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【火山転生】目覚めたら火山そのものだった〜マグマの力で最強の聖地を作ったら、麓に国ができていました〜  作者: 尾の長い虎(てぃが)
第一章:建国編

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番外編 コロの大仕事

末尾にお知らせがあります

 水路の補修を終えた、次の日。


 ヴァルは朝から、村人たちに囲まれていた。


「昨日は助かりました、ヴァル様」


「運んでいただいた石なら、しばらく崩れません」


 黒曜石のような尾が、地面を叩く。


 ぱた。


 ぱたぱた。


 大型犬ほどの火竜は、褒められるたびに胸を張っていた。


 その頭の上で。


「ぷる!」


 手のひらほどのコロも、胸を張るように身体を伸ばした。


(お前は流されただけだっただろ)


「ぷる?」


(どうして心当たりがないみたいな声を出すんだ)


 コロは少し考え。


 もう一度、胸を張った。


「ぷる!」


(考えた結果がそれか)


 ヴァルが石を運び。


 キイナが置く場所を指示し。


 村人たちが土を詰めた。


 コロがしたことといえば、ヴァルの頭に乗って応援し、最後に水路へ落ちたことくらいだ。


 それでも。


「コロも、ヴァルと一緒に手伝ったんだよね」


 幼いキイナが笑う。


「ぷる!」


(そこは否定してやった方が、こいつのためじゃないか?)


 コロは満足そうに揺れていた。


 だが。


「じゃあ、今日もお願いしますね、ヴァル様」


 村人がヴァルへ声をかけた時。


 コロの動きが止まった。


「ぷる?」


「今日は共同窯の修理です。ヴァル様には、周りの石を運んでいただきたくて」


 ヴァルが頷く。


 頭の上で、コロも頷く。


「ぷる」


「コロも来る?」


「ぷる!」


 キイナに尋ねられ、勢いよく跳ねた。


 ◇ ◇ ◇


 共同窯は、村の中央から少し離れた場所にある。


 パンを焼き。


 肉や薬草を乾燥させ。


 冬に備える保存食を作るための、大きな石窯だ。


 だが今朝、火を入れた途端。


「煙が戻ってくるぞ!」


「窓を開けろ!」


 窯の口から、黒い煙が噴き出した。


 火が燃えない。


 煙は上へ抜けず、作業小屋の中へ溜まっていく。


 村人たちは火を消し、咳をしながら外へ逃げ出した。


「煙突が詰まったの?」


 キイナが尋ねる。


「上は昨日調べた。問題なかった」


 窯番の男が、地面へ開いた小さな穴を示した。


「たぶん、下の空気道だ」


 共同窯の下には、火へ空気を送るための細い通路が作られている。


 片側は、窯の外に開いた吸気口。


 反対側は、火床の下へ続いている。


 だが。


 穴は、大人の腕が入る程度しかない。


「石を全部外せば調べられるが……」


 窯番が石組みを叩く。


「積み直すのに三日はかかる」


「三日も使えないと、困る?」


「昨日狩った肉が傷む。薬草も乾かせん」


 ヴァルが窯へ近づいた。


 前脚を石へかけようとする。


「待って、ヴァル」


 キイナが止めた。


「どの石を動かすか、まだ決まってないよ」


 ヴァルの前脚が止まる。


 昨日の水路を思い出したらしい。


 ゆっくり足を下ろし、キイナを見る。


(学んでるな)


 その頭から。


 ころん。


 コロが地面へ落ちた。


「コロ?」


 コロは吸気口へ近づく。


 暗い穴を覗き。


 身体を細長く伸ばした。


「ぷる」


(まさか、入るつもりか?)


