十二のつわもの達
「「「わあああああああぁっっ!!」」」
割れんばかりの歓声がガラリエの闘技場に響きわたる。
数万人を収容できるこの闘技場だが、今では限界定員数を大きく越え、立ち見客も含め観客が溢れかえっていた。
熱気渦巻く観客だが、それに対して闘技場中央のフィールドだけは、氷水をひっくり返したように冷たく静まり返っていた。
中央のフィールドには、十二人からなる集団がいた。
魔装演武に出場する選手達だ。
彼らは皆類い希な才を持ち、この魔装演武に出場するに至った傑物達だ。
人間だけでなく、獣人や竜人、多腕族の戦士もいる。
その中で特に目立つが四人いた。
一人は全身ピカピカの黄金の重鎧を纏った騎士。
上半身裸の赤く長い髪を持つ男。
そして──
(ま、まさか俺以外にもいたとは……っ!)
フードを被った黒い外套の男と、
「……」
同じくフードを被った白い外套の男だ。
まるで鏡合わせのような出で立ちの外套を纏った二人の男。
その黒い方、社勇は自分以外に同じような格好をするその男に戦慄と若干の親近感を抱いていた。
◇
魔族襲来の報を『時の魔女』の名を受け継いだリリルリーから知らされた俺達は、海翔達勇者一行と会うのを急遽取り止めてガラリエの街を散策することになった。
何も遊びで歩き回ったわけではない。
リリルリーの力を借りて魔族が現れるであろう場所に目星をつけるためだ。
予定を合わせていたであろう海翔達には悪い事をした。
まあそのおかげでリリルリー曰くほぼ正確な場所を特定できたので良しとしたい。
そして俺は次の日の朝を迎え、この闘技場にいた。
チラと他の選手達を見る。
多腕族のザッパ、それにクオンとイーブサルが俺を見ている。
ここにいる奴で俺が『黒き執行者』なのを知っているのはイーブサルだけなはずだが……
「……」
……いや、ザッパに関しては俺と白い方のどっちかで悩んでるみたいだ。
あっちの外套にも認識阻害の魔法が編まれているのだろうか。
対してクオンは臭いも気配も調べ上げた上で俺と認識できないのかしきりに首を傾げている。そう言えばクオンとベルナデットには俺が『黒き執行者』だとは教えてなかったな。
シルヴィアには一発でバレたり、反して意外と強力だったりわけわからん外套だ。婆ちゃんらしいと言えばらしいけどな。
しかし良くもまあこれだけ濃いメンツを集められたもんだ。
狐耳のクオンに上半身裸のイーブサル、腕六本の大男ザッパ、全身まっ金々な鎧。まだまだいるぞ?
赤い鱗をした竜人に、黒のハイレグレオタードでフルフェイスの兜をつけたエロ装備の女(巨乳)などなどetc。
まともなのが俺と白い外套の奴しかいねぇってのはどう言うことだ。
(……いや、別にまともじゃねぇか)
似た格好の奴の登場に俺の中の中二病が再発しかけているみたいだ。
「「「うおおおおおおぉぉっっ!!」」」
「っ……何事だ?」
俺がそんな事を考えていると、今までもうるさかった観客の声が更に大きく跳ね上がった。
くそ、耳がおかしくなるかと思った。人より聴覚が良い奴がいるんだぞこんちくしょう!つか一体何事?俺ら(選手)はいつまでこのお天道様を真っ向に浴びて熱くなってる闘技場の上に突っ立てれば良いんだ?
俺の疑問は、すぐに解かれる事になった。
「はいはーい!みんな、元気してるーっ!?」
魔法によるものか、拡声器を通したような女の声が歓声に負けずに闘技場に響く。
するとまた歓声が唸る。
「毎度お馴染み、ガラリエ闘技団専属司会嬢、ラビット・シェアフィールド、只今さんじょー!」
バニースーツにも似た露出の高い服を着たその女は空中から現れ俺含む選手達の輪の真ん中に着々し手に持ったマイクを掲げるように振り上げる。
バン!とでも効果音が着くような登場をしたのはウサギ耳をした女だった。
「「「くぁqwせdrftgyふじこlp!!」」」
今日一番の歓声だ。もはや何を言ってるかわからない。熱狂しすぎて半ば混乱しかけてると見える。
しかしそこまで熱狂する理由もわかる。
ラビット・シェアフィールドと名乗ったウサギ耳の女、その胸に育つ二つの丘の衝撃ったらない。
彼女が観客に向ってピョンピョン跳ねながら手を振る度にブルンブルンと揺れるのだ。
これはヤバい。俺も観客席に居たならば喉が枯れんばかりに叫んでいた事だろう。
「さぁーてついに開幕しました魔装演武本戦! 世界各地より選び抜かれた強者が、世界最強の座を掛けて争う一大イベント!! 今年は初開催より数えなんと五十年目のアニバーサリー! 更にここガラリエに本戦会場を移してから十年目と、節目節目の年でもあります!」
「そんな記念すべき年に開かれた今年の魔装演武に参戦する選手達も、昨年までとは大違い、世間を賑わすつわものどもが集まったー!!」
「ではでは、そんな注目選手達の紹介をしていきましょう! きんきら金の全身鎧!体は覇王金で出来ている!?アルコーデ地方の伯爵貴族、モンテルージⅢ世!」
選手陣の中でも物理的に目立つ全身金ピカ鎧の男がこれまた金色のデカイ盾を振り回して観客に答える。
ってちょっと待った!覇王金って言ったら、オリハルコンの事じゃねぇか!!
オリハルコン。別名覇王金とも言われるそれは、この世界において武具に用いる金属の中で最強であり最稀と言われる代物だ。武器の刃に用いれば、かのミスリル銀すら容易く切り裂き、防具に用いればいかなる刃も通さない。
だがしかし、そんな事はことオリハルコンにおいてはおまけに過ぎない。
オリハルコンの本質、それは魔力の伝導率だ。
魔力の伝導率、それは=能力の付与のし易さに直結する。
剣や鎧を始めとする武具に能力を付与するのは本来至難の業だ。
魔法を込める事で武具の強度や性質にブレが生じるからだ。職人達はその減少を『芯が悪くなる』と言う。
魔剣の鍛冶師などは武器の強さはそのままに、どれだけ能力の付与ができるかがその腕前に直結すると言う。
しかし、オリハルコンにおいて『芯が悪くなる』事が殆どないそうだ。
それはつまり能力の付与のし易さであり、多くの能力を付与できると言う事でもある。
鉄製の武器はできて一つ、鋼は三つ、ミスリル銀でさえ付与できる能力は五つまでとされているが、オリハルコンにおいては最大二十、もはや桁が違うのだ。
そんなオリハルコンの唯一の弱点は1kgで数千万fと言う馬鹿げた値段である。
それを全身に、しかも大盾にまで使うとは……もはや金の力によるチートだ。オリハルコンの装備を使えば小学生だって飛竜を打倒できてしまう
「鋼をも切り裂く爪牙を封印し、手に持つ盾とメイスで戦う異色の竜人! 赤き鱗のド・イジュン!!」
赤い鱗をした竜人がメイスを振り上げる。
爪と牙を使わない竜人か……初めて見る。
竜人は武器を使わないとまで言われているし、実際俺も見たことがなかった。
その理由は明白だ。
何せ並みの武器より竜人の爪と牙の方が鋭い。
そんな竜人が武器を使うなんて……あれか?縛りプレイとかか?
「白面金毛の狐族、女だてらに武術使い!クオン・ヘレオット!!」
お、クオンだ。
紹介されたクオンは懐から札を取り出し、それを空中高く放り投げた。
「朧花火!」
クオンが叫ぶと同時に札が破裂し、光を放った。
赤、黄色緑に青、様々な光が弾けて消える。それはまさに花火だった。
なんと言う演出家。流石はジャンの知り合い。
興奮する観客にクオンは手を振った。
こんな感じで紹介は進み、何人か選手を紹介して行くウサギちゃん。
「王家クレストリアからの刺客! 性別と騎士であること以外あらゆる事が不明!武器は剣?槍?それとも魔法を使うのか?顔を兜で隠すなぞだらけ騎士!リューネ・レンフェ!」
篭手と脛当、そしてフルフェイスの兜しか鎧を着てない黒のレオタードの女。
俺含め選手達の殆どが武器を装備した状態で闘技場に立っているのに、リューネと言う女は武器一つ付けていなかった。
例外的にイーブサルがいるが、あいつは素手の方が強いから仕方ない。
一体どう戦うのか……。
「謎なのは彼女だけじゃない! 白いコートに身を包むのは一体どんな選手なのか?選手登録名『白き審判者』!!」
うわああああああああ!!と、鳥肌がざわざわと全身を覆う。
く、くそっ、なんで見た目だけじゃなくて名前まで似てんだああ!?
「もう一人、こっちは少し有名か?つい先日、紙面を騒がせた謎の剣士、勇者と共に巨大な竜を屠ったと言う黒いコートに身を隠す、その男の名は『黒き執行者』!!」
うわああああああああ!!セットで扱われてるぅぅ!! そりゃあ見た目も名前も似てるから同類と思われてんだろうけど、俺三年前に卒業してるから!俺はもう中二病じゃないからああ!!
心の中で泣く俺を他所に選手紹介は続く。
「真紅の髪は王家の証!世界最強の拳法家が、世界最強の名も取りに来た!拳聖イーブサル・ドラ・グレゴリア・バランシェル!!」
イーブサルが両腕を振り上げる。
女性客の声援が目立つ。
……イケメン死すべし、慈悲はない。
全部で十一人、これで選手紹介は後一人となったわけだが……
「みなさま、長らくお待たせしました」
その言葉とともに、シン……と会場が静まり返った。
「手にする武器は六つの剣、手にした証は王者の印、魔装演武、四年連続優勝者! 付いた二つ名は、修羅道のザッパあああぁぁっっ!!」
腰や肩、身体中に付けていた鞘から剣を抜き放つ。
それぞれが違う形をしていて、それぞれが美しかった。
恐らく魔剣だろうその六つの剣は、陽光を浴びてギラギラと光り輝いた。
轟!!
歓声が爆発する。おかげで耳がキーンとなってしまった。
あ、クオンの野郎、耳だけ器用に閉じてやがる。
……しかしただ者じゃねぇとは思ってたが、まさか優勝者とは。しかも四年連続の。
ザッパは六つの剣をクルクルと回しながら華麗に鞘に収めて行く。
「以上選手十二名でした! みなさま拍手~!」
暖かい拍手が俺達に注がれる。
だが、俺達選手の間には冷たい殺気が飛び交っていた。
「今すぐにでも殺り合おう」
とでも言う雰囲気が俺達を包んでいた。
お待たせしました、最新話です。
フェスも終わった事だしゲームから更新をメインに移していきたいです。
オリハルコン、初めて知ったのはドラ○エ3でした。
ではまた次回。お楽しみに




