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プロローグ

異世界トリップものです。

暇つぶしくらいの軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。

「……いてぇ」

学校の帰りに突然目の前が真っ暗になったかと思うと

次の瞬間には背中に物凄い衝撃が走った。

あたりは妙につんとする黴と木の匂いが鼻を衝く。

「おい、お前大丈夫か?」

声をかけられた。よく通る男の声だ。

声の主を探すとそこには妙な男が居た。

年のころは二十代だろうか?

顔立ちその物は美形、だが格好と眼と髪が奇妙だ。

長めの銀髪に紫の眼。

それになにかのRPGや漫画の登場人物のような黒の鎧に腰に帯びた剣。

「くっそ……これが大丈夫に見えるかよ……」

「立てるか?手を貸すぞ」

謎のコスプレ野郎に腕を貸されて立ち上がる。

「ありがとう、助かったぜ……でも一体全体何がどうなって……」

体中に木片やコケやら何やらがついているのに気づき、叩き落とす。

「どうやらお前はあそこから落ちてきたようだぞ」

落ち着き払った態度の男の指差す方向を眺めると

なんと言うか余り受け入れたくない光景が見えた。

俺の住んでいた日本の街の何処かなどいう可能性は今この瞬間消え失せた。

青い空、茂る森の木々の中に立っているのは俺が背中から落ちたらしき建物。

打ち捨てられた礼拝堂や教会のような感じで、屋根の一部が凹んでいる。

……明らかに俺の落下の痕跡だろう。

「……マジか……冗談きついぜ……ここ何処だよ……」

背中から落ちた落下の傷の痛みすら忘れるほどのショックだ。

これがいわゆる神隠しってやつなのか……

男らしくないが俺は頭を抱えて情けなく呻くことしか出来なかった。

「……お前運が良いな」

突き放したような響きのあるよく通る声で謎のコスプレ野郎が呟いたので切れそうになった。

「どこがだよ!」

「お前を見つけたのが俺じゃなく野盗や怪物の類ならお前は死んでる」

こいつの冷徹とも言える斬って捨てるような言動。

事実と現実だけを直視した言い方に、俺は確かな真実の匂いを感じて背筋が寒くなった。

「……いるの?野盗とか怪物とか聞き捨てならない言葉がきこえたんすけど」

コスプレ剣士は何言ってるんだこの阿呆は、というような態度で髪をかき上げながら答えた。

「……居るに決まっているだろう。お前は何処の平和な国から来たんだ?

ああ……いつまでもお前では具合が悪いな。名前は?」

桜田雪平さくらだ ゆきひら。あんたの名前は?」

「耳慣れぬ響きだな。俺はヴァイス」

端的にそう言ったコスプレ野郎……いや、もうコスプレ野郎と思うのはよそう。

一応落ち着いてヴァイスを観察する余裕が出てきた。

鎧についた細かい傷に小さな汚れ、身に帯びた剣や鎧はどう見ても使い込まれている。

コスプレじゃなく実用品として使わなければこうはならないだろう。

それに身のこなしもそうだ。何かの武術をやっているように思える。

俺も少しだけ心得があるからなおさら良く分かる。

ドッキリでもコスプレでもなくどうやらここは本当に訳の分からない異世界らしい。

「……行く当ても無ぇ、金もねえ、帰れるかどうかもわからねぇ。

何でこうなった。俺の未来も明日も全く見えねえ」

打ちひしがれて地面に手をつきがっくりと気落ちする俺に

ヴァイスが深いため息をついた後声をかける。

「……見捨てるのは簡単だが、それは余りにも安易すぎだな。

このままでは確実に野垂れ死ぬな……それも面白くない。

雪平、なんとかしてやるからついてこい」

やべぇ、この人かっけえ……

人情が身にしみる……涙出てきそうだ……

コスプレ野郎なんて思ってすいませんでした。

「すいませんよろしくお願いしますヴァイスさん!」

「ヴァイスでいい。さんは要らん。

ああ、生活が安定してきたら費用は請求するからな」

しっかりしてるなあ……

いや、それでも十分ありがたいけど。

チート無し、転生無し。

これでも異世界トリップ難易度:ドM 難易度:ルナティックには遠い。

主人公には「有情」だと思っていただきたい。

チートも無い。転生による強くてニューゲームもない。言葉も通じない、誰かが助けにも現れないのが真のリアル異世界トリップだ。

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