「コロなら通れるね」


 キイナが地面へ膝をつく。


「でも、中で詰まったら出られないよ」


「ぷる!」


 コロが、ぺたりと平たくなる。


 これなら詰まらない、と言いたいらしい。


(そういう問題かな)


 ヴァルが鼻先を近づける。


 コロの身体を軽く押し、穴から離そうとした。


「ぷるる!」


 コロは押し返した。


 もちろん、ヴァルは少しも動かない。


 それでも諦めず。


 小さな身体を何度もぶつける。


「……コロも、お手伝いしたいんだね」


 キイナの言葉に、コロが止まった。


「ぷる」


 今度の声は、小さかった。


 ヴァルの頭に乗っているだけではなく。


 自分にしかできないことを、したいのだろう。


(無理だと思ったら、すぐ戻るんだぞ)


 コロが山体へ向く。


「ぷる!」


(あと、勝手に石を動かすな)


「ぷる」


(そこはヴァルと一緒に覚えてくれ)


 コロは身体を細く伸ばし。


 暗い空気道へ入っていった。


 ◇ ◇ ◇


 俺には、空気道の中が見えない。


 だが、石と地面へ触れる小さな振動なら感じ取れる。


 ぺた。


 ぺた。


 コロが進む。


 狭い石の間を抜け。


 少しずつ、窯の下へ近づいていく。


「コロ、聞こえる?」


 キイナが吸気口へ呼びかけた。


 奥から。


「ぷるー」


 かすかな声が返る。


「まだ大丈夫みたい」


「本当に調べられるのか?」


 窯番が心配そうに穴を覗く。


「コロは小さいけど、頼りになるよ」


(昨日は流されてたけどな)


「ヴァルも心配してる」


 ヴァルは吸気口の前へ伏せていた。


 金色の目が、暗い穴を見つめている。


 その尾は、さっきから一度も動いていない。


 空気道の中で。


 コロの進む振動が止まった。


(コロ?)


 返事がない。


「コロ!」


「ぷるっ!」


 声はする。


 けれど、さっきより苦しそうだ。


 俺は地下へ意識を集中した。


 コロがいるのは、窯の中央より少し手前。


 その周囲だけ、空気の流れが完全に止まっている。


(土か?)


 雨水と一緒に流れ込んだ泥。


 枯れ葉。


 木の根。


 それらが固まり、空気道を塞いでいるらしい。


 コロが身体を押しつける。


 ぐに。


 詰まりは動かない。


 もう一度。


 ぐに、ぐに。


 小さな身体では、押し切れない。


「戻ってきて!」


 キイナが叫ぶ。


「場所が分かっただけでも十分だから!」


「ぷる……」


 コロは戻ろうとしなかった。


 代わりに。


 どん。


 空気道の天井へ、身体をぶつけた。


 どん。


 もう一度。


(何をしてる?)


 どん。


 三回目。


 キイナが顔を上げる。


「今、下から音がした」


 どん。


「ここじゃない」


 石床へ耳を当て、音を探す。


 ヴァルも立ち上がった。


「もう一回!」


 どん。


 ヴァルが、窯の左側へ顔を向ける。


 前脚で、一枚の敷石を示した。


「この下?」


 どん、どん。


「そこだ!」


 窯番が敷石へ手をかける。


 だが、びくともしない。


 長年使われ、周囲の土と固く噛み合っている。


 ヴァルが前へ出た。


 石へ爪をかけ。


 すぐには持ち上げない。


 キイナを見る。


「その石だけ。ゆっくりね」


 ヴァルが頷いた。


 前脚へ力を込める。


 ごり。


 敷石が、わずかに浮いた。


「止めて!」


 ヴァルが動きを止める。


 できた隙間へ、村人たちが木の棒を差し込んだ。


「もう少し!」


 ヴァルが少しだけ持ち上げる。


 敷石が外れた。


 その下には。


 泥と枯れ葉で塞がれた、空気道があった。


「見つけた!」


「掻き出せ!」


 村人が木べらを差し込む。


 泥を崩し。


 木の根を切り。


 固まった枯れ葉を引っ張り出す。


 その奥で。


 紫色の小さな身体が、泥を反対側から押していた。


「コロ!」


「ぷるるるっ!」


 最後の泥が抜けた。


 次の瞬間。


 外から流れ込んだ空気が、細い通路を一気に走り抜ける。


「ぷるっ!?」


 コロの身体が、風に押された。


 ころ。


 ころころ。


 開いた敷石の穴から飛び出し。


 泥の山へ。


 べちゃっ。


 突き刺さった。


「コロ!」


 キイナが抱き上げる。


 泥に包まれ、紫色の身体はほとんど見えない。


「大丈夫?」


「……ぷる」


(たぶん大丈夫だな)


