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桜井コデット、迷路のような街を突き進む

自身が触法行為をしておきながら、法律上は何の問題もないコデットを怒鳴りつけるという、好ましくない行為を見せる住人の振る舞いにも、思わず苦笑いは浮かべつつ、アリシアは、気分が高揚するのを感じていた。


楽しい。そう、楽しいのだ。些細なことなど気にならないくらいに。


試験の途中だけれども、その試験も、どうしても合格しなければいけないというほどのものでもない。合格できれば千堂の付き添いなくどこにでも行けるようになるというだけのものでしかないので、そもそも千堂と別々に行動したいとは思っていないアリシアにとっては、実はさほど価値のある試験でもなかった。


とはいえ、主人である千堂の面目という意味であればまったく無価値というわけでもなく、やはり合格は目指したい。


その一方で、当の千堂自身が「合格にはこだわらない」とも言ってくれている。実は今回の一回で合格することよりも、アリシアに経験を積ませることが千堂の目的だったのだ。試験そのものは、二度目三度目で合格すればいい。そんな風に思ってくれている。


実際のロボットの試験でも、一度で合格できないことなど珍しくもない。この試験自体、<不具合の洗い出し>も兼ねている。


だから、気負いすぎる必要はそもそもないのだ。


と、アリシアは自分に言い聞かせた。いくら『絶対に合格しなければいけないわけじゃない』とは言っても、別に『わざと手を抜いていい』わけじゃないので。


だから、手は抜かない。今の自分にできる全力を尽くすとは考えている。


ゆえに、コデットの後に続きながら、自身のセンサーをフル可動し、ナニーニの気配を探る。


そうすると改めて感じるが、実に無秩序な街である。


開発当初、それぞれの区画を担当した企業や団体の連携や意思疎通が取れておらず皆が好き勝手に開発したり、敷地を拡張する段階で方針の転換があったりしたため、整合性が取れてない場所が多いのだ。それがまた、迷路のような街を生み出す結果につながっている。


多少ずれていてもせめて直線上に並んでいればまだしも、微妙に角度が変わっていたりというのも多い。GPS を搭載しており自身の位置を正確に把握できるロボットならともかく、そこまで正確な位置を把握できるわけではない生身の人間では、微妙な角度のズレまでは認識できず、自身が向かっている方角などを見失い、迷ってしまうだろう。


もはやトラップの様相を呈しているとも言えるだろうか。


にもかかわらずコデットは、ためらうことなく突き進む。その姿がまた頼もしくて、アリシアの頬がゆるんでしまうのだった。



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