組み合わせ
「では早速皆さんお待ちかねの試合を開始──しようと思うのですが、先ずはルールのおさらいといきましょう!」
ウサギちゃんがマイク片手にそう言うと、先ほどまでわーきゃーとうるさかった歓声が大ブーイングへと変わる。
「まぁまぁ皆さん、ルールの確認は大切ですし!」
ウサギちゃんが観客をなだめようとするが、観客は止まらない。
Boo! Boo!
「だ、だってそうしろって運営に」
Boo! Boo!
「……」
ついには俯き、震え始ウサギ。
つかなんなんだこの全観客が一体となったいじめは。
こんなの食らったら絶対……あーあ、泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞほら泣く──
「──うっっっっるせぇぞ糞○○共がぁッ!私がルールを説明するっつったらするんだよこのカス共ぉっ!!ぶち殺されてぇのかあぁぁっっ!!」
ドンっ!!
凄まじく汚い怒声とともに観客へ向けて爆裂魔法をぶちかますウサギちゃん。
え、な、何?何事?
突撃の事に何もできないでいると観客席の目の前で爆発が起こり歓声があがる。
そしてなんで魔法ぶっ放されて歓声あげてんの?
「フーッ、フーッ!!……こ、このように、闘技場と観客席の間には十数人の魔法使いによる超強力な術式結界が張られており、観客の皆さんをお守りしますっ!」
爆発が晴れると、そこには無傷で沸き立つ観客達の姿があった。
「結界か……つまり……っ!!」
クナイを取り出したクオンがそれを天高く投擲する。
勢い良く放たれたクオンは3、40メートルほど上に飛ぶと、
ギンッ、と甲高い音とともに弾かれ落下する。
「なるほど、ね」
今の行動で何かを掴んだらしいクオンが落ちてきたクナイを掴みほくそ笑む。
「ほう、嬢ちゃん、今ので掴んだのか?」
ザッパが腕を組みながらクオンに尋ねる。
「まぁね。だいたいはわかったよ」
片目を閉じてニヤリと笑うクオン。
返って来た言葉にザッパもニヤリと笑う。
「今回は楽しめそうやのぉ。四回も勝っとると萎えて仕方ないんじゃ」
「そりゃあ良かったな。連勝記録も今回でストップだ」
赤髪の大男、イーブサルが虎を思わす笑みを見せる。
「フーハハッ!そう!なんせ吾が輩!モンテルージ・ブラン・ベルシェⅢ世が居るのだー!!優勝は吾が輩のものであーるっ!!」
黄金の甲冑を纏った男が、フルフェイスの兜の前面を開き顔を出す。
兜から飛び出すカイゼル髭が目立つおっさんだった。
「グルル、ナラソノ自信トヤラ、鎧ト一緒二打チ砕イテヤル」
竜人が尻尾を地面に叩きつけながらメイスを肩に担ぐ。
「……」
「……」
殺気と共に軽口を言い合う奴らに混ざらず、黒のフルフェイスの女と白い外套の男は突っ立ったまま黙っている。
キャラ的に俺もこっち寄りだし黙っておこう。
「以上、ルール説明でした! 続いてトーナメントの組み合わせ発表になります!皆様闘技場上空にご注目~!」
いつの間にかルール説明が終わっていた。
まぁリングと観客席の間に広がる海に落ちなきゃ後はほとんどなんでもやっていいってルールだしな。
観客がブーイングしたのも頷ける(後に知ったがブーイングからウサギちゃんがキレるまでがこの街の闘技場じゃお約束だったらしい。いわゆるキレ芸って奴だ)
「これは……また珍しい魔法を使う」
空を見上げた俺は思わず呟いた。
空中に浮かんだのは扇状に広がる網田くじのような、トーナメント表だった。
魔法の中でもトリッキーとされてる幻術でも使ったのだろう。
十二人分のトーナメント表は観客全員が見られるようにゆっくりと回転している。
「トーナメントの組み合わせは先ず4つあるシード権から決めます。選手のみなさま、こちらのカードをお取り下さい」
ウサギちゃんの手にはどこから取り出したのか十数枚のカードがあった。
タロットカードのような縦が長いカードだ。
「さ、どうぞ」
ウサギに促されカードの山から一枚引く。出たのは白いカード
「あ、残念」
ウサギちゃんがカードを見て言う。
やっぱりスカか。
くそ、あんまり戦いたくないんだけとな
「ヒュウ!流石は俺様!運も味方につけてるぜ」
イーブサルが引いたのも白いカード。
あれ、それハズレじゃないの?
