第9話 vs炎鳥の騎士団
前回のあらすじ
炎鳥の騎士団に連れ去られたエリザを助けるため顔を隠すフードを購入して、ギルドハウスに侵入した俺とメルティア。
エリザを見つけるところまでは順調に進めたのだが、炎鳥の騎士団のギルドマスター、バーンフレイム。ギルドメンバーのレン、クレイジーパレットに見つかってしまう。
真夜中の<ギルドバトル>が始まろうとしていた。
ギルド名<保留>
vs
炎鳥の騎士団
「皆には、まだ連絡がつかないの?レン」
ナイフを手で遊ばせながらクレイジーパレットがそう聞いた。
「私たち以外のメンバーは全員、寝てしまっているようですね。彼らはそれを狙ったのかもしれませんが…」
大弓を持つレンは会話する際もこちらを視界から一度も外さなかった。
「ご明察…。行くぞ<お嬢>!」
「分かりましてよ!<おじさん>!
フードの男は、シングルアクションライフルを空間に展開した。
フードの女も大盾を背中から下ろした。
フードの人物達は後ろに隠れているゴブリンを守るように陣を組んだ。
レン
「システムバックからの装備展開…。君、本当にNPC?」
クレイジーパレット
「でも女の方は担いでたよ!面白い!面白い!」
フードの男
「…それは良かったな!おらよ!」
1秒のかからず、フードの男はクレイジーパレットの頭を撃ち抜いた。
「あ、あが…」
生命力 32%
レン
「ただでさえ威力の高い単発銃のヘッドショットですか。クレイジーパレット!撹乱しなさい」
クレイジーパレット
「おうよ!<高速移動><ジャンピングフロッガー>
レンの指示でクレイジーパレットはスキル「高速移動」でスピードを加速。
「ジャンピングフロッガー」によって壁や天井を飛び跳ねた。
部屋の中をクレイジーパレットが跳ね回る。
クレイジーパレット
「へへへ!これならお前の攻撃は当たらない!それにヘッドショットさえ当たらなければ大した威力では無いだろう!」
フードの女
「コ…おじさん、早すぎて見えませんわ!」
フードの男
「お嬢問題ない!そのまま守っててくれ!」
フードの男はそう言うとフードの女が持つ大盾に銃を乗せながらスコープを除いた。そして
ドン!
銃声と共にクレイジーパレットの動きが止まる。
レン
「まさか…あの状況でヘッドショットを撃ち込んだと言うのか…!」
クレイジーパレット
「あが…レア…イベ…ント…!」
生命力 0%
クレイジーパレットの体力は0になり、強制ログアウト。現実世界へと送還された。
<強制ログアウト>
冒険者がなんらかの形で体力が尽きた時にログアウトされるsttela onlineの仕様。強制ログアウトされたプレイヤーは再度ログインするまでに1時間待たなければならない。
レン
「…思ってたより相当やるね」
バーンフレイム
「問題無い。レン、お前が攻撃をしろ。俺が銃使いの攻撃を防ごう」
レン
「はいはい…」
フードの男
「このまま終わらせるぞ」
フードの女
「えぇ!」
レンが大弓を構え、フードの男へと矢を放った。
放たれた矢は一直線にフードの男の頭部に飛んでいく。
フードの女が大盾を構え、矢を横から弾き飛ばした。
その直後、盾の陰からライフルの銃口が顔を出した。
ドン!
銃弾はレンへと一直線に飛んでいく。
その射線に割り込んだのはバーンフレイムだ。
バーンフレイムは盾で銃弾の起動を変えた。
盾vs盾、弓vs銃の戦いは一進一退を繰り返し、戦いが始まってから50分が経過しようとしていた。
50分に渡る激闘の末、バーンフレイムは片腕をレンは片腕と片足を飛ばされていた。
バーンフレイム生命力 5%
フードの男と女は辛うじて致命傷を避けていた。
レン
「…ギルマス、自分はここまでのようです」
バーンフレイム
「分かった、後は任せるがいい」
レン
「クレパレがもうすぐ帰ります。それまで耐えて…くださ…」
レン生命力 0%
レンは強制ログアウトとなり、残りはギルドマスター、バーンフレイム1人となった。
フードの男
「よし!あとちょっとだ!もう少し頑張るぞ!」
フードの女
「えぇ!望むところですわ!」
レンがログアウトしたのを見届けた後、バーンフレイムは自身の剣を鞘から抜いた。
バーンフレイム
「レンはあぁ言ったがな…」
バーンフレイムは珍しく自分から口を開いた。
バーンフレイム
「俺は今、お前たちに驚いている。感心している。戦う中で興味も出てきたくらいだ」
バーンフレイムはそう言って、システムバックから豪華な椅子を展開した。
そのまま椅子に腰を掛ける。
バーンフレイム
「先ほどは問答を中断し、半ば強引に戦いになった訳だが。お前たちはそこにいるゴブリンのためにやって来たのだったな」
バーンフレイムは肘をついて、話を続ける。
バーンフレイム
「ギルドの仲間も含めて誰にも口外はしない。だから教えてくれないか。お前たちは何者か」
フードの男
「…本当に、誰にも言わないのか?」
バーンフレイム
「漢に二言は、無い」
フードの男
「………」
フードの男は、少し躊躇った様子を見せた後こう言った。
フードの男
「俺・・・・・・だ。」
バーンフレイム
「っ!?…そんな事を、信じろと言うのか」
フードの男
「…あぁ」
部屋の中を静寂が支配する。
バーンフレイム
「………くく。くくくく。くははははは!」
バーンフレイムは静かに、そして段々と大きな声で笑い始めた。
バーンフレイム
「信じられるかそんな事!俺を馬鹿にしたかったのか!?その行い、この技で後悔させてやる!うおおおおおおお!」
バーンフレイムの件に炎が宿り、部屋全体を包み込むほどの巨大な炎がバーンフレイムを包み込んだ。
バーンフレイム
「もしお前の言う事が本当ならば!今!俺の前にいるお前の命は紛れなく本物だと言う事だ!さすれば!死ぬ気でこの攻撃を防いで見せるがいい!」
バーンフレイムは剣を力強く握り、巨大な炎球ごと振り下ろした。
バーンフレイム
「死鳥…!冥楼斬!」
フードの女
「止めて見せますわあああああ!!!」
フードの男
「うおおおおおおおおおお!!!
