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第六十二話・邪神の寺院

「……どういうこと?記憶喪失じゃなかったの?」

ミルクが厳しい顔で俺を睨む。

「何で読めるの?此処に書いてある文字はパラダイム七種族の使う文字じゃないわ」

しまったと思ったときにはもう遅かった。

俺は記憶喪失ということにしていたし

ミルクは俺が翻訳魔法を使えると言う事は知らなかったはずだ。

「これはその……えっとだな……」

ヤバイ、なんて説明すればいいんだ……?

「アルタールは魔人が邪神を祭る神殿よ」

ミルクが嫌悪を露に岩山に刻まれた入り口を見つめた。

石柱に刻まれた逆三角形の紋章を見て顔を顰める。

「気が付くべきだったわ……

七言語に当てはまらない言葉で書かれた石碑。

聖なる七色に対成す暗黒で統一した色調。

邪神と魔人と怪物を示す逆三角形の忌むべき紋章……

なぜ邪神の神殿の石碑が読めるのよ!?」

「そ、そんな事を言われても……」

「落ち着け二人とも。

雪平の性格上何時までも隠し通すことは出来ないとは思っていたが……

ミルクに話していなかった事があるのは事実だ」

「二人とも何で黙ってたのよ!!私ってそんなに信用が無いわけ!?」

「いや違うんだって、信用してなかったわけじゃない!!」

ミルクの剣幕が怒気を帯びる。

彼女の気持ちも分かる、仲間に隠し事をしていたら誰だって良い顔はしない……

そこにヴァイスが割って入る。

「二人ともそこまでだ。

感情的になったら話が進まん。

俺が今までの事情を客観的に説明するから最後まで聞け。

なるべくならこういう形で明かしたくは無かっただろうが

こうなっては仕方あるまい。雪平もいいな?

ミルクの方も何かあるなら俺の話が終わった後にしろ」

「ああ、頼むよアニキ……」

「ちゃんと納得できるように説明しなさいよね」

ヴァイスは俺と出会った当時の状況を掻い摘んでミルクに説明した。

俺が朽ちた建物の跡に着の身着のままで落ちてきた事。

俺がガイアに行きたがっている事。

行く当ての無い俺にバスターとしての生き方を叩き込んだ事などだ。

「……まあ、そこまでが俺の知っている雪平だな。

本当にガイアから来たかどうかは分からないし

冷孔転移の失敗で頭を打ち、記憶が混濁した可能性は否定できないが……

確かに言える事は悪人ではないことだ。ミルクも見てきただろう?」

「そうね……」

ヴァイスにそう言われて、ミルクは考え込んで居るようだった。

「ガイア、アース、テラ、地球……国によって色々言い方はあると思うけど……

俺はとにかく、上にある世界の日本ってところから来たんだ。

信じてもらえないだろうけど……ただ帰りたいだけなんだ。

アニキに教えてもらったけどパラダイムじゃガイアは天国の事なんだろ?

特に熱心に信じてるミルクには話を切り出しにくかったんだ。

生身で天国に行きたいなんて頭のおかしい奴だと思われたくなかったし……」

「……話しにくい事情があるってのはわかったわ。

雪平も色々有るのね……でも仲間に隠し事をするのはいただけないわね」

「ごめん、いつかちゃんと話すつもりだったんだ」

俺はミルクに頭を下げる。

「ま、いいわ。でもなんで此処の文字が読めたかの疑問は解決してないわ」

「それについては俺が説明しよう。

ミルクは先天魔法という物が存在して居るのは知っているか?」

「それは聞いたことがあるわ。

希に生まれながらに一般的な魔法の系統に当てはまらない

特異な術式を体の中に持ってる人が居るってのは知ってるわ」

「雪平の先天魔法は『翻訳』だ。

知識として持っていなくとも文字や言語に篭められた意味を魔力を使って理解できるらしい。

水晶玉を使った『念話』などと術式の構成は似通っている」

ヴァイスのアニキがそう説明してくれた。

「俺もこれに気が付いたのはほんとちょっと前なんだよ。

アニキに言われるまでそういう魔法が有るなんて知らなかった。

でも、読めても書けないから練習は必要なんだけど……」

「なるほどねえ。やっと雪平が此処の石碑を読めたのか分かったわ。

地味だけど便利そうな先天魔法ね。

私なんか苦労して他の種族の文字を覚えたってのに」

「確かに俺にとってはありがたいんだけど

万能って訳じゃないんだぜ……

知らない意味の言葉は発音は出来るけど意味が訳わかんないし」

「雪平の先天魔法である翻訳はあらぬ誤解を生みやすそうだな。

魔人族の遺跡の石碑が読めるからとて魔人とは限らんのにな」

「あ、あはは……」

ミルクはちょっと苦笑いを浮かべていた。

彼女は口には出してないがそういう誤解をちょっとしてただろう。

「率先して怪物と戦う者が魔人や邪神に組するものとは思えんのだがな」

「ああ、うん……それもそうね」

「雪平は翻訳を使う時は誤解を生まぬよう気をつけることだな」

「わかった、気をつけるよ」

「これでミルクの疑問は氷解したな……」

「ええ、事情は分かったわ」

とにかく、それで彼女は納得してくれたようだ。

うっかりこの世界で宗教上の敵である魔人族に間違われる誤解は解けた。

上手く彼女の誤解を解くよう動いてくれたヴァイスのアニキには本当に感謝だ。

だが俺はミルクではないので、彼女が俺の事をどう思っているかは窺い知れない。

ガイアから来たと信じてくれたのか……

あるいは転移に失敗して記憶が混乱している可哀想な人なのかは……

「でも魔人の寺院っていうとやっぱり居るのかな魔人が……」

魔人というのがどういう格好かは分からないが話に聞くところによると人っぽいが……

俺は怪物と戦うのはまだしも人と殺しあったり斬り合うのは出来るなら避けたい。

ヴァイスがいつの間にか石窟寺院の入り口に屈み込んで床を調べていた。

「その心配は必要無さそうだぞ。

何層にもわたり随分昔から土埃が溜まっている……遺棄されて久しいようだ」

おれは安堵のため息をついていた。

どうやら魔人と戦うとかはないみたいだ。

「だが奥に進んだ具足の足型……恐らくバスターの足跡だな。

進みはすれど戻った足跡が無いという事は……

冷孔の守護に置かれたヌシに殺られたな……」

ヴァイスがちょっとぞっとする怖い事を言う。

彼は土埃を払いながら立ち上がるとこちらを振り返る。

「アルタールで取り巻きの怪物が居ないということは嫌な感じだな……

少数精鋭型かヌシに冷孔の魔力が集中しているという事だ、気を引き締めて掛かるぞ」

俺とミルクはヴァイスの言葉に頷いた。

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