 ヴァルが鼻先を近づけた。


 ぺろり。


 コロを舐める。


「ぷるるるる!」


 泥は取れた。


 代わりに、コロの身体がヴァルの唾液で光っている。


(それはそれで嫌だったらしい)


 ◇ ◇ ◇


 敷石を戻し。


 隙間を土で固め。


 共同窯へ、もう一度火が入れられた。


 炎が燃える。


 空気は下から入り。


 煙は窯の奥から煙突へ吸い込まれていく。


「直ったぞ!」


「これで肉を干せる!」


 窯番が、キイナの腕にいるコロへ頭を下げた。


「ありがとう、コロ。お前が詰まった場所を教えてくれなかったら、窯を全部壊すところだった」


「ぷる」


 コロが身体を伸ばす。


 今度こそ。


 本当に胸を張っていい。


「コロにしかできないお仕事だったね」


「ぷる!」


 ヴァルが頭を下げる。


 いつもの場所へ乗れということらしい。


 コロはキイナの腕から跳び。


 黒曜石のような頭の上へ着地した。


 いつもと同じ場所。


 けれど今日は。


 ただ乗せてもらっているようには見えなかった。


 ヴァルが力を使い。


 キイナが場所を決め。


 村人たちが泥を掻き出し。


 コロが、誰にも見えない場所を見つけた。


(大きくないとできないこともある)


 ヴァルの尾が揺れる。


(小さいからできることもあるんだな)


「ぷる!」


 コロが得意げに鳴く。


「かしこみかしこみ。小さき身をもって暗き道へ挑み、火と食を救いし紫紺の勇者――」


(フラン。長い)


「かしこみかしこみ。コロ様、大活躍にございます」


「ぷる!」


(様までついたぞ)


 夕方。


 共同窯から、焼けたパンの匂いが流れてきた。


 キイナが小さくちぎったパンを、コロの前へ置く。


「今日のお礼だって」


「ぷる?」


「コロの分」


 コロがパンを見る。


 村人を見る。


 ヴァルを見る。


 最後に、俺の山体へ顔を向けた。


(食べていいぞ)


「ぷる!」


 パンへ飛びつく。


 身体の下へ取り込み。


 もぐもぐしているのか。


 ただ包んでいるだけなのか。


 外からは分からない。


 それでも。


 嬉しそうに揺れていた。


「明日もお手伝いする?」


 キイナが尋ねる。


 コロは、すぐには頷かなかった。


 まず、俺の山体を見る。


 次に、キイナを見る。


 何を手伝うのか。


 先に聞こうとしているらしい。


(お前も学んだな)


「ぷる」


「明日は、薬草を集めるんだって」


 コロが考える。


 ヴァルの頭から降り。


 草むらへ入れるように、身体を細く伸ばした。


「ぷる!」


(やる気だな)


 幼い火竜の尾が、楽しそうに地面を叩く。


 その頭の上ではなく。


 今日は隣で。


 手のひらほどの小さな身体が。


 昨日より少しだけ誇らしげに、夕暮れの村を跳ねていた。

いつも読んでいただきありがとうございます。


毎日更新を楽しみにしてくれている皆様へ

大変申し訳ないのですが第二章に入る前に第一章の大幅改稿を行います。

その為、しばらくの間更新が止まります。

物語の構成は結末まで決まっており、最後まで描ききりますのでご安心ください。

期間は1ヶ月ほどを予定しております。


第二章が待ちきれないと思ってくれる方はブックマークをお願いいたします。

しばしの間、改稿前の本作をお楽しみください。


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