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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
孤島の大迷宮ノルドヨルド編
114/192

二十一階層

「あ、あははははー……そ、そう言えば黒毛の、アンタ三年前と比べて随分男前になったねぇ、見違えたよー」


「何も無かったみたいな空気にするのはやめろ。そしてそう言うのは再会したその時に言ってくれ」


汗をダクダクと流しながら話を切り替えようとするアンジェリカに呆れて思わずツッコミを入れてしまう俺。

だって哀れ過ぎると言うかなんと言うか、口を出さずには居られないというか……。


「く、くそぅ……なら仕方ない。取引と行こうじゃあないか」

「ほんと仕方ない奴だよ。取引も何も飛空艇の中身見せてくれりゃあ済む話だったのに」

「くっ、くぅ……っ」


ぐぬぬと悔しそうに俺を睨むアンジェリカ。墓穴掘った上に自分で自分の首を絞める始末。

お前ら三人纏めて海賊稼業には向いてないと思うぞ?


「目当ての物は手に入れたんでしょ? なら次の階に行くわよ」


「次の階って…ここまでほぼ休みなしで来たんだ。一息つけないか?」


この階に来るまで俺達は休息することなく進んで来た。クオンやベルナデットもまだ体力的に大丈夫なようだが戦い詰めだ。戦い続けると言うことは精神にクル。

良く見ればフィオナの目の隈も心なしか最初の頃より濃く見える。


「一息つくにしてもこんな場所じゃ無理よ。……次の階でなら野営もできるわ」


そう言って説明も面倒になったらしいフィオナが手渡して来た攻略本を開くと、次の階である二十一階からの特徴が書かれていた。


「何々? 二十一階から三十階にかけて階層の八割以上が水に沈んで……おいどういう事だコレ」


「どういう事も何もその通りよ」


「その通りって、え、大丈夫なの?残り二割でちゃんと進めるの?」


「うるさいわね……自分の目で確かめれば良いじゃない」


「行き当たりばったりが嫌だから確認しようとしてんだよこの貧乳!」


「どうやら死にたいみたいね勇」


「あ、ごめんなさい。お願いだから矢尻に毒塗るのはやめてください」


思わず出てしまった俺の言葉に静かにブチ切れるフィオナ。懐から取り出した小瓶はどす黒い色の液体、フィオナ特製の麻痺毒だ。

そう言えばシルヴィア以上に胸の事は禁句だった。


「っ、暑くなって来たな。……ヤシロのアニキ、休むにしてもとりあえず進んだ方がいいと思ぜ」


「ナイス。ナイス提案だクオン。流石俺の弟子」


「よせやいアニキ。照れるぜ」


これで胸の話題はうやむやにできる。ナイスフォローだクオン!


「水ばっかの階か。アタシの『ブラック・ローズ号』さえあればねぇ」


そりゃあ船はあれば嬉しいがどうやってここまで運んでくるつもりだ。俺か?俺に運ばせるつもりなのか?

俺が溜息をついていると、ベルナデットがうんうんと唸り始めた。


「? どうしたよ」


「んー……あまり水には濡れたくはなーと思いまして。替えの服も一つしかないですし」


確かにな。俺も今着てる子供用の服とぶかぶかになってしまったぬののふくしかない。一度濡れたらそのままになるぞ。


「シスターの姉ちゃん、濡れても動いてりゃ乾くんじゃねぇか?」


「いやいや、ダメですよ。風邪ひいちゃいますって」


クオンの男らしい言葉に苦笑するベルナデットだが、俺はクオンの言葉にある引っ掛かりを感じた。

俺の脳内が、クオンの言葉に呼応し何か答えを導き出そうと動き始める。


「どうしたんだい、黒毛?」


「……海賊さん、そのヤシロさんの『黒毛』って呼び方やめていただけません? 私も頭髪は黒なので気安く言われているようで少し嫌です」


「って言われてもねぇ。アタシは前から言ってた訳だし、アンタが諦めな」


「そもそも人の事をそんな風に呼ぶこと自体が間違ってると思うんですが!」


「いいじゃないか、本人が特に否定してないんだし」


「ですから、私が嫌なんですってば!」


周りが喧しい。集中力が削がれるのを感じ、否応にも苛立ちを覚える。

それに加え冷気の魔法が切れ掛けているのか、段々と暑さを感じる。

そして――、


(暑い?……この肌を焦がすような熱気……そうか!!)


俺は追い求めた答えに辿りついた。


◇


ノルドヨルド大迷宮、二十一階層。

そこにたどり着いた勇達は、皆一斉に口を噤んだ。


いや、その一瞬だけ声の出し方を忘れたのだ。それほどの衝撃を味わったのだ。


「なぁおい、フィオナ……なんだよ、此処は」


「何って、見ての通りよ」


「見ての通りって……此処は地下なんだよな?」


「ええ。降下型の迷宮だもの」


「なら……なんで地下に日の光があるんだよっ!」


勇達の目の前に広がったのは天井から降り注ぐ光に照らされた、巨大な遺跡だった。


お待たせしました。最新話です。


一日一話投稿なんて無理っす。



ではまた次回。お楽しみにー







唐突な自慢話になりますが、先日『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』の桂かすがさんから、なんとニトロワ第一巻の直筆サイン本を頂ました!


こいつぁ永久保存版だぜ。




ついったー始めました。  @Sendai_yuusha

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水遊び回って、コトォ!?
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