褒めるのむずい
A子 「ねぇねぇ。人を褒めるのって難しいよね」
B男 「そうだな」
A子 「よ! 当たり付き!」
B男 「褒められてねぇよ!」
A子 「え!? 当たり付き!?」
B男 「疑問文になっただけじゃん!」
A子 「そう、当たり付き」
B男 「誰が返答しろと言った!? で、当たり付いてねぇよ!」
A子 「こんなに褒め称えているのに怒られた!?」
B男 「褒め称えてないよね!?」
A子 「称えているつもり!」
B男 「称えられてないんだ!」
A子 「じゃあ祟る!」
B男 「祟るな!」
A子 「一文字違いなのに!?」
B男 「意味がエライ変わるから!」
A子 「褒め祟る」
B男 「お前に褒められると祟られちゃうのか!?」
A子 「おふこーす!」
B男 「だったら褒めるな!」
A子 「人を褒めていい気分にさせてあげたいんだよぉ」
B男 「けど、無理矢理褒めても相手は喜ばないぞ?」
A子 「え!? 毎回毎回断腸の思いで褒め言葉を言っていたのに!?」
B男 「もう辞めちまえ、人を褒めるの!」
A子 「どんな褒め方されれば嬉しい?」
B男 「さりげない感じがいいよな」
A子 「交差点とかで、すれ違いざまに『当たり付き』」
B男 「さりげなくねぇよ! 違和感が半端ないよ!」
A子 「じゃあ、朝食のパンの焼き目が『当たり付き』」
B男 「そういうパンかと思っちゃう! 食べながらどこかに当たりを探しちゃう!」
A子 「さりげないが分からない……」
B男 「まず言葉を変えようか!」
A子 「『外れなし!』」
B男 「当たり外れで喜ぶ人ってそういないからな!?」
A子 「他に褒める言葉が思いつかない」
B男 「なんでもいいんだよ。相手が喜びそうなことなら」
A子 「2億円あげようか?」
B男 「喜ぶかもね! でも、そうじゃないよね!?」
A子 「何を言われたら喜ぶかな?」
B男 「着てる服とかどうだ?」
A子 「ごめん。私の知り合いで服を着てる人はいない」
B男 「裸族か!? お前の知り合い以外だったら、だいたいの人が服着てるから、それを褒めてやれ!」
A子 「お、服だねぇ~!」
B男 「そうだよ、服だよ! 知ってるよ!」
A子 「お気に召さない?」
B男 「召さないね! その服がどうなのかを言うの!」
A子 「ちゃんと服に見えるよ」
B男 「ちゃんと服に見えなきゃ大変だ!」
A子 「全身シースルー」
B男 「それは大変じゃなくて変態だな!?」
A子 「服を褒めるって難しくない?」
B男 「簡単だろう。『よく似合ってるね』とか」
A子 「よく煮込んであるね」
B男 「何の煮っ転がしだ!?」
A子 「煮てはいるけど転がしてはいない!」
B男 「どこに不満を覚えてるんだ!? 『似合ってるね!』」
A子 「匂ってるね」
B男 「悪口か!?」
A子 「すっごい微妙な感じで、あなたにピッタリ!」
B男 「悪口だな! 完全に悪口だ、それは!」
A子 「人を褒めるのは難しい……」
B男 「じゃあもう単純に、自分が言われて嬉しいことを人に言ってやれよ」
A子 「よ! 当たり付き!」
B男 「だから当たりは付いてねぇってのに! もういいよ」




