!」
A子 「『取・扱・説・明・書』」
B男 「違ぇ!」
A子 「『絵・札』」
B男 「だから俺に日本語を教えるな! 知っとるわい!」
A子 「『蝉丸・イズ・ジャニーズジュニア』」
B男 「違ぇだろ、絶対ぇ! そうじゃなくて、『このたびは ぬさもとりあえず 手向山』」
A子 「『とにもかくにも 神のまにまに』」
B男 「『紅葉の錦 神のまにまに』だよ! 『とにもかくにも神のまにまに』ってなんだ!?」
A子 「なんにでも合う魔法の下の句よ!」
B男 「ねぇよそんな下の句!」
A子 「試しに別の上の句読んでみて」
B男 「『足引きの 山鳥の尾のしだり尾の』」
A子 「『とにもかくにも 神のまにまに』」
B男 「全く合ってないじゃん! 意味が分かんないし!」
A子 「結局神様次第だっていう歌よ」
B男 「なんか人生投げちゃってる感じじゃねぇかよ。そんな下の句じゃないんだよ。『足引きの 山鳥の尾のしだり尾の』」
A子 「『とにもかくにも蟹の姿煮』」
B男 「蟹!?」
A子 「『おいしいから食べようじゃないか』という歌よ」
B男 「鳥関係なくなってんじゃん!」
A子 「『それにつけてもオヤツはカール』」
B男 「やかましいわ! ホントに百人一首出来んの!? っていうか、百人一首知ってんの!?」
A子 「ウチでは普通の百人一首なんかやらなかったから」
B男 「普通以外で、どうやって百人一首やるんだよ?」
A子 「まず上の句を読んで、その下の句以上にピッタリな下の句を考えた人の勝ち」
B男 「勝手に作るな! 上の句と下の句はセットなの!」
A子 「でもたいした内容じゃないよ。『好きな人に会いたいなぁ』くらいのことしか言ってないんだから」
B男 「そういうのが情緒だろうよ!」
A子 「『今日の給食おいしかったなぁ』とか」
B男 「そんな歌は百人一首に入ってねぇよ!」
A子 「『山鳥の尻尾は長いなぁ』って歌と大差ないでしょうよ!」
B男 「その奥に込められた趣を感じ取るんだよ!」
A子 「そんな大したもんこもってないって」
B男 「お前が短歌の何を知っている?」
A子 「だって、メロディみんな同じだし」
B男 「メロディは関係ないんだよ!」
A子 「いわば、みんな替え歌じゃん?」
B男 「違うわ!」
A子 「たまにメロディ外してる人いるけど。『花の色は~』とか」
B男 「外してるわけじゃねぇよ!」
A子 「『給食は ソフト麺より カレーがいい』」
B男 「だから給食の歌なんかないから!」
A子 「『それにつけてもオヤツはカール』」
B男 「カール給食に出ないから!」
A子 「蝉丸」
B男 「蝉丸そんな歌詠んでない!」
A子 「あと、ウチオリジナルの遊びがあるんだ」
B男 「どんな?」
A子 「絵札を裏返しに置いて、一枚ずつ引いていって、姫が出ればもらえる、坊主が出ればとられる」
B男 「坊主めくりじゃん! メチャクチャメジャーじゃん!」
A子 「で、蝉丸が出たら歌って踊る」
B男 「そんなルールはない!」
A子 「『蝉丸・イズ・ジャニーズジュニア』」
B男 「だから違うからね!」
A子 「とにかく蝉丸めくりをやろう!」
B男 「坊主めくり!」
A子 「そのために百人一首を買ってきたんだから」
B男 「まぁ、普通に百人一首やっても『神のまにまに』しか取らなさそうだしね」
A子 「そんなことないよ。『蟹の姿煮』も取るよ」
B男 「ないんだ、そんな札!」
A子 「あなたが知ってるの、古いバージョンなんじゃん?」
B男 「百人一首はバージョンアップしないの!」
A子 「でも私が買った百人一首は最新版だよ」
B男 「最新版でも内容は一緒だろう?」
A子 「ううん。百人一首オール蝉丸バージョン」
B男 「全部蝉丸かい!?」
A子 「坊主めくりでは歌って踊りまくり!」
B男 「そんなルールないって! もういいよ」




