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千堂アリシア、守るために動くことを望む

猫のナニーニにとっては、人間同士の諍いなど、それこそ昆虫の縄張り争いと同じくらいにどうでもいいことだっただろう。


ただ、自分のいつもの巡回ルート上で大きな声を張り上げて騒いでるのは迷惑千万だっただろうが。


『お前ら、本当にウザい……』


とでも言いたげな視線と表情で人間達を見ていることに、アリシアもなんとも言えない気分になった。正直、ナニーニの方に共感してしまいそうになる。


けれど、ロボットであるアリシアは、人間を見捨てることはない。<火星史上最凶最悪のテロリスト、クグリ>に対しても、彼女は人間達のような憎しみの感情は抱いていない。ただ、


『どうしてそんなことになってしまうんだろう……』


と、悲しんでいるだけだ。


だからロボットは、人間に罪を重ねさせないように動くことがある。アリシアも、もし、大家の女性が刑事に対してこれ以上の暴力に訴えようとすれば、立ちはだかって止めようと考えていた。


それは、『刑事を守る』と言うよりも、


『女性に罪を犯させない』


という形で守るためである。理不尽な形で息子を亡くし、その上、自身も罪を犯し人生の晩節を汚すなど、あまりにも悲しすぎる。報復を願う気持ちもあって当然だとしても、それを実行するのは傷を広げるだけでしかない。なぜなら、女性の息子を死に追いやった者達は一人もここにいないのだから。


女性の息子に掛けられた虚偽の容疑について捜査した刑事はここにはいないのだ。直接関わった当時の刑事達は一人残らず、すでに退職している。今ここにいる刑事達は、事件とはまったく無関係なのである。


警察組織の人間だからといって<復讐の対象>と見做すのは、筋が違う。


<復讐>と呼ばれるものの多くは、往々にして無関係な人間までを標的として実行される。ゆえに固く禁じられているのだ。実際に、そういう形でこれまでにも無数の犠牲者を出してきている。何しろ、<テロ>の多くは、<報復>や<復讐>を目的として行われているのだから。


自分達の主義主張を訴えるために行われるものは、実際のテロのうちの何割かに過ぎない。表向きはそれを掲げつつも、その実、<報復>や<復讐>のために行われるテロが大半である。


『復讐が禁止されててもそんなこと関係なく実行してしまうくらいに精神的に追い詰められて苦しんでいるんだ!』


と、復讐を是とする者達は主張するが、確実に自身の復讐の対象のみにそれを実行できるような者はあくまで<冷静>であり、『分別を付けられている』のではないか? 冷静かつ分別を付けられる状態の者が、


『復讐が禁止されててもそんなこと関係なく実行してしまうくらいに精神的に追い詰められている』


と言えるのだろうか?


いずれにせよ、復讐を理由に無関係な者を巻き添えにしていい道理はないはずである。



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