通りすがりの人間達、唖然とする
買い物そのものはその調子で何の問題もなかった。主人である千堂京一を伴わずの行動についても、何の問題もなかった。
人通りが増えればそれに伴って、人間に随伴している一般のロボットらとの<挨拶>も増えるものの、アリシアはそれも難なくこなしてみせる。特異な状態のロボットである彼女のことを不審がるロボットもいない。それだけアリシアが<普通のロボット>として振舞うことができているということだ。
ただ、彼女のことを<アリシアシリーズ>であることに気付いた人間達の多くは、
『ジャージ…?』
『なぜにジャージ……』
ショッピングバッグを抱えたジャージ姿の彼女を、唖然とした様子で目で追う者も少なくはなかった。ジャージ姿のメイトギアというのは、さすがに奇異に映ったようだ。その姿は、まさに、
『身なりにまったく無頓着な若い女性が、部屋着代わりの安ジャージのままでぶらりと買い物に出てきた』
以外にも何ものにも見えなかったわけで。しかも本当に人間ならともかく、ロボットでそれというのは。
なにしろ、わざわざジャージになど着替えさせなくても、標準仕様であればエプロンドレスを模した外装パーツを持つアリシアシリーズは、そのままで出歩いていても何も不思議はないからである。
別に、ジャージになど着替えさせる意味もない。社外品の外装パーツの中には、今、アリシアが身に着けているジャージとほぼ値段の変わらない安価なものさえある。にも拘らずジャージに着替えさせるとは、
『趣味が高度すぎて理解不能……』
『あのアリシアのオーナー、拗らせすぎだろ……』
などと思う者さえいる始末だった。事情を知らないなら無理もないが。アリシア自身が調子に乗ってしまってスーツのボトムを破ってしまったなど、普通は考えない。普通のアリシアシリーズはそんなことはしない。
そうやって人間達が自分を注視していることは、もちろん、アリシアも察していた。
『うう……』
いたたまれない気分になりながらも、アリシアは平静を装っていた。普通のロボットなら、こんなことでうろたえたりもしない。ここでうろたえて有り得ない挙動をすれば、他のロボット達に、
『暴走している』
と認識されかねないからだ。彼女自身の<所持金>であれば服を買い換えることも可能だったものの、無駄遣いもしたくない。となれば、我慢するしかない。
そんなこんなで<SHOP西條>での買い物を終えたアリシアは、その後、駅へと向かい、コインロッカーに荷物を入れ、時間を確認した。
しかしまだ、一時間以上は残っている、
『これなら先に、羊羹の方も買いにいけますね』
そう考えて、和菓子店に向かうことにしたのだった。




