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第五十二話・武器調整前編

翌日、俺はクラフト武具店に顔を出した。

武器の製作前の微調整をする為にだ。

ヴァイスは契約の詰め作業や情報収集の為に魔法学院に出向いているし

ミルクの方は教会の方でやることがあるらしく今は居ない。

「ああ、いや。それは全然……でも、前準備って言っても、何をやるんですか?」

「そんな畏まった言い方すんなよ。むず痒くなっちまう。坊主だってそうだろ?」

そういってクラフトは金属の柄のついた木剣を俺に渡した。

柄には滑り止めの布が巻かれている。

「じゃあお言葉に甘えて……これは?」

「この前グリップの型を取っただろ?アレの試作品だ。

振ってみて違和感が無いかどうか確かめてみろ」

言われたとおりに手にとって構えてみる。

「なんだ……すげえ馴染む」

まだ仮組みの、しかも柄だけだというのに。

吸い付くような握り心地。

初めて手に取ったはずなのに

使い慣れた剣のように手に馴染んだ。

「まだ柄だけなのに……」

試し振りをする俺を見てクラフトはしてやったりの笑顔を見せている。

「その様子だと上手く行ったみてぇだな。

それを作る他にも貰った大剣をバラして分けたり

ドミンの素材を大まかに削ったり

良い炭や飾りや繋ぎに必要な金属をを仕入れたりやることが多くてな。

もっかい弄るからちょっと借りるぜ」

「あ、はい」

仮組みの木刀を受け取りながら、クラフトは山積みにされた道具の中を漁り始める。

後ろから覗き見ると、いくつか見覚えのあるものが見て取れる。

どうやら俺達が持ち込んだドミンの材料や、

俺が今まで使っていた大剣と思しき物が分解された物だった。

「ここ暫くまともな仕事してねえからな。やっと巡ってきたまともな仕事だ。

こっちも本気で取り組む以上、時間がかかるのはこっちも譲れねぇ」

作業をしながらそう語るクラフトの背中からは頑固そうだが、強い意志が感じられた。

なるほど……そういう手順を踏んでいるなら、時間が掛かってしまうのも無理はない。

それだけ本気で取り組んでくれている事に、俺は嬉しかった。

期待されているような気がして、頑張って答えなければと強く思う。

「いや、全然良いっすよ」

「おおそうだ、ドミンの素材がちょっと余ってよ。

坊主は避けて当てるスタイルだろ?

速度強化魔法の掛かった良いグリーブ(脛当・脚絆)が作れそうなんだわ。

ちょっと値段は負けてやるからそいつも任せてみねぇかい?」

「え、良いんすか?」

足装備かあ、確かに速度が上がるのはかなりありがたい。

確かに、それは願っても無い話だ。

防具だって実を言うと、もう少し性能がいいのがあればとは思っていた。

性能と金額は比例するし、それ相応のものを手に入れようと思うなら……

俺が持っているお金などすぐになくなってしまう。

しかし、これだけ熱意を持って仕事をしてくれているクラフトが言うのだ、信頼して任せてもいいと思う。

お金もこういう使い道ならばヴァイスのアニキも納得してくれるだろう。

「気にすんな、良い仕事をさせて貰ってるんだ。

重心は切先調子って話はこの前聞いたが……形状の注文はあるか?」

てっきり依然使っていた両刃の大剣と似た形状になるものだとばかり思っていた。

「そんな所まで決めちゃっていいの?」

「剣の型に合っているなら融通してやれるぜ」

そうか、形状もある程度自由が利くのか。

聴いた瞬間にすぐに頭に浮かんだのは、慣れ親しんだ日本刀の形。

しかし、あれはヴァイスのアニキに指摘されたように

対人であり、怪物相手に使うにはあまりにも小さく、心許ない。

結局悩んだ末に、大太刀や野太刀と呼ばれる、

日本刀のサイズをそのまま大きくしたような物があるのを思い出し、それにしようと思った。

「それじゃ、大太刀みたいな形は行けるかな?」

「大太刀?なんだそりゃ?坊主、どんなのか説明できるか?」

興味を引いたようで、クラフトの口調に熱が帯びる。

「えーと、紙とペン有るかな?

片刃で反りが合って……

この際出来るなら多少剣幅が広くなっても仕方ないかな……

刀身には血を払うための溝があって……

剣の構造にも工夫があって

柔らかい芯鉄と硬い皮鉄の二重構造で硬さとしなやかさを出して……

あと最も構造が複雑で上物の日本刀だと……

芯鉄、刃鉄、棟鉄、皮鉄を使い分ける四方詰めってのがあって……」

俺は知っている限りの言葉を使いつつ絵に書いて説明した。

日本刀の構造は自分でも漫画で見たりネットで調べてみて覚えがあった。

元の世界では剣道をやっていたことも有り

自分でそういうことを調べてみようと思う程度には

俺は本物の刀に対する憧れと思い入れがある。

侍の生き様や煌びやかな剣士の活躍、戦国時代や幕末の歴史。

そして刀そのものも好きだ。

日本に居たころ例え本物には手が出ないとしても

いつか模造刀を買ってみたいとお金を貯めていた事もある。

断面図と横から見た絵をクラフトは食い入るように見ていた。

「なるほど面白そうだ……造りが複雑ってのも俺の腕への挑戦と見たぜ。

坊主、この剣の造りやなんやらを何処で見た?」

「えーと……」

ネットや漫画の説明をするとなると……

「まあいい、世の中は広いからな、こういう剣もあるんだろう……

いやしかし本当に面白れえな……」

大太刀自体に興味が移ったのかクラフトさんは

俺の図面を顎を撫でながらじっくりと眺めていた。

ほっ……どうやら日本のことについては触れずにすみそうだ。

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