……あー、いや、こいつにとっては戦える事の方が当たりか。うらやましい思考形態をしてやがるぜ。
「グルル…獣人、コレカ?」
「おお!超アタリです!最初にシード権を手に入れたのはド・イジュン選手!」
ドンドンパフパフと会場が盛り上がるがド・イジュンとか言う竜人はふてくされたように腕を組む。こいつも脳筋肉枠か。
その後ザッパ、白いコートの男、どっかの国の騎士とか言う男がアタリの絵柄カードを引いてサード権を手に入れた。
「さて、シード権が決まったところで……選手の対戦組み合わせも終了しましたー! 選手の皆さんに渡したカードには、実は組み合わせ番号が割り振られているのです!」
そのウサギちゃんの言葉とほぼ同時、無地だったカードに10の番号が浮き上がる。
「先ずは一試合目! シュートバニアの騎士ナランテ対、拳聖イーブサル!!」
名を呼ばれた二人の顔が闘技場上空に浮かび上がり、トーナメント表には文字が刻まれた。
なるほど、順番ごとに組み合わせ表に並ぶというわけか。
となると俺は最後の方だ。
「二戦目、狐族のクオン・ヘレオット対黄金の鎧モンテルージⅢ世!!」
お、クオンが呼ばれた。……しかし相手があの全身オリハルコン野郎か。攻撃はもとより、魔法すら防ぐオリハルコンにどう戦うか……うーん、本格的に斬鉄を教えておくべきだったか?
「三戦目、 謎の女騎士リューネ・レンフェ、対するは冒険者アムダ・ジェスター!!」
来たか、なぞの女騎士。
こいつもどんな戦い方をするのかわからねぇから要注意だ。
しかしほんと良い身体をしてるぜ。胸もお尻も大きいのに腰クビレて足はスラッと長い。
顔さえ美女なら完ぺ……ん?
リューネとか言う謎の女騎士を嘗め回すように見ていた俺だったが、何か……そう、何か違和感を抱いたのだ。
何に対してそう思ったのかはわからないが。
「四戦目、黒いコートの男、『黒き執行者』対、 孤高の拳法家ヤン・リアン! 」
あ、俺だ俺だ。
危うく聞き逃す所だった。
俺の相手はチャイナ服っぽい服を着た男か……あ、ヤベ、名前聞き逃した。
「以上をもちまして、大会初戦の組み合わせ発表を終わりとさせて貰います。初戦第一戦目はこれより十分後から開始となります。皆様、十二人の選手に盛大な拍手を~!!」
割れんばかりの大歓声と拍手に包まれながら、ついに魔装演武本選は始まった。
◇
「キキキッ、最強だかなんだかと聞いておったが話にもならんの!この程度の有象無象が相手では我が主の優勝は揺るがぬではないか」
観客席の一角に、日傘を指した少女がいた。
美しい金色の長髪に金色の瞳。
これから血なまぐさい戦いが繰り広げられる闘技場には似合わない、美しい少女だった。
その金髪の少女は闘技場のリングに立つ選手達を眺めて笑った。
「それは勇が聖剣の力を使った場合。今の状態でも強いけど、今回は楽観視できる相手は少ない」
その隣に、またしても幼い少女がいた。
若草色の髪に碧色の瞳の少女は隣の少女の言葉に口を挟む。
すると、金髪の少女がむっ、とした顔になる。
「フン、『未来』を見よったな?全く『時の魔女』は今も前も無粋じゃ」
金髪の少女、パイモンは忌々しそうに言う。
「見ていない。けれど、勇の力量を知っているならばそれくらい容易に想像できる。私は勇のパートナーだからすごく良くわかる」
若草色の髪の少女、リリルリーは腕を組んで自慢気に答える。
「だいたいパートナーなら主の絶対勝利を信じるものじゃろが」
「ううん。そう言う所をちゃんと見てフォローするのがパートナー。私がなりたいのはそれ。貴女みたいに完全に依存してるわけじゃない」
「なんじゃと?」
「なに?」
二人の少女が睨み合い、火花を散らす。
……比喩的表現でなく、二人の間にバチバチと火花が散っている。
互いの魔力がぶつかり合っているのだ。
「二人ともやめときなって。無音と認識阻害を掛けたって言っても周りの客の邪魔になるこたぁ変わらないんだ」
リリルリーの隣の客席に座っていた褐色の女、トーレが苦笑しながら手に持った酒瓶を呷る。
「む……」
「キキキッ、従者の方が物がわかっておるな」
「わかってないのはアンタもだよ。……全くユウの奴め、アタシにベビーシッターでもやれってのかい」
「「誰が赤ちゃんか!!」」
「アンタら二人ともさ」
トーレは何度目になるかわからないため息をつくのだった。
次回からついにトーナメント開始。
優勝するのは一体誰!?
見事当てた人にはプレゼントがございま(ry




