第28話
俺達よりも早く先に向かった分隊が陣地を制圧したことを合図する照明弾を白けつつある空に向かって上げた。
ここまでは予定通りだが、問題が発生した。
「クソ! 弾切れだ! どっかに武器は無いか!?」
持っていた小銃は弾を撃ち尽くしてしまってもう無い。
拳銃も使っていたがそれも尽きてしまった、これからアールス山を下って麓の敵陣地に攻撃しなければならないにも関わらずだ、おまけに残党も居て接近するに従って抵抗も強まり容赦がなくなっている。
「誰か弾をくれ!」
俺がそう叫ぶと、アヌックが後ろから弾の入った弾薬袋を渡してきた。
「ありがとよ!」
「狙って撃ってください一等兵殿! いくら弾があっても足りません!」
「すまんな!」
小銃の管状弾倉に弾を入れつつ、アヌックの方を見てみた。
的確に敵の頭や腹といった急所に狙いをつけて弾をぶち込んでいて、腕の良さに思わず息を飲んだ。
だがアヌックの銃を持つ手も震えていて……こいつも人間なんだなと、そう思えた。
「ッ! 前を見てください一等兵殿!」
よそ見していたら咎められた。
激戦の末にアールス山の頂上にたどり着いた時、西の方角から照明弾が上がるのが見えた。
西部の部隊、その到着を告げる合図だった。
彼らは既にデュッセル軍の残していった野砲を操作し、麓のデュッセル軍陣地に向かって砲撃を開始していて、歩兵たちは突撃を今や遅しと待っていた。
彼らは撃つのを躊躇うデュッセル軍を一切の容赦なく蹴散らし、突き進んできたのだろう。
彼等が持っている武装も多種多様だ。
ペイル軍の小銃は勿論、デュッセル兵の小銃を鹵獲して使用している者、なかにはスコップまで使っている者もいる。
西部は比較的なだらかな地形で戦車も投入されていると聞いていたが、その姿が見えない所を見るに多分嘘だったんだろう。
「あの準備砲撃が終わった後、俺達は同時に突撃する。味方を撃つなよ?」
「……ええ」
エリアンの言葉に、モーゼスは弱弱しく答えた。
モーゼスは特に怪我などはしていないが……色々と思うところはあるんだろう、気持ちは分かる。
「モーゼス……切り替えていけ」
「煙草屋、俺はそうはいかねぇよ。俺は特に身内を殺されたわけじゃねぇ。けど仲間を殺されたのはあるし、ああして交流して胸の内を聞いちまって……ああクソ……どうすりゃいいんだよ」
山の斜面に掘られた塹壕に入りながら、モーゼスはそう言った。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになってしまってたが……俺はかける言葉が見つからなかった。
俺だって板挟みだったから。
「なぁ煙草屋。煙草持ってないか?」
「あるさ。ほら吸っとけ」
俺はモーゼスに煙草を渡して火を付けてやろうとしたが……
「……ああ、クソ」
ちょうど雨が降ってきた。
これから進軍するが……ずぶぬれでの進軍になるな。
突撃前に煙草も吸えないとは、神様はやっぱりクソだ。
「よし笛だ、突撃するぞ!」
エリアンの命令で、俺達は塹壕の中を全力で走りだした。




