千堂アリシア、桜井コデットの優しさを胸に刻む
『食品を無駄にする』
ことに嫌悪感を持つ者は少なくないものの、その一方で、スーパーやコンビニには常に必ず食品が確保され、そのうちの何割かは人間の口に入ることなく廃棄されるのも現実である。
食品を保存する技術も進歩し、<刺身>ですら専用のパックが施されたものであれば常温で数ヶ月の保存も可能なものの、いわゆる<お惣菜>の類は、長期保存を前提とせず、精々、十数時間の間に消費するのを目的としていることで、<消費期限>が過ぎれば即廃棄されるのだ。
そんな生活を営みながら、ジュース一本のことに目くじらを立てるというのもさすがにダブルスタンダードが過ぎるのではないだろうか?
ましてや、食品として消費されなかったものでも、しっかりと資源としては活かされるのだから。
などというのは余談なので脇に置き、
「もう大丈夫?」
と問い掛けてくるコデットに、アリシアは、
「はい、ありがとうございます」
輝くような満面の笑顔で返した。
ロボットである自分を気遣ってくれる彼女の優しさが嬉しくて。
確かにロボットは<道具>でしかない。人間に気遣ってもらえなくても、ロボットはそれを悲しんだりもしない。しかしその一方で、幼く、人間とロボットの境界がまだまだ曖昧であろうコデットが、大人と同等の割り切りを見せるというのも、それはそれでいささか『早熟が過ぎる』というものかもしれない。
彼女くらいの年頃であれば、むしろ、人間そっくりに作られたメイトギアに人間としての感覚を投影してしまうくらいの方が健全なのだろう。
それを確認するために活かされたのであれば、アリシアが飲み干したオレンジジュースも無駄にはならないと思われる。
そういう意味でも、アリシアは安堵していた。コデットの健やかさを改めて実感できて。
『本当に、よい環境に恵まれたのですね』
<あちらのコデット>は、物心が付いた頃には<盗賊の一味>だったこともあって、他者を傷付けることさえ自身が持つ<当然の権利>と考えている節があった。
けれどそれは、同時に、
『自身の命さえ他者から奪われても仕方ない』
という意味をはらむ考え方でもある。
自分を蔑ろにされたくないのであれば、他人も蔑ろにしてはいけないのだから。
そのような考え方を徹底的に否定するために、ロボットは存在する。人間が傷付けられることのないように、ロボットが間に入るのだ。
確かに、ロボットを守るために人間を疎かにしていたのでは本末転倒以外の何物でもないものの、そういう部分については、これから経験を積むことでわきまえていけばいいのだろう。