炎撃と大盾の激突。
部屋が壊れるほどの衝撃が長く続いた。
炎が燃え尽きた後、勝敗は決していた。
フードの男の放った弾丸はバーンフレイムの頭部を撃ち抜いた。
しかし、バーンフレイムの体力を削り切るにはわずかに足りず。
バーンフレイム生命力 1%
バーンフレイム
「俺の勝ちだな」
バーンフレイムの燃える剣が大盾を貫き、その後ろに隠れていたコウヘイのライフルまでも叩き割っていた。
フードの男
「…くそっ!」
フードの女
「そんな…」
バーンフレイムの最大の一撃により、勝敗は決した。3者がそう思ったその時
エリザ
「えーーーーい!」
俺たちの間で隠れていたエリザが壊れた柱の断片を持って、バーンフレイムに叩きつけたのだ。
バーンフレイムの生命力 1%→0%
バーンフレイム
「なんと!………見事だ」
バーンフレイムの体力は尽き、強制ログアウトとなった。
コウヘイ&メルティア
「…エリザ!」
俺たちは立ち尽くすエリザに駆け寄った。
エリザは振り返り、満面の笑みでこう言った。
エリザ
「コウヘイ、メルティア!私も戦う!だから私を仲間に入れて!」
こうして、俺たちは炎鳥の騎士団のギルドハウスを侵入(半壊)し、ギルドに新しいメンバー、剣士のエリザが仲間に加わったのだった。
◇
1時間後。
レン
「あっ!ギルマスやっと戻りましたね!」
炎鳥の騎士団ギルドハウスに3名のメンバーが集まっていた。
クレイジーパレット
「イベントは逃げ、ギルドは半壊」
レン
「こんな盛大にやられてもうて、腹の虫が治りません!ギルマス今度はメンバー引き連れて復讐しに…」
バーンフレイム
「…いい」
バーンフレイムはいつものように小さな声でそう言った。
レン
「いいって!?この惨状のどこがいいんですの!まさか、あのフード達になんか言われたんとちゃいますか!?」
クレイジーパレット
「曲げず嫌いのマスター…。珍しい」
バーンフレイムはどこか上の空で、星空がよく見えるようになった天井を見上げていた。
バーンフレイム
「…嫌、何も」
ガルディオンの街はいつもより騒がしく、次の朝を迎えていく。
どこかのギルドマスターは、昨日の出来事を思い出して
「まさかな」と少し笑った。
◇
ガルディオンの街近く。
ボルライト渓谷の山道で少女の声が響いていた。
エリザ
「えぇ〜!?ギルドの名前<保留>なのぉ〜!?」
コウヘイ
「あぁ〜作った時に、特に思いつかなかったからそのままで」
メルティア
「…そうそう!ずっと忘れてというか〜…」
エリザ
「し、信じらんない!」
エリザは顔を赤らめて、そっぽを向いてしまった。
コウヘイ
「まぁまぁまぁ…そぉだ!この際エリザがギルドの名前をつけてくれないか?」
メルティア
「ちょっと!面倒ごとをエリザに押し付けないでくださいまし!」
コウヘイ
「えぇ〜…。でもたしかにそうかぁ」
エリザ
「………がいい」
コウヘイ&メルティア
「ん?」
エリザ
「七戒ノ反逆者!私が好きな英雄の名前!」
コウヘイ
「おっそれっぽい。いいんじゃないの」
メルティア
「少し年頃の少年っぽさを感じますが…。いえ、ワタクシも異論ありませんわ!」
ギルド名<保留>改め<七戒ノ反逆者>は壊れた装備を抱えながら、ガルディオンの街を離れていくのだった。




