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夢図書館  作者: パン田
19/19

現実

1ヶ月後。


桜が散り始めた、4月の午後、俺は陽平、月原さくら、そして美咲と共に、病院のカフェで談笑していた。


大きな窓からは暖かい春の陽射しが差し込み、テーブルの上のコーヒーカップから立ち上る湯気が心地よかった。


美咲はすっかり元気になり、夢図書館での「仕事」を面白おかしく話している。


「でね、でね、お兄ちゃん!あそこにはね、すっごく変わった本がいっぱいあったの!人の名前が書いてある本とか、未来のことが書いてある本とか!」


「美咲、それは——」


「秘密なんでしょ?分かってるよ。でも、あの司書さん、とっても優しかったんだ」


さくらも徐々に体調が良くなっているらしく、穏やかな笑顔を浮かべていた。頬に薄っすらと赤みが差し、以前の生気が戻ってきている。


俺もさくらの様子を見に度々、病院にお見舞いに来ている。


「まさか、美咲の落書きで解決するとはな。悠馬が司書になる覚悟まで決めてたのに、拍子抜けだぜ」


陽平が笑いながら言う。俺も苦笑した。


「本当にそうだよ。でも、よかった。みんなで、こうして笑い合えるのが一番だ」


月原さくらが、俺の顔を見て静かに微笑んだ。


「悠馬、本当にありがとう。私のために、そこまで考えてくれて……。美咲ちゃんも、私を救ってくれて。みんなに感謝してもしきれないね」


「俺も手伝えてよかったよ。というか、もっと早く本のことに気が付いていればな……。こんな不思議な体験、一生忘れられないな」


陽平が感慨深そうに言った。


「あ、カラス」


美咲が急にカラスを指差した。木の上に一匹のカラスが止まっている。なぜか、俺たちを見つめているような、そんな気がする。


その烏は何か、光るものを咥えているように見えた。


俺はあれ以来、夢図書館に行けなくなった。というのも、いつの間にか栞がどこかに行ってしまっていたのだ。おそらく、もう俺には必要ないと判断されたのだろうか?


俺たちの未来は、もう分からない。誰も、今後何が起こるかは分からない。でも、それでいい。未来が見えないからこそ、毎日が新鮮で、希望に満ちている。


俺たちは、今を精一杯生きて、それぞれの未来を、自分たちの手で創り上げていく。


(完)

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