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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
自由都市ガラリエ編
140/192

舌戦、視殺戦

 「……ふむ、良い茶だ」

ガラリエの領主、ズィーク・オイサーストの館にアポ無し訪問をぶちかましてくれたシルヴィアが来客用に出された紅茶を飲み一言、そう言った。

 いや、すごい良い絵になってるけど、突撃隣の晩御飯並の突然さで押しかけた割りに態度デカクないかい?

「俺は酒の方が良いんだがな。ま、我慢するか」

お前に関してはもう態度とかそう言うレベルじゃないなイーブサル。厚かましいわボケ!

「お前も座ったらどうだ、勇」

来賓客用に用意された部屋には見るからに高そうな家具や調度品の数々が並べられていた。シルヴィアとイーブサルも、高そうなソファに腰掛けていた。

「悪いな、俺は自分の服より高そうな椅子には座らない事にしてんだ」

今決めた。

「ふん。そう言うくだらないことばかりスラスラと口から出しよって」

ジト目なシルヴィアが俺を睨む。が、怖くないので無意味だ。むしろ拗ねてる感じが萌えだ。


「しかしシルヴィア、今回は随分と無理をしたな。そんなに慌てて会わなきゃいけないのか?」

 俺が問うと、シルヴィアは足を組み直した。

 「ズィーク・オイサースト、だっけか? 確かに領主ならこの街に海翔……勇者達の居場所がわかるだろうさ。……けど、そんな理由だけでお前が『権力』を持ち出すには到底思えないんだが……」


