再登録
開いた扉の先は先ほどの厳粛さは既に消え去り、いつもの喧騒が戻っていた
アレイはその中におどおどと入っていくと、周りは静まり返り、冒険者たちから一斉に好奇の目を向けられる
(なんで、こうなるんだ)
アレイは本日二度目の視線の一斉射撃に晒されながら、腰を低くし早歩きで奥にある受付を目指す
「おい。お前さっき入ってきた奴だよな。見慣れない顔だが新人か?」
あと少しで受付に辿り着きそうな所で、右目が潰れたスキンヘッドの筋肉隆々で厳めしいハンマーを携えた大男がアレイの前に立ち、凄んでくる
(うわ、なんか変な人に絡まれたな。まあ適当にやろう)
アレイは視線に晒されるなどの気まずい瞬間が苦手なだけであって、別に気弱というわけではないので強そうな大男に凄まれてもビビる事は無い
「先ほどは申し訳ありませんでした。一応昔は冒険者をやっていました。ですから新人とは言えないですね」
おどおどしていた中年エルフの思わぬ冷静な態度に、からかってやろうという気持ちで近づいた大男は困惑してしまう
「お、そ、そうか。昔はってことは今から更新か?」
「更新できるか分からないので、再登録という形になるかもしれません」
アレイは男との会話によって、既に周囲の視線に晒されていることは忘れてしまっている
「な、なるほどな。邪魔しちまって悪かったな」
「いえいえ。それでは」
男は浮かない様子で仲間であろう2人のパッとしない男たちの元へ戻っていく。男から解放されたアレイは、自分が大勢の人から見られていたことを思い出し、そそくさと受付へと向かう
「冒険者カードの更新をしてほしいのですが」
そう言ってアレイは、茶髪のショートボブで眼鏡を掛けた、いかにも真面目そうな受付嬢に懐から冒険者カードを取り出し、差し出す。そして一安心する
(良かった。さっき話していた受付嬢じゃない。もし覚えられていたら気まずかったからね)
差しだされた冒険者カードを受け取った受付嬢は、その冒険者カードのあまりの錆び付き具合に困惑してしまう
「お客様、こちらはいつの冒険者カードでしょうか?」
「う~ん。いつだったかな、、、冒険者稼業をやめたのがナーシャと結婚した時だったから、、、、、確か七十年程前の物だと思います」
「な、七十年前!?そんな古い冒険者カードは私見たことがありません」
受付嬢の驚いた声に受付周辺の冒険者がざわつく
「それで、更新は出来そうですか?」
「ちょっと分からないですね。少々お待ちください。上の者に聞いてきます」
受付の異様な様子に周りの冒険者のざわめきが大きくなってきた
(このままだと、また一斉射撃に遭うぞ。それは嫌だ)
「お姉さん。大丈夫です。再登録をお願いします」
アレイはもう変に目立ちたくないので、受付の奥に消えていきそうだった受付嬢を呼び止める
「え、ですがそれですと階級が一番下の7級からとなってしまいますがよろしいのですか?」
「ええ、構いません」
(階級の表記の仕方変わったんだな)
「承知いたしました。ではご登録をさせていただきます。まずは、、、、
はい。ご記入していただく事項は以上となります」
「冒険者カードの発行はいつごろになりますかね?」
「すぐにできるので少しお待ちください」
そう言って受付嬢は先ほどアレイが記入した紙を、上にちょうどその紙の幅の穴を持つ正方形の魔道具に挿入する。それから数十秒経って、下からアレイの持つ冒険者カードより一回り小さい金属製の冒険者カードがゆっくりと発行された
受付嬢は発行された冒険者カードをアレイに丁寧に手渡す
「それでは以上で登録完了です。アレイさんは7級ですので、まずは7級の依頼を5つ達成してください。それが終わりましたら6級への昇格テストを致します」
「分かりました。では、ありがとうございました」
冒険者登録を終えたアレイは足早にギルドを立ち去ろうとする。しかし、立ち去る道が見当たらない。ごった返す冒険者によって空間の繋がりが連続性を失ってしまっている
偶然のように見えるこの状況だが実は意図的なものであった
「おい。新人」
5回体の向きを変え、正面を向きなおした時に野太い声が飛んできた。その声は両サイドにある階段を登ると辿り着く、入り口側の上のスペースから聞こえてきた
アレイは声の飛んできた方向に顔を向ける
(へえ~このギルドにはこんなスペースがあったのか。いつも外から中を覗き込んでいただけだったから知らなかった)
アレイはそんな面白い空間があったことに気を取られて、先ほどアレイに声が飛んできたことはすっかり右から左だ
「おい!聞こえてないのか!?お前だ。そこのエルフ」
二度目のもはや恫喝と言ってもよい声に、アレイは自分が呼ばれていたことを思い出す
その場にいる全冒険者の顔がアレイに向けられる。しかし、流石に三度目となると流石のアレイもその状況に慣れてしまい、声を出してであろう主体を真っ直ぐに見る
「はい。なんでしょうか?」
怒りが滲んだような声色でアレイも声を飛ばす
アレイはいきなりの呼び止めに先程のも含め、少し腹が立っていた。別に、冒険者のならず者具合は知っているため、無礼な態度に腹を立てているわけではない。ただ、早くこの場を退きたいのに、それを邪魔してくることにストレスを感じているのだ
「、、、お前生き残る気あんのか?」




