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【完結】貴方が要らないとおっしゃった馬鹿な女はもう居ませんのでご安心ください  作者: にがりの少なかった豆腐


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同じ場面で、想いを伝えて

 最終話になります。

  

 エリオットが学園を卒業して、ベラは3回生となった。

 3回生になってからベラは寮から学園へ通うのではなく、王宮から学園へ通うようになった。

 これは王族の婚約者、さらには養子とはいえ公爵家の令嬢が学園の寮を利用しているという状況は見え方が悪いからである。そのためエリオットがいずれ生活する際に使用する部屋を前倒しで用意したのだ。


 本来であれば養子として受け入れたセケット公爵家側が用意すべきだが、養子として受け入れた段階でベラはエリオットと婚姻することがほぼ決まっている上、受け入れて1年ほどしかセケット家の名を使わないベラに対し、部屋を用意することは非効率であるため、婚約者であるエリオットが用意したわけだ。

 それにこれは事前にエリオットがセケット公爵に対し、公爵家で用意する必要はないと話を通していたのも理由の1つだ。


 王宮内に部屋を用意されたと言ったがこれはあくまでエリオットが使用している部屋という扱いだ。

 この状態だけ見れば同棲と取れるかもしれないが、現状エリオットがこの部屋に帰ってくることはない。たまに訪れることはあったとしてもエリオットは王宮内の執務をするようになってから別室を与えられており、今はその部屋で生活をしている。

 

 学園でのベラの生活は2回生の後半から変わりはない。ベラはできる限り勉学やエリオットの婚約者として必要な技能を学び、より王族の婚約者として恥ずかしくない存在になるよう努力していた。


 そしてベラがセケット家の養子となったことで、同じ家の出身となったルカとより親しい関係になった。

 普段から行動を共にすることが多くなり、ベラはルカの所作や社交技術を学んでいき、初めてルカと話した時よりも自然に初対面の相手に話しかけられるようになっていた。


 3回生に上がってから行われた試験については、ベラとルカで1位と2位を独占し続け、最終的にベラが2回、ルカが3回1位を取る形で終わった。


 ゴードンやサラー伯爵家関連についてはあの夜会以降、接触がなくベラが直接関わるようなことはなかった。

 それは裏でエリオットが夜会の際にベラが受けた言葉についてサラー伯爵家とベレア伯爵家へ連絡を取り、いくつか話を付けていたからだ。


 その話の内容を詳しく語ることはないが、その結果、ゴードンとイシュカはまだ婚約者の状態を維持していた。おそらくゴードンが学園を卒業すると同時に2人は婚姻する流れになるだろう。



 エリオットの卒業式に出席してから1年。

 ベラもとうとう学園を卒業することになった。

 今年の卒業生代表は試験結果と出身を考慮し、ルカ・セケットが選ばれた。成績だけ見てもベラよりもルカの方が1年を通して上であるため、ルカが選ばれたのは当然のことだが、これがもしベラとルカの順位の取り方が逆になっていたとしても、ルカの方が選ばれていただろう。


 これは仕方ない部分ではあるが、どうしても養子と実子では他家からの見え方も違う。もしベラが代表として選ばれていた場合、実子であるルカに養子よりも下というレッテルを貼られる可能性があり、やや立場が怪しくなりかねない。それを避けるための措置だ。

