表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 風矢
PR
7/7

いつもとは違う風景



 夢には終わりはないと言う人がいる。


 夢には終わりは付き物だと言う人がいる。


 もしも終わりがあるのなら夢は消えてしまうのだろうか。


 もしも終わりがないのなら辿り着く先はどこだろうか。


 ただ、今は夢を楽しみたい。




 今日も病室から外を眺める。


 外を流れる風景はいつも同じ。


 退屈…


 たまには外で思いっきり遊んでみたいのに、看護婦さんは許してくれない。


 前はよくお見舞いに来てくれていた友人達も今では誰一人来ない。


 いつもいつも同じ風景を眺めて、そして寝るだけ。


 私がまだ元気だった頃に見た風景は変わっているだろうか。


 それを確かめることさえ出来ない。


 もう外を眺めるのにも飽きてきた。


 まだ日も高いというのにまるですることもない。


 一応院内であれば自由に出歩けるのが唯一の救いだった。


 なんで私だけこんなところに閉じ込められているのだろう。


 私はこんなにも元気なのに。


 他のみんなは外で楽しそうに遊んでいるのに。


 最初に入院した時はすぐに退院出来るはずだった。


 長くても1週間。


 そうお医者さんは言っていた。


 気がつくともう同じ季節を2回繰り返していた。


 そういえばこの間病名を聞いた記憶がある。


 やけに長くて覚えられなかったけど。


 それにしても暇。


 ちょっと早いけどいつもの散歩に出かけよう。


 今日も…また同じ風景しか見ることは出来ないんだろうか。


「蒼様ーーーーーっ!」


 病室から出た途端誰かの声が廊下に響く。


「ああっ、蒼様がご病気になってしまわれるなんてっ!でも、大丈夫っ!この里美が今すぐお側に参りますよーっ!」


 目の前を綺麗な女の人が駆け抜ける。


 髪も長く、さらさらしていて羨ましい。


 ずっと入院していて艶もなくなってしまっている私の髪とはえらい違いだ。


 その人は途中人にぶつかったり、看護婦さんに怒られたりしながら上の階へ駆けて行った。


 騒がしい人だったな。


 そう思いながらとりあえず中庭へと足を進める。


 毎日来る中庭。


 そこにひとつだけいつもと違う風景。


 真ん中にぽつんと一人佇む少女。


 さっき見かけた人と違って可愛らしい感じだ。


 その子は何をするでもなく、ただそこに佇む。


 何故か声をかけるのも躊躇われた。


 ふとその子が私に気づく。


「誰…?」


 抑揚のない声で語りかけられて少し焦る。


「あ、あの…すいません。私は、その…柳川やながわ 歩美あゆみって言います。邪魔するつもりはなかったんですけど…。」


 その子はそうと興味なさげに呟きながらまた空へと目を向ける。


「蒼様ーーーーーっ!」


 その時、さっき聞いたのと同じ声が中庭に響いた。


「こんなところにいらっしゃったんですか、探しましたよ~っ。って、あれ?この子蒼様のお友達ですか?」


 さっきの女の人(里美って名前らしい)が私の方を向いて話す。


 そんなものかなと蒼様と呼ばれた人が呟く。


 気がつけばかすかに微笑んでいる自分がいた。


 これほど楽しい気分になれたのはいつ以来だろう。


 神よ…この二人に出会えたことを感謝します。


 願わくば…またこの二人と出会わせてください。


 私に明日をください。


 そしてその明日がずっと続きますように…




 夢を見た。


 幸せな夢。


 目覚めた時、それが現実だったらいいのにと泣いた。


 でも、現実で友達と会えばまた夢を見ることが出来る。


 その現実の夢までは…


 覚めませんように…


 END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