ネコ公園の支配者、降臨す
ナニーニとブータが、公園の中で対峙する。
はっきり言ってブータの方が圧倒的に大きい。ナニーニもふてぶてしさでは負けてないものの、体重の面では勝負にならない。体重が百キロにも満たない小兵の力士と、体重が二百キロを超える巨漢の力士が向かい合っているかのようだ。
それでも、<力士>の場合は体重差の不利を覆す<技>もあるだろうが、人間以外の動物の場合は、体重差はほぼ<力の差>に直結する。ましてや年老いて衰えたナニーニでは、俊敏な動きも望めないだろう。
なのに、ナニーニは引き下がろうとしない。
そこに、ゆっくりと歩いてきた千堂が。アリシアの隣に近付き、
「<危機対応モード>。もし、怪我をしそうであれば介入も認める」
すぐに状況を察して告げてくれた。
「はい……!」
アリシアは千堂の言葉に従い、危機対応モードを起動。事態に備えた。
「ナニーニ! やめなよ…!」
「勝てっこないよ!」
「ケガしちゃうよ…!」
コデットとかほりと結愛が遠巻きに声を掛けるものの、ナニーニとブータはにらみ合い、
「ああ~っ!」
「んあ~っ!」
声を上げ始めた。気を逆立て、背を逸らし、少しでも自分を大きく見せようと威嚇し、二匹の間で一気に緊張感が高まる。
「あああ~っ!!」
「んぎゃあ~っっ!!」
唸り声も大きく力が込められていく。耳を倒し、牙を剥き、殺意さえ感じる表情。猫は、小さくてもやはり<猛獣>なのだというのが分かる姿だった。
しかし、緊張感が今にも弾けそうになったその時、
「五月蠅い! ケンカすんじゃないよ!! うっとうしい!」
公園に満ちた緊張感を薙ぎ払うかのような怒声。瞬間、ナニーニとブータが、
「あっ!?」
「ぎゃっ!?」
声を上げてビクンッと反応、対峙していた状態から、怒声の方へと共に体の向きを変えた。その視線の先には、険しい貌をした女性。
公園の隣の家の女性だった。ナニーニとブータの威嚇し合う声を聞きつけて、家から出てきたのだろう。手には、二つの皿。
「餌ならやるから静かにおし! あんまりぎゃーぎゃー五月蠅いと保健所にしょっぴいてもらうからね!!」
女性は、その場にいるアリシアや千堂やコデットやかほりや結愛の存在など目にも入らないとばかりに、一喝する。
一喝しつつも、二匹の前に皿を置く。猫用の餌が盛られた皿を。
その様子を見て、アリシアは悟った。
『なるほど、<ネコ公園の支配者>は、ナニーニでもブータでもなくて、この女性だったんですね……!』
その通りだった。この女性こそが、ネコ公園の支配者であり秩序であったのだ。