 まあ、今回に至ってはルカの方が成績は良かったため、余計なことを考える必要もなく卒業生代表として選ばれたわけだが。


 この卒業式にはエリオットもベラの婚約者として出席する形になっていた。


「去年とは立場が逆か」

「そうですね」


 ルカが卒業生代表の挨拶をしている中、エリオットとベラは小声でそうやり取りをした。


「まあ、去年私はこの場に戻って来なかったが、ここからの景色はこういう物だったのだな」


 立場上、どうしても普通の卒業生として出席することが出来なかったエリオットだが、1年越しにこの場で他の卒業生と同じ目線に立つことが出来た。


「去年は申し訳なかったな」

「私はエリオット様と一緒に参加できてうれしかったですよ」

「そうは言っても君を一人にしてしまっていただろう」

「いえ、始まる前まで一緒に居てくださったじゃないですか、それで十分でしたよ」


 去年のことを語ったところで意味はない。

 それを理解しているはずエリオットだが、思いの他去年のことを気にしていたのだろう。その話題になった途端、ベラに対しての謝罪がこぼれた。


「それに今年はこのように一緒に居られますし、それでいいではないですか」

「そうか」


 これ以上の謝罪は要らない。そう暗に伝えて来たベラにエリオットは短く言葉を返し、それ以上その話題で謝罪することはしなかった。



 卒業式が終わり、2人は去年と同じように他の卒業生より態(わざ)と少し遅れて夜会が行われる大ホールへ移動した。

 直前までルカとその婚約者である他国の公爵令息と話をしていたが、同じ場でダンスをしても良くないとその2人とは別々に大ホールへ向かった。


 夜会会場へ移動し、しばらくしてダンスの音楽が流れ始める。それに合わせて卒業生たちがダンスを踊り始めた。

 参加している者たちは違えど去年と変わらない光景に、ベラはどこか懐かしさを感じた。

 たった1年前のことであるがそれでもベラにとっては十分懐かしさを感じるほどにこの1年は濃いものだったのだ。


「始まりましたね」

「ああ、それでは踊ろうか」

「ふふ、はい」


 去年と同じやり取りをして同じようにダンスを踊り始める。そのやり取りにベラは少しおかしさを感じ、小さく笑みがこぼれた。エリオットも同じように笑みを浮かべていた。



 ベラとエリオットは去年と同じように夜会も終盤に差し掛かったあたりで、休憩のためテラスに出てきていた。


「去年も同じようにここへ来ましたね」

「そうだな。去年はもう少し早い段階でテラスに出ていたから、もう少し休んでいる者は居たがな」


 もう夜会も終わりに近い時間だ。すでに夜会を抜けて寮や実家などに帰っている者も多くなっていた。そのためテラスで休憩している者たちの影は去年より少ない。


「去年は私が少し早くばててしまったので、ごめんなさい。もう少し楽しめたらよかったのですが」

「いいさ。どのみち休むことになるのだ。それが早いか遅いかの違いでしかない」


 テラスにダンスで火照った2人の体を冷ますように風が吹く。


「去年は」

「はい?」


 少し間が空いたところでエリオットがそう短く言葉をこぼした。すぐに次の言葉が続かなかったことでベラが疑問に思い、エリオットの顔を覗き込む。

 

「去年はこの場で君に対し感謝を述べた。私の婚約者になってくれて感謝すると」

「そうでしたね」


 去年、この場でエリオットから言われた内容をベラは鮮明に思い出すことが出来た。


「君に運命を感じた。この一年それが間違いでなかったことを強く実感することが出来た」

「そう思っていただけているのでしたら幸いですね」


 この一年、エリオットが学園に居た時よりも会った回数は少なかったが、その中でエリオットはベラの存在が自分の中でより大きくなっていくのを感じていた。


「ベラ。君は私にとって大事な存在だ。今も、これからも」


 真剣な表情でエリオットはベラにそう伝える。

 ベラはそのエリオットの真剣さに息を飲み、返事はせず続く言葉を待った。


「この場で、この場だからこそ言わせてほしい」


 そう言うとエリオットはベラの前で片膝をつき、手を差し出した。


「私と結婚してほしい。これからは婚約者ではなく、その先の関係になりたいのだ」


 自分の顔を見上げるエリオットの真剣な表情と、その言葉を聞いてベラは迷うことなく、その差し出された手に自分の手を添えた。


「はい、喜んでお受けいたします。これからもずっと」

「ありがとう。ベラ」


 エリオットは自分の手に添えられたベラの手を取り、立ち上がる。そしてタキシードの内ポケットから小さな箱を取り出した。

 そしてその箱を開けると中には1対の指輪が収まっており、その片方を差し出されたベラの薬指にはめた。


「え、これ」

「こうなることを想定して用意していたものだ」


 まさか、この場で指輪を貰うと思っていなかったベラはエリオットと自分の指に付けられた指輪に潤んだ視線を泳がせた。


「これから私の妻として、どうか末永く隣に居て欲しい」

「はい。私もずっと貴方の隣に居させてください」


 そう言って感極まり涙を流すベラをエリオットは優しく抱きしめた。

  

 これにてこの作品は完結となります。

 ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

  <(_ _)> にがりの少なかった豆腐

 

 最後にこんな一文で申し訳ありませんが、よろしければこの作品の評価をしていただけたら幸いです。

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