第24話
どうしてこうなった?
「こっちだこっち! 早く投げろ!」
「デュッセルの奴等に負けるなよお前等!」
「俺たちはお前等に賭けてんだからな! あっ、入った」
俺はアヌックと一緒にペイル軍の塹壕の中で座り込んでボケっと青空を眺めていた。
そして塹壕の外……塹壕の溝も飛行船の残骸も爆撃機の残骸も無い開けた場所でペイル兵とデュッセル兵がこともあろうにサッカーをやっていた。
他にも中間地点で呑気に並んで煙草を吸ってる奴等や、酒を交換する奴等、銃を見せている奴等も居る。
エリアンもモーゼスも混じって遊んでる、どいつもこいつも頭がおかしいんじゃないか?
「……アヌック、お前は行かないのか?」
「弟を殺した連中とつるむつもりはありません。……あの人たちが弟を直接殺したわけじゃないと、分かってはいるんですけどね」
「簡単に割り切れるもんじゃないさ。そんなもん俺も同じだ」
俺の弟は生きている可能性があるだけまだましだ。
アヌックの弟は殺されてるんだからな、さぞ憎しみは深かろう。
「お、居た居た」
煙草でも吸おうかと懐をまさぐっていた時だった。
エリアンの声が唐突に聞こえてきて、俺は声がする方に視線を向けた。
だが一緒に付いてきていた人間の顔を見て、俺は煙草が入ってる懐じゃなく腰の拳銃に手を伸ばす。
「待て待て、今は停戦中だ」
「軍曹殿。ペイル軍の陣地にまでそいつを連れてくるのは流石に駄目でしょう?」
ちらりと隣を見ればアヌックは俺に隠れながら銃剣を抜こうとしている、視線から見るに首を狙ってるな。
「2人とも武器を収めろ。お前達に紹介をしておこうと思ってな。ルッツ上等兵だ」
「エリアン軍曹殿に聞きました、貴方が伝説の撃墜王ですか」
エリアンの連れてきたデュッセル兵には見覚えがある。
塹壕の中から出てきて仲良くしたいだのとぬかしてきたデュッセル兵だ。
「……さて、なんのことかね。撃墜王? 知らないな」
すっとぼけてやり過ごそう、そう思って適当に返したが、何故かこのデュッセル兵は目を輝かせてきた。
「デュッセル軍では噂になってるんですよ。戦闘機の編隊を1人で叩き落した最強の兵士がいる。と」
「もっと落としてほしかったら連れてくるといい。ただしそん時は爆弾も機銃も外してくれ」
俺の言葉にデュッセル兵は笑った。
「なかなか癖のある方のようですね。少しお話をしませんか? 私も伝説の撃墜王と話がしてみたい」
「……そうかい」
適当にあしらってとっとと話を終わらせよう。
なに、煙草2本もあれば足りるだろう。
「さて、噂の人とお話だ。何を話そうか」
……変な男だ。
俺は明後日の方を見ながら、煙草にライターで火を付けた。
このデュッセル兵と話をして数十分がたった。
その結果俺は……
「はっはっはっは! やったやった。そうやって馬鹿な上官の分の配給を掠めとるんだよな!」
「そのとおり。減ってることにも気が付かない馬鹿にはお世話になったものです」
……妙に趣味が合い話が弾んでしまっていた。
とっとと終わらせるつもりだったのにどうしてこうなった?




