彼女らにとっての
ベルナデットはヤシロ・ユウにとってどんな人物なのか。
その問いに対し、ベルナデットは間を置く事なく答えた。
「味方です」
ベ・イオで彼の過去を知った時から、ベルナデットは勇の味方であろうと誓った。(変態行動を許すわけじゃないが)
ベルナデットが答えると、フィオナは指を杖のように軽く振り無音の魔法を発動した。周囲の音が消え去り、フィオナとベルナデット二人の呼吸音だけが世界に響く。
「……勇の正体は知ってるのよね?」
「三年前に聖女様達と世界を救った勇者……ですよね?」
「ええ、そうよ。……貴女、教団の信者の筈よね?」
当然の問いだ。ベルナデットの属する神聖ウルキオラ教団は先代の勇者である勇を聖女を見殺しにした神敵扱いしているからだ。
「ええ。我らが父なるウルキオラ神に仕える修道女です」
そう言った途端、殺気にも似た怒気が、フィオナから膨れ上がったのをベルナデットは感じた。
「……ならなんで貴女は勇の味方なのよ。少なくとも今、教団は勇の敵の筈じゃない。世間に疎い私でも知ってるわ。恩を仇で返す行為……アレが人間のやり方でしょ?……吐き気がしたわ」
静かに、淡々と話すフィオナの言葉からは明らかに棘を感じる。苛立ちを隠そうともしない。
「……私も、最初はヤシロさんを暗殺するつもりでした。聖女様を見殺しにした悪……それが今教団の掲げる勇者像ですから」
「……ならなんで」
「聖女様……いいえ、オリヴィアさんの事を、聞いたんです」
「!!」
フィオナが、大きく目を見開いた。口を開け、心底驚いたような表情だ。いや、驚いたのだろう。勇が、そこまで話していたのかと。
「ヤシロさんが神敵でないと知った。だから、私はヤシロさんの味方です」
真っ直ぐに向けられた視線に、フィオナは唇を噛みしめた。
◇
「修羅場……なのかい?」
「多分、そうなんだと思うけど……」
「魔法のせいでちっとも聞こえないぜ」
俺達に聞かれたくないのか突然無音を張ったフィオナ。険悪な雰囲気なのはわかるが、何を話しているかは、全くわからない。
「ヤシロのアニキは読唇術ってのは使えないの?」
「やろうと思えばできるけど無理だ」
「できるけど無理? なんかのとんちか何かかい?」
「女の子の唇見てるとムラムラする」
「アンタって奴は……ちなみに男のは?」
「誰が悲しくて男の唇なんぞ凝視せなあかんのだ。拒否だ拒否」
「ぶっとんでんなぁ、流石ヤシロのアニキ」
などと雑談していると、霧が晴れたような感覚を覚えた。どうやら無音の魔法が解かれたらしい。
「……気に食わないわね」
重苦しい雰囲気を更に重くするような、無音の魔法を解いたフィオナの第一声だ。
「気に食わないって……」
「貴女も……勇もよ」
吐き捨てるような言葉とともに俺とベルナデットを睨むフィオナ。……なんだか、様子が変だ。
「おいおいフィオナ、一体どうし――」
「うるさい!!」
敵意の込められた視線、なによりも、声を荒げるような事をしないフィオナが叫んだ事に驚き、俺は伸ばしかけた手を止めてしまった。
「勝手に消えて! 勝手に戻って来て!! 使命から目を背けて! 自分ばかり安穏と生きて! ……オリヴィが死んでしまったと言うのに、新しい女なんて作ってへらへら笑って!! ………貴方なんて私の知ってる勇じゃないわ!!」
かつて旅をした仲間から、俺はまるで親の仇を見るように睨まれたのだった。
◇
フィオナ。
森の民と呼ばれ人間嫌いで有名なエルフでありながら人間の国家『リーゼリオン』の宮廷魔導師となった傑物。
フィオナ自身も人間を嫌っているのだが、リーゼリオンの皇女姉妹、オリヴィア、シルヴィア。そしてアリシアにだけは甘く、魔王討伐の旅にもオリヴィアとシルヴィアを心配しついて来たのだ。
彼女と三姉妹は、オリヴィアらが生まれた頃からの付き合いで「母のようで姉妹のような親友」とはシルヴィア談だ。
三姉妹の名を愛称で呼ぶのはフィオナだけだった。(フィオナが許さなかった)
そんなフィオナだから、オリヴィアを忘れて旅なんてしてるように見える俺を許せなかったんだろう。
しかし――、
かつての仲間と言えど触れてはいけない場所がある。
「オリヴィアは死んでねぇ。間違えんじゃねぇよ、フィオナ」
お待たせしましたー修羅場最新話です。
ちなみに、シリアスな会話してますがみんな水着です。
ではまた次回。お楽しみにー