 シルヴィア・ロート・シェリオット・リーゼリオン。

 誰よりも誇り高く姫騎士と呼ばれた彼女は、『権力』を振るう事を嫌う所がある。

 シルヴィアが憧れていた姉であるオリヴィアが権力とは結びつかないような穏和な性格だったのも大きいが、彼女自身が権力よりも剣を振るっている方を好んでいるからだ。

 王族ではなく一介の騎士としてありたい。そう思うような女なのだ。


 だから権力と言う強硬手段を用いて無理やり領館に乗り込んだシルヴィアに驚いたのだ。

 「……大した理由ではない」

 そう言ってシルヴィアはまた紅茶のカップに口を運ぶ。

 「大したってお前──」

 何かを隠すような態度に追及しようとするが、イーブサルにそれを止められた。 

 「王は孤独なり、ってな」

 紅茶をあおるように飲み干したイーブサルがニヤリと不敵に笑う。

 「どう言う意味だよ」

 尋ねるとイーブサルはカップを置いた。

 「リーゼリオンはこの大陸でバランシェルと並ぶ二大大国だ。そしてシルヴィアはリーゼリオンの女帝。……ガラリエなんて弱小国に舐められるわけにはいかねぇんだよ、ユウ」

 諭すような口調のイーブサル。それでようやく得心がいった。

 つまりだ、招待しておいて二日も放置させるのは大国の主に対して大変無礼。

 そんな事は外交問題に発展しかねないわけだ。


 「だからこっちも《・・・・》無礼を働いてチャラにする……ってわけか」

 「正解。そして更に言うなら、「チャラにしてやった」と言う貸しも与えられるってわけだ」

 ほぇー、シルヴィアったらそんな事まで考えてたのか。

 なんと言うか、女帝が板について来た、って感じだな。

 「余計な事を……」

 シルヴィアが鋭い視線をイーブサルに向ける。対してイーブサルは睨まれていながら余裕そうな笑みを浮かべる。 

一国の王にこんな態度でいられる辺りイーブサルの心臓には毛が生えているのだろうか。



「ん?」


コツコツと、一定の間隔で床を蹴る靴音が俺の耳に届いた。


「来たようだな」

シルヴィアがカップをテーブルに置くのと同時に、部屋の扉が開いた。



 「お待たせして申し訳ない、陛下」

部屋に入って来たのは三十代くらいの長身の男だった。くすんだ黒色の髪に紫色(アメジスト)の瞳。

シャツにズボン、そしてシャツの上にベストを一枚と動きやすそうな服装をしていた。


「構わない。こちらこそ突然の訪問、卿に迷惑をかけた」

申し訳なさそうに謝罪する男に、シルヴィアは立ち上がり声を硬くさせながら答える。なるほど、これが外向きのシルヴィアか。

「何を。陛下をご招待しておきながら御身に足を運ばせさせるこの始末……」

「良い。卿の忙しさも理解しているつもりだ」

「ありがたき幸せ」


そう言ってシルヴィアと領主の男はソファに腰を掛けた。


「さて卿よ、話は変わるが構わんか?」

謝罪合戦は終わりとばかりに数段トーンを落とした声でシルヴィアが尋ねると、つい一瞬前まで眉を八の字にしていた領主の男が、鋭い視線をシルヴィアに向ける。

「構いませんが……その前に、お連れの方の事を聞いても?」

チラと俺とイーブサルを見る領主。その鋭い視線が俺に向けられた一瞬、


「のわっ! オイオイ突然どうしたよ坊主!」

「!? ……」

俺は異次元バックから魔剣を取り出し、鞘から魔剣を抜きかけていた。

まるで鷹を思わせる目に込められた殺気を向けられ、身体が勝手に反応したのだ。

「ほぅ……注視すべきは皇太子ではなくその黒衣の男、と言うわけですか」

口元を吊り上げ、領主の男が苦笑する。

「あまりからかわないでくれると助かる。私も、卿と事を構える気はない」

「でしょうな。……君があの戦場にいた『黒き(ダークネス)執行者(エクセキューショナー)』か。なるほど、名は体を表すと言うが殺気無く殺されかける体験は初めてだ」

男は苦笑しながらを首を撫でて、俺から視線を逸らしイーブサルに向けた。


「バランシェルの皇太子殿下がリーゼリオンの皇帝と共に現れるとは、流石に想定できませんな」

「ハハ、それは俺もだ。まぁ今回が特別さ。今回は共通の知人の下に集った形だからな」

「ほぅ……」

「……」

領主の男と、また視線が重なる。今度は殺気はなく、俺を量るような視線だけだ。


「単刀直入に聞こう、オイサースト卿。今代の勇者の場所を教えて欲しい」

話が逸れかけたからかシルヴィアが会話をぶった切って用件を伝える。それを受け、領主の男が眉を顰めた。

「確かに知り得てはいる。がしかし、それを教えてなんとする? それに教えずとも、私が場を用意すれば良い」

「間を挟む程の話でもない……と言って頷くわけもないか。正直に答えよう。卿に間に立たれたくない」

「それでは、勇者一行の宿泊地を教え、尚且つ合間に立つな、と? それは随分と一方的ではありませんかな?」

シルヴィアと領主の間にある空気が凍りついたと錯覚ほどに冷たくなる。それをみてニヤケいられるイーブサルの図太さが今の俺に欲しい。

つかマジなんなんだよこの中年のおっさんは。殺気は出すは切れたシルヴィアとは舌戦するは……これが十年戦争を生き抜いた英雄の力かよ。

「何が言いたい。いや、何が欲しい?」

「大したものではありません。……そうですな、ちょうど一人魔装演武への出場選手が足りない所でした。その選手の補充をそこの『黒き執行者』に務めて貰えれば、情報の一つや二つ、喜んで支払いますよ」


領主は鷹の目で俺を見て、小さく笑った。


お待たせしました。そして申し訳ありません。やっぱり大会に主人公参加します。え?知ってた?そうですか。

さて、今回新たに登場した新キャラ、ズィーク・オイサーストですが、このキャラが登場した暁には一つ、皆さんに言わなければならないと思っていた事があります。




……cvは池田秀一さん確定で(笑)


ではまた次回。皆様、良いお年を~

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