千堂アリシア、すべての目的の完遂を目指す
しかし、和菓子店に向かうことにしたアリシアだったが、公共の地図情報が全く役に立たず、千堂京一の手書きの地図を頼りの移動は、やはり困難を極めた。
最初の地点まではすぐ戻れたものの、実は、千堂が渡した地図そのものが、若干、正確さを欠いたものだったのだ。
当然これも、試験のためのトラップである。わざと不正確な地図を渡し、いかに誤った情報をその場で補正しつつ目的を完遂するかという点を見るためのものだった。
とは言え、これはロボットにとってはいささかハードルの高い、少々、意地の悪いテストだった。このように、不正確な情報しかない状態では、ロボットは適切な対応ができず処理が滞ってしまい、待機状態に陥ってしまうのが一般的だった。
しかしこれ自体は、混乱したロボットが暴走状態にならないようにというセーフティであり、一般的なロボットの場合、そのセーフティが確実に働くのを確認するために敢えてそのようなことをするのだ。
もちろんアリシアの場合も、待機状態になったとしてもそれ自体が本来なら正常な反応なので別によかった。
けれどアリシアは、地図に書かれていない路地についても、目印となる散髪店や小さな電気店、菜園などの情報とすり合わせることで、ひとつひとつ補正していった。
これは人間であれば意識せず自然に行う者もいる行為。普通のロボットでは敢えてそこまでは行わないことも多い。対処できないとなればその場で主人に指示を仰ぎ、勝手な自己判断は行わないのも当然なのだ。
同時に、確実に補正できる情報があればそれを基に対処することもあるので、必ず待機状態になってしまうわけでもない。
ましてや、<都市としてのJAPAN-2>においては、ここのような特殊な事例を除けばほぼ完全な情報が提供されるので、そのようなことは滅多にない。
また、かつてアリシアが千堂と共に遭難した際にも、衛星からの情報が得られない中、天測によって位置を割り出し、街に向かって移動するということができた。
もっともそれについては、主人である千堂が傍にいたことで随時指示を受けられたからというのも大きいが。
加えて、砂漠のような場所に点在する集落では、逆に、ロボットに依存することも多いため、その辺りはいわば<生命線>であることから、何を置いてもまず整備されていたりする。
この<新京区>は、<都市としてのJAPAN-2>の中にあることにより住人達がロボットを使う分には大きな問題はなく、これも結局、余所者に我が物顔でうろつかれたくないという<地域の意向>が反映されたものなのであった